仁王立ちするアニエスさんが見下ろす先には、昨日紹介された専属医師の女性と何故かおじさんが揃って仲良く正座をさせられていた。二人の手には水が入ったペットボトルが握られていて。その様子を見守る他のヒーローたちの表情はなんともいえないものだった。
「二人とも。今の状況がおわかり?」
「いえす、さー、みすあにえす…」
「う…気持ち悪ィ…」
「名前、あなた片付けも途中でどこに行ってたのかしら?」
「えと…ちょっと、そとへきぶんてんかんに…」
「気分転換しにいった割には随分と具合悪そうね。何故かしら?」
「え?そう?ぴんぴん、してると、おもうんだけどなぁ…」
「…タイガー、あなた何故名前と一緒にいるのかしら?」
「や、偶然。ほんと偶然会ったっつーか!な?名前!」
「ぐうぜん、っていうか、ひつぜん、ってかんじでしたよねぇ〜こてつさん!」
にへら、と力なく笑う彼女の手は、もはやペットボトルすら握れないみたいで。ゴロゴロと転がっていくそれを高いヒールで受け止めたアニエスさんの顔はこちらからは運良く見えない。
「二人揃って二日酔いってどういうこと!?名前にしては昨日も今日も!あなたたち自分がヒーローと医者だって自覚あるのかしら!?」
「ちょ、あにえすさん…こえおっきぃ…!」
「頭に響いていいんじゃない!?酔いも醒めるでしょう!?」
あえて彼女の耳元でそう言ったアニエスさんの声に情けない声を出しながら倒れた彼女を、隣にいたおじさんが咄嗟に支えた。大丈夫か?と声をかけるも弱々しくもう無理だと言ったのが微かに聞こえた。いや、自業自得だろう。
「で、どうしてタイガーが一緒なの」
「こいつと朝まで飲んでました…」
「どっちが誘ったの」
「どっちっつーか…お互い?」
「えらく仲良くなったわね。名前で呼び合っちゃって。妬けるわね」
「え?それってどっちに?」
「どっちでもないわよこのバカ二人!!」
「ぅお!今のキタ!頭いてぇ!」
「フン!名前!いつまで倒れてるの!今日は月曜日よ!スカイハイとファイヤーエンブレムの検診でしょう!さっさと用意しなさい!」
「ぅ…きちくだ…おにだ…」
「だれがなんですって?」
「よ、よういさせていただきます」
よろよろと起き上り、よたよたと歩く彼女は新しくできたであろう部屋へと進む。明日になればわかる、とアニエスさんが言っていた言葉の意味は、きっとあの部屋の存在にあるんだろう。
今にも危なっかしい歩き方で部屋へ向かう彼女は案の定というか想定内というか。ドアの前に積まれた段ボールに足を引っ掛けて盛大にすっ転んだ。
なんの奇声も発さずバタン、と派手な音を立てて倒れた彼女は死んだかのようにピクリとも動かない。駆け寄ろうにも自分もふらふらでうまく歩けないおじさんが倒れたのを視界の端に収め、僕はここ最近で一番深い溜め息をついた。
彼女が倒れた反動で脱げたであろう黄色いヒヨコのスリッパが無造作に転がっているさまがなんともシュールだ。起きなさい!と容赦なく彼女の体を揺らすアニエスさんの行動に、他のヒーローがどこか青ざめた表情で見つめているのが見えた。いやだから、自業自得でしょう。
最悪な第一印象だったのが、さらにマイナスへと向かったことを彼女は知るよしもない。
The second impression is also the worst
ALICE+