「ねぇあれ見た?」
「見た見た!もうちょぉかっこよかったよね!?」
「いや可愛いの間違いだから」
「いやいやかっこいいでしょ!戦ってるとこ最高でしょ!」
「そのあともちゃんと見た?晩御飯のやつ」
「見た〜〜〜!っていうか配信は最後まで全部見てるし!!」
「「最高だよね〜〜〜!!」」


そうクラスの女子が盛り上がって話しているのを聞きながら、それ僕も見たなぁ、と心の中で同意した。
というか日本人の半数は全く同じものを見ているような気がしたが、決して大げさではない。


「ていうか名前さんの動画見てないやつなんているの?」
「いるんじゃない?まぁ見てる私たちは確実に勝ち組だけど」
「それなぁ〜〜〜」
「名前さん早くこっちに戻ってこないかなぁ」
「なんかずっと遠征してるよね?全然本部に帰ってないみたいだし」
「名前さんのサイドエフェクトの所為だったっけ?よくわかんないけど」
「生で見たいよねぇ!?」
「見たい〜〜〜!!」


名字名前。
ボーダーに所属する隊員で一応所属は本部となっているが、その姿を本部で見ることはない。
彼のSE(サイドエフェクト)がこの状況を作り出しているのだが、本部もそれを言及することはなく、むしろ彼を自由に行動させている。
僕も実際に彼を見たことはなく、いつも画面越しで彼の存在を認識していた。


「っていうか毎回いい仕事するよねーイースは」
「ずっと名前さんの行動を録画してるんでしょ?ってかこの配信って誰が編集とかしてんだろ?」
「イースじゃない?なんか人工知能って言ってなかったっけ?」
「なにそれめちゃ賢いじゃん」


彼と行動を共にしてるイースとは、本部の技術開発部が作り上げた最少ドローンであり、人工知能を内蔵した監視ロボットである。
なので彼の行動は一日中イースによって録画され、そのデータはすべて本部へと送られているのだ。
その中でイースが勝手に判断して編集されたものが彼のSNSや動画配信アプリ、本部のホームページで見れるようになっているのだ。


『あ。あかんやつやこれ』


そう言って顔を青くさせた彼の表情を、リアルタイムで配信されてる動画アプリで見ていた。
一緒に同じ動画を見ていた太刀川さんがわずかに顔をしかめた。


『あぁ〜〜〜どないしょぉ〜〜〜もう引き返せんとこまで来てもうたやん…あかんでこれ…どないしょ…』


両腕を激しくさすりながら恐る恐る周りの様子をうかがう彼の行動に、今現在彼を撮影している小型ドローンのAIであるイースが彼に話しかけた。


『名前、いつものアレですか?』
『おん…』
『どのあたりですか?』
『おれの右奥…』


彼が弱弱しくそう告げると、イースが映す視界が彼が言ったほうへと少し傾く。
その瞬間太刀川さんが立ち上がった。


「太刀川さん?」
「無理。見れない。絶対うつる」
「そうかな?」
「だってあいつがいるっていったら絶対いる!!」
「そんなリアルタイムでうつったりしないでしょ」


無機質なジーっという機械音を奏でながら、イースがズームをするがそこにはやはり何も映っていない。
同じようにリアルタイムでこの動画を見ている視聴者のコメントがおおいに荒れている。
イースズームすな。絶対おる。やめたげてよぉぉぉおお。など。


「ほら太刀川さん座ってよ。何も映ってないってば」


俺がそう言って太刀川さんを隣に座らせようとしたとき、何を思ったかイースがズームをやめて画面表示をサーモグラフィーに切り替えた。
さすが高性能ロボット。やることがえげつない。


『急激な温度低下の空間を認識しました』
『なぁもうここ出ようや!?おれのSEがめっちゃ危険信号出してる!!』
『しかしゲートが開く恐れがあると名前が言いました』
『せやけど!!ネイバーじゃないやつもおるとかおれの身がもたんのやけどぉ!!』
『ではトリオン体になればいいのでは』
『あ!!あかん!!なんか声聞こえてきた!!これはまじであかん!!配信切って!!』
『なぜ』
『見てる子がトラウマになりかねんからやドあほ!!ギャァァァアア!!今!!今耳元でなんか言うたぁぁぁぁぁあああ!?』


―…ブツッ…―




ALICE+