創作小話
日本掌編 篠木景汰※CoCシナリオ「壊胎」ネタバレ注意※
「……最近、何か変わったことでもあったか」
察しのよい父親から問われた篠木景汰は、夕食の席が瞬間に凍りついたように感じた。警官である父から、鋭い尋問を受けているような心地になった。心配の証だ。
「なにも……」
「なにも?」
急ハンドルを切るように言葉を打ち返され、若干息が詰まる。篠木景汰はフーッと息を吐いた。それから。
「なにもないよ」
ただ、大きな事件を調べているだけ。
それだけ言って食事を再開すると、父親もフーッと息を吐いた。納得していない顔だ。
「俺はお前が心配だよ」
喋り始めた父親に、篠木景汰は箸を止める。
「そんな歳で、ジャーナリストとして駆け回ってる。いろんな事件を追って、情報収集の過程でケガだってするだろ。外で寝泊りして、しばらく帰ってこないこともある」
硬い声で喋る父親に、篠木景汰も自然と背筋が伸びる。しかし、彼も譲れない。
「それなら、父さんだって心配だ。警察官もケガをする。調査のために署で寝泊りするし、俺となにが違う」
「それは」
「……お互い様だろ」
言ってから、母さんが居てくれればと篠木景汰は少しだけ泣きたくなった。父親と仲が悪くなりたいわけじゃない。こんな時、彼の母親はいつだって朗らかに笑っていた。そうして「二人とも頑固なところがそっくり! 素敵ね。大切なもののために、二人とも譲れないのね」だなんて、笑い飛ばしてしまうのに。
篠木景汰は、ただただ沈黙した。言えるわけがない。異世界の生命体と戦っていることなんて。D-4という、対抗するための武力開発を行っていることなんて。……もうとっくに、何体かの死体を見ていることなんて。
なあ、と勢いをなくした父親の声が心臓に刺さる。
「長く、生きてくれよ。頼むから」
篠木景汰は、曖昧に笑った。
2020/10/11
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