「やぁジャン」

急に現れた死神に驚きすぎて、椅子から激しく転げ落ちた俺を見て死神は腹を抱えて笑っていた。
突然のことにカッとなって「驚かすな!」と怒鳴った瞬間、ドスの利く低い声で「オイ」と言われた。
はっとなって声のほうを向けば、リヴァイ兵士長が思いっきり睨みをきかせていた。
やばい、と理解した途端、急激に血の気がなくなっていく。

「俺にはてめぇが勝手に椅子から転げ落ちたように見えたが…?」
「そ、その通りです…話を中断させてしまいすにませんでした」

お前の所為で怒られたじゃねぇか、と恨みがましく死神をこっそり睨むと、ごめん!のポーズで苦笑いをしていた。
この場所には俺以外にリヴァイ兵士長とハンジ分隊長、エレンにミカサ、アルミン、コニーとサシャがいる。
その中でもやはり死神が見えているのは俺だけのようだ。
見えているからこそ無視なんかできるはずもなく、死神が不用意に部屋を歩き回ったり兵長の近くに行ったりするからヒヤヒヤしてしょうがない。
会議の内容なんかこれっぽっちも頭に入ってこなかった。

「ジャン、彼、見えているよ」

会議が終わったあと、足早に外に出て死神に怒っているとふいにそう言われた。
彼、とは…誰のことなのか。

「は?」
「君を怒った彼だよ。リヴァイって言うんだっけ?」
「は?嘘だろ?」

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