忍術学園に行った帰り、いつも立ち寄る茶屋で休憩をしていると店の中から見慣れた女の子が出てきた。

「あんれ。清八さんじゃないですか」
「名前さん!どうしてここに?」
「いやー…まぁちょっと、お仕事で…」

いつも見る忍び装束ではなく落ち着いた着物に袖を通し、髪を下ろした姿を見るのは新鮮で、一瞬誰だかわからなかった。名前さんは山田先生の息子さん同様、フリーの忍者として働いている。仕事柄会うことが多いけれど、忍術学園での繋がりが一番大きく、顔見知りと言えば顔見知りだ。
お仕事と言いながらも自分の隣に座り「お団子三つー」と中に注文をしていた。運ばれてきた団子を笑顔で受け取り美味しそうに口に運ぶ姿はどこからどう見ても普通の女の子だ。とてもフリーの忍者をしてるとは思えない。そんなことを考えながらもお茶を飲んでいると、ふいに名前さんが口を開いた。

「今日も団蔵くんですか?」
「いえ、今日は福富しんべヱくんにです」
「ああ、リンスですか」
「知ってるんですか?」
「ええ。きり丸が言ってましたからねぇ」

そう言って二つ目の団子に手を伸ばす名前さん。忍術学園とも関係が深い彼女は頻繁に学園に顔を出すので、利吉くんと同じくらい一年は組のみんなから慕われている。彼女と利吉くんは年齢も同じなので一緒に行動することが多いとか。忍者としての腕も息が合ってると山田先生が喜んでいたのをよく覚えている。
その彼女が今日は珍しく一人でいることに心のどこかで喜んでいる自分がいた。久しぶりに会ったから気持ちが高ぶっているのだろうか?

「名前さん今日はお一人なんですね」
「え?ああ、そうですねぇ。今回は利吉くん違う忍務だったらしくて。ちょっと手伝ってもらおうと思ってたんだけどなぁ」
「はは、大変そうですね」
「まぁ…でも清八さんもわざわざ忍術学園まで来るの大変でしょう?」
「そうですねぇ…でも、それが仕事ですから」
「うんうん。私も。それが仕事だから」

いつの間に三つ目のお団子を食べたのか、ふと見たお皿には串が三つ置かれていた。最後にお茶をぐっと飲み干して立ち上がった名前さんはこちらを向いてニコリと笑った。

「清八さんが来るの遅いからちょっと休憩するつもりが長引いちゃいましたよ。だからもう行きますね。清八さんもお仕事頑張ってください。では」
「え?あ…はい。名前さんも、お体に気をつけて…」

最後まで笑顔を崩すことなく笑って、自分の言葉を聞くと背を向けて行ってしまった。
自分のせいで休憩が長引いてしまったとは、どういうことだろうか?彼女の立ち去る後ろ姿を見ながら、やっぱり忍び装束より着物を着てるほうが可愛らしくていいなぁなんて考えていた。あ!いや!決して邪な気持ちからじゃなくて!



林檎の毒に浮かされて

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