長期任務を言い渡されてやってきた場所はとにかく広いだけの場所だった。
人が住んでるような感じは一切なく、家屋すら見当たらない。野生動物がちらほら確認できるだけだった。
なんでこんな場所で長期任務なんだ?と疑問に思うが、実際おれに話が来たということはそれなりのことが起きているのだろう。
ここから見える壁のような場所がその原因であり元凶なのだろうと考え、とりあえず上空にいき地上を観察しながら歩みを進めようとしたときだった。
ズシン、と響く地響きに視線を向け、驚愕する。


「虚…なのか…?いや、違うな…」


人間が巨人化しただけのソレは、おれたちが今まで対峙してきた虚と呼ぶにはあまりにも人間そのものだった。
その巨人はおれが見えているのか見えていないのかはわからないが、ズシンズシンと歩みを止めることなく近付いてくる。
もしものために抜刀し、構える。始解程度で倒せる相手だといいがもう一つ不思議なことがあった。
霊圧が全く感じられない。微弱なものなら感じるが、その微弱さは霊感のない一般人がもつものと同じだった。
だからと言ってこの巨人が人間かと聞かれればそれは返答に困るのだけれど。
そんなことを考えながら巨人の行動をじっと見つめていると、途端に弾かれたようにある一点を見つめ、走り出した。


「え!?は、走れんの!?」


のろまな行動を覆すほど何かを目指して走り出した巨人の先には壁がある。
やはり、おれの長期任務の理由は壁の方向に存在するのだと確信した。

もうすでにちょっと帰りたいとか思っていた矢先だ。
最初から「長期任務」と言い渡されたくらいだ。この地でおれが干渉することは許されないが、何が起きているのかを見届ける義務がある。
それがどんなに最悪で最低なことだったとしても、そのことから目を背けてはならないのだと。
死神として派遣されたおれが全うすべき任務なのだと。後になって実感することをこのときのおれはまだ気付いていなかった。

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