負けるとわかってる勝負には参加しない、っていうのが私のモットーだ。人はそれを逃げだと言うけれど、自分の力量をわかってなければ出来ないことだと私は思う。それが名字名前という女であり、私自身だ。


「名前ーソウコちゃんが和菓子かけて勝負しないかーだって」
「えー?ソウコちゃんがー?」
「なんでもその和菓子超有名なところのでめちゃくちゃ美味しいらしいわ!」
「…それは…実に食いたい!でも勝負が何かわからないとなぁー」
「ああ。それは…」


で、どうして目の前にシナ先生がいるのかとっても不思議である。ん?ソウコちゃんと勝負じゃなかったの?なんでソウコちゃんは隣に座ってニコニコしてるんだろう?


「意味が、わからないんですが」
「じゃあ、私と勝負しましょうか。名前」
「いやいやいや!ちょっとおかしくありません?じゃあの意味もわからないです」
「あら。わかるでしょ?名前」
「どうして相手がシナ先生?確実に勝てません」
「やってみなくちゃわからないわ」
「わかりますよ。貴女は学園の先生、私はそこの生徒なんですから」
「じゃあ和菓子、いらないのね」
「いるもなにも、勝たなきゃ手に入らないんでしょう?」
「そうね」
「無理っすよ!」
「勝負が何かも聞いてないのに?」
「それは…」


何が勝負であれ、シナ先生に勝てるくの一なんているわけないじゃないっすか。くっそ、ハメやがったなあいつら。だからあんなニコニコ見物できるんだ!


「だって、名前ったらアタシたち相手じゃ絶対勝っちゃうし」
「そうそう。今のくの一の中じゃダントツだし」
「それに…」
「「「名前が負けるところ見てみたいし!」」」
「テメーら!それが本心だろーがァ!」
「怒っちゃいやーん」


多少してやられたことに泣きそうになりながらもシナ先生のほうへ向きなおり、しょうがないとため息をついた。


「あら。諦めがついたかしら?」
「決心がついたと言っていただきたい」
「それじゃあ、勝負を説明するわね」


勝負は簡単、シナ先生の一方的すぎる攻撃を避けるっていうとってもシンプルなもの(命がけ)だ。五回攻撃を食らえば負け、余裕があれば反撃をしてもかまわない、反撃をするさい一回でもシナ先生に当てることが出来れば私の勝ちとなる。

ようは逃げ切るか、シナ先生に一回当てるかだ。いくらくの一の中で成績が一番とはいえ、シナ先生相手じゃ一回どことかくらわすことも出来ないと思うのだが。


「じゃあスタートするわね二人とも!始めッ!」
「さぁ!いくわよ!名前!」
「!、ぅわぁッ!」


いきなりクナイが五本飛んできて、それを避けると次に手裏剣がもう目の前まできていて、持っていたクナイでそれを払い落とす。手裏剣に夢中になってるとこを後ろに回ったシナ先生に斬りつけられそうになったけどそこは身代わりの術でなんとかかわして距離をとる。ゴクリ、と生唾を飲むみんなの音がリアルに聞こえてきそうで、正直自分自身飲んでしまった。


「さすがね、名前。やはり貴女はこうでなくっちゃ」
「…はは、そりゃどうも。っていうかなんだか嬉しそうだし楽しそうですね」
「ええ、嬉しいし楽しいわ。久々に手ごたえがあるんだもの」
「私は獲物ですか」
「恰好の獲物ね」


言いきったよこの人!獲物ってめっちゃ狩られるほうじゃないのさ!若干冷や汗をかきつつ、いつまでも逃げてられないと思った私は少しだけ攻めに出るためにクナイを二本軽く構えた。それを見たシナ先生はにっこりと綺麗に笑って、シナ先生もクナイを構えた。


「(とりあえずなんとか先生の後ろに回らないと攻撃できないなぁ)」


一瞬の気の緩みも許さないそれに頭の中で攻撃のイメージを想像する。


「(よし、これでいくか)」


思考が終わり、こちらの反撃が開始する。力強く地面を蹴って一気に距離を詰める。


「(この子、また速くなってる!)」


目の前に残像を残しつつ後ろに回ってクナイで斬りつけるがギリギリでかわされてしまう。まぁそれは想定内で、次に近くに見えないようにまきびしを巻き、全然違う場所に手裏剣を一枚投げてからクナイで攻めまくる。


「なかなかの策士ね、名前」
「とんでもない。敵がそれにハマってくれなきゃ意味がないですから」
「ふふ、恐ろしい子」


さっき投げた手裏剣がいい感じに空中で弧を描き、先生の背中をめがけて急降下してくるのを視界にいれ、もう少し先生を攻めているといきなり先生が宙返りをして手裏剣をよけ、なおかつそれを私に当てるように弾き返してきた。


「(ッ!流石、シナ先生だな)」


危うく自分の投げた手裏剣で自滅するところだったが、そこは腐っても忍者、見事な反射神経でよけてホッと一息。


「そんな暇ないわよ!」
「やば!」


先生の投げた手裏剣が頬をかすめ、生き残れる回数はあと四回。この人、確実に私を殺すつもりで投げてきたんだけど…。マジ容赦ない。


「やっぱ強いや。伊達に先生やってないですね」
「まったく。誰に向かって口をきいてるのかしら」
「すいませんねぇ、こういう性格なもので」
「まぁ、嫌いじゃないわ」
「やや!告白ですか!」
「ほざきなさい」


悠長にお喋りしてるように見えるが、実は激しい攻防戦の中こうやって会話しているのであって。簡単なことじゃないだけに神経も使うし体力も使うしで結構疲れてきた。こりゃきっと私負けるなーなんて考えながら、有名どころのお饅頭は諦めることにしよう。

だけどシナ先生と戦えるこの機会を無駄にはしない。どうせ勝てないんだからガンガン攻めてやる、と意気込んで、懐に隠し持っていた普通より少し先の長いクナイを二本、胸の前で構えてニヤリと笑った。


「ようやく十八番が出たわね。ちょっと遅いんじゃない?」
「いえいえそんな。丁度いいくらいですよ」


観戦していた他のくのたま達が、私たちの試合で様々な技を盗み取ろうといつの間にか真剣になってるのを見て、背中がゾクゾクした。さっきまでの野次馬精神はどこへやら、やっぱり彼女たちもれっきとした忍者なのだ。


「うん、楽しいな」
「あら、それは光栄ね。私も楽しいわ。こんな優秀な生徒を持てて私は幸せよ」
「その生徒に、追い越されるスリルを差し上げますよ」
「言うじゃないの。生意気なところは昔から変わらないわね」
「シナ先生の教えの賜物です」


私だって伊達にくの一でトップなんじゃない。忍具使いの名字名前、ナメんじゃねーぞ。

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