彼に会ったのは本当に唐突だった。見知らぬ人が校門に立っていると思いきや、隣で柳があ、と声をあげた。
みんなが柳を見てどうしたんだ?と言う前に柳はその見知らぬ人めがけて走り出した。突然の柳の行動に全員がぽかんとしてる中、珍しく少し大きめな柳の声が聞こえてきた。
「名前!」
「!、明音」
名前、確かに柳はそいつのことをそう呼んだ。呼ばれたやつも当たり前かのように柳の名を呼び返した。
よく見れば八坂の制服を着てるそいつに、柳の知り合いだろうかとみなが同じことを思っただろう。いやしかし柳に八坂の知り合いがいたなんて聞いたことねーなぁ。
だんだん二人のほうへと距離を縮めていくと聞こえてくる会話に誰もがびっくりしただろう。特に仙石。
「おせぇし。ケータイ見てねーだろ」
「ぅあ、ごめん。すっかり忘れてた!待った?」
「んー…15分くらい待った」
「ああああ本当にごめん!」
「別に…ってか学校まで来るんじゃなかった。かなり見られた。かなりヒソヒソされた。もう泣きたい」
「うん。本当ごめんね?」
「明音…今日はグラタンでいいですか」
「え?あ、うん。名前が作るなら僕も一緒にやりたい」
「いいけど。母が卵買ってこいって…明音つれて2パック手に入れろって…でも明音が無理そうならいいから」
「え?あ…うーん…、あ、ちょっと待っててくれる?」
「うぃ」
くるりとこっちを向いた柳は俺らを見ると困ったように力なく笑った。ん?なんだ?どうしたんだ?
「すみません。ちょっと用事ができたのでマック行けないです。誘ってくれたのに、すみません…」
「いやいや、マックとかいつでもいけるしまた誘うって!っていうか…」
「そうそう!そんな謝らなくても大丈夫だからな柳くん!それで、あの…」
俺と仙石の不自然に途切れた会話に、秀や宮村の視線の先。それは柳の後ろでうなだれる八坂の名前くん。
聞こえた会話の内容や柳の話し方。どういったご関係で?と誰もが言いたいその一言。ここに堀や綾崎がいなくて本当によかったと心の底から思う。絶対うるさいだろうから。
「あ!えっと!しょ、紹介しますね!」
「(紹介だと!?)」
「ほら名前、こっち来て!」
「え?なに?え?ちょ、え?ちょ、明音!」
「はい!名前言って!」
「はぁ?」
柳に腕を引かれながら俺たちの前に立たされた少年の顔を見て、俺たちは絶句した。柳が、もう一人いる。
「っつか、あんたら誰?」
「「「「お前が誰だー!?」」」」
柳と瓜二つの顔に同じ髪型。違うところは真っ黒の髪色と左目の泣き黒子、そしてこの性格に喋り方。それ以外は疑うことなき柳なのだ。
「えっと…柳名前です。見ての通り、僕の双子の弟です」
「…、どうも…」
顔は柳なのに…なんだこの残念な気持ちは!
とりあえず無愛想で可愛くなくて癒しオーラなんかどこにもなくて逆に憎たらしそうな。それが初めて彼に持った印象でした。
シトラス味ノンシュガー
のちに柳を通じて彼もまた俺たちの日常の一部となる。
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