どこにいってもふらふら、ふらふら。誰に対してもへらへら、へらへら。女の子が通るだけでチャオーなんて声かけて。わたしはそれを見るたびにいらいら、いらいら。


「むかつく」
「ヴェ?どうしたのさー怖い顔しちゃって」
「むかつく!」
「え〜?俺なんかした〜?」


なんかした?って、そりゃそうだ。わたしが勝手に嫉妬して勝手に怒っているだけなのだから、彼は怒られてる理由なんてわかるわけがない。
ずっと近くで見てきて彼がこういう人だって割り切ってるはずなのに、いつも気持ちが理解してくれなくて本当に困る。別に付き合ってるわけでもないのに一番近くにいる自分のポジションが憎らしい。そこから離れることができないわたしも、離そうとしない彼にもむかついてしょうがない。
完全に八つ当たりだ。


「帰る」
「え?もう?ご飯食べていかないの?」
「いいの。帰る」
「そっか〜じゃあ気を付けてね」
「!?」


わたしも女の子なのに。
彼がチャオと声をかけて。さりげなく腰に手をまわして。少し近いと感じるくらい顔を寄せて。甘い言葉の一つでも言って。女の子はみんな彼にそうしてもらっているというのに。
わたしだって、女の子なのに。彼からそんなふうにしてもらったことなんて一度もないわけで。彼の一番近くにいても、一番欲しいものは手に入らない。

それならばいっそ、他人であればよかった。一日、いや数時間でも彼と共に時間を過ごせるそこらへんの女の子のほうがよかった。今の人かっこよかったなぁで終われるような、軽い関係のほうがよかった。そっちのほうが傷つかずにすむし、余計な感情が芽生えなくてすむのに。


「俺ね、女の子って本当に大好き。可愛いし健気だし見てて飽きないし良い匂いするし」
「…あっそ」
「俺のこと好きなくせに変な意地はっちゃったり。あからさまな嫉妬しちゃったり。帰るって行ったくせになかなか帰らなかったり。ほんと、女の子って可愛いよねぇ」
「………、えっ?」
「折角俺が最高の場所を与えてるのに全然満足してくれないし全然気付かないし。まぁそれは俺が悪いんだけど〜」
「なっ、なに?ど、どういうこと!?」
「ほんと、お前は可愛いね」
「〜〜〜ッ!」


さりげなく腰にまわった腕だとか、妙に近い顔だとか、初めて可愛いって言われただとか。何もかもが唐突で、思考回路がショートしまくってテンパるわたしに、キスというとどめの一撃を与えた彼は珍しく顔が赤いだとか。


「お前が俺から離れていくのを見るくらいなら、お前が一番望むものを与えてあげる」
「な!」
「ね。何が欲しい?」
「そんなの…わ、わかってるくせに…!」
「ヴェ〜、俺バカだからちゃんと言ってくれないとわかんないやー」


わかんないとか言いつつ、彼の口元はにこにこ、にこにこ。私の言葉を待つ彼の心臓がどくどく、どくどく。あと少しの勇気が出ないわたしはもじもじ、もじもじ。痺れを切らして彼が深いキスをするまであとちくたく、ちくたく。





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