▼ 馬鹿も木から落ちる

※ 映画のネタバレ有り
※ 復活×探偵の男主






安室が例の組織にノックと疑われているのだとコナンくんから知らされて、情報収集で慣れてるパソコンを使いキュラソーの携帯のデータを復元した。
その場凌ぎとしか思えないメールをコナンくんから言われた通りにキュラソーのメール相手へと送信し、俺は愛車のレクサスの鍵を手にして安室が向かったであろう東都水族館へと車を走らせる。

まったく、あのばか。
赤井秀一に固執して、自らの目的を見誤るなと言ったばかりなのに。

コナンくんからは、安室が固執している赤井も東都水族館に向かったと訊かされている。
どうせ赤井を見付けた途端無駄話でもして大幅なタイムロスでもするんだろう。
そんな目に見えた結果俺はごめんだね。

せっかく俺がどうにかしてその場凌ぎをさせてやったのに、それを無駄にされてはたまったものじゃない。
絶対何かくそ高いものでも奢らせる、と胸に決めてアクセルを踏み込んだ。



「…何やってんのヨ、おまえら。」

「雄魔…!?」



東都水族館へと到着し、現地の状況とコナンくんから得た情報も含めて観覧車が怪しいと踏んで観覧車の裏に回ってきたは良いものの…。
研ぎ澄まされた聴覚で、真上で何やらドンパチを繰り返している音が聞こえた。
この際、ひとりで駆け上がっているであろう足音を立てているコナンくんは無視させてもらう。

そしてほぼ真上の部分に来たは良いが。
こうなると思ってたんだよね、うん。

案の定、観覧車の真上…しかも鉄骨が少ないという危険極まりないゾーンでお子さまよろしくドンパチしている安室と赤井のふたりを発見。
そんなふたりの姿を見て呆れないままでいられる奴が何処にいるって言うんだ?
リボーンじゃないが、「カオス!」と全力で叫んでやりたい。



「安室おまえさー、俺言ったよね?ん?見誤って向こうに時間稼ぎさせるなって結構初っ端に釘刺しといたよね?おまえがレーサーよろしくぶっ飛ばして車に傷を付けて帰って来たとき俺言ったよ?うん。おまえ殺すよ?」

「雄魔!なんでここに!」

「もう良いよ赤井、そいつぶっ飛ばしてゴンドラから突き落とそ?このばか1回死ななきゃ俺が言ってることも解んねーみたいだしさ。うん、落とそうぜ。」

「雄魔!!」

「…いや、それはいくらなんでもやり過ぎなんじゃないか?」



よいしょ、とお手前の身体能力と、遠心力を使って安室たちが居る骨組み部分へと飛び乗る。
そしてカツカツと革靴の音を立てながら安室に近付き、安室に説教を立てた。

顔は笑顔を浮かべていられるけど、言葉は罵詈雑言とさほど変わりないものがつらつらと出て来る。
驚いて目を丸くしている安室はすこしかわいいとは思うが、今はそんなもの、まったく関係ない。

まったくコイツは…。
赤井秀一が絡んでいることとなると、我を失い過ぎなんだ。
普段は冷静なくせしてどうしてこんなにも熱くなれるのか…、俺は知りたいよ。
こんな部下、俺なら切り捨てるけど。



「おまえら1回、頭冷やしてこい。」

「なっ!?雄魔、なにす…!!」

「!?」



安室と赤井の頭を鷲掴み、思いっ切りふたりの頭と頭を重ね合わせる。
重ね合わせるという言い方のせいで優しく思われるかもしれないが、いわゆる頭と頭がごっつんこってやつだ。
あ、これも充分優しい表現か。

言葉以上に優しくはない頭突きをしたふたりは頭を抱えて必死に痛みに耐える。

ふはははは。
俺がそこで終わるとでも思ったか。
あんまり俺を甘く見るなよ。
これでも、紅蓮の死神として名を売られた冷酷なボンゴレ闇の守護者なんでね。



「お・ち・ろ(ハート)。」



痛みに耐えるふたりの首根っこを掴み、これでもか、と言わんばかりの笑顔を浮かべてふたりを骨組みの上から下に突き落としてやった。
あ、死なないようには調節したよ。
もしこれで殺してしまったら、あとで綱吉が煩いだろうし。

下に落とせばコナンくんが動きたいときにあのふたりを使えるし、こんな足場の悪い骨組みのところにふたりを放置するよりは幾分かマシな結果になるだろう。
赤井に関してはライフルを持ってるみたいだし、もしも奴らに狙撃するのであればあとで別れたら良い。

なんて、思っていた俺がばかだった。
今度は俺があのふたりのことを甘く見すぎていたらしい。
まあ、あのふたりを…と言うよりも、安室のことを…なんだろうけど。



「おまえのせいで雄魔の身に危険が及んだらどうするんだ!赤井!」

「彼なら大丈夫だろう。自己を守る術は充分に兼ね備えているようだからな。」

「そう言う問題じゃなく雄魔に傷が出来たらどうするって言っているんだ!」



ど う 言 う 問 題 だ よ ! !

もう良いよおまえ死ねよ勝手にくたばれよむしろ俺が殺すよ。
やだもう、俺死にたい恥ずかしい。
絶対赤井に何か思われたじゃんか、これからどうすんのさ。

どうすんのさ、なんて頭では思っていたけれど、どうも俺の身体は素直らしい。
下に飛び降りて安室に膝から攻撃を喰らわせたら、ひどく間抜けな声を出して勢いよく横に転がった。
ざまあみろ、こんなところで俺に恥をかかせるからこうなるんだよ、ばーか。



「…おまえたちはなかなかヴァイオレンスな関係なんだな。」

「やめて俺が惨め!!」



驚いたように目を丸くしている赤井。
やめてくれ、そんな目で俺を見てくれるな赤井、俺が惨めになる。

赤井もなにかを思っているかもしれないが、俺だって安室や今の状況に対して思うことは多々ある。
しかし取り敢えず、俺はなんでったってこんな奴に惚れてしまったのだろうか、と不思議で堪らない。

誰か安室を今すぐここから摘み出して!


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