▼ 悪くはない

※ 映画のネタバレ有り
※ 復活×探偵の男主
※ 前作の続き






「銃で攻撃とかリボーンかよ!!」



安室が爆弾の解体に成功し、車軸に取り付けられた爆弾をふたりで回収していたときだった。
それはまるで大雨のように大量に撃たれるものだから、慌てて物陰に避ける。
爆弾と言い銃と言い…。
本当にこいつら、どんだけ古風なやり方してんだよ!!

匣を開口してなんとか銃弾を避ける。
ったく、これって使い捨ての攻撃避けだからそんなに耐久性とかはないんだよ。
こんなところで死ぬとかヤだからね。

しばらくの間大人しく潜んでいると、嵐のような攻撃は一点集中になった。
恐らくは今、奴らの狙いは俺たちではなく別のターゲットを見付けたのだろう。
本当、安室たちに深く関わるとろくなことがない。
…いや、安室たちだけでなくあのボウヤに関わってもろくなことはない、か…。

さて、どうするか。
そう考えているうちにまたしても一方的な銃撃戦がはじまり、なんとなくだが観覧車の車軸を壊して観覧車を沈めようとしているのが解った。
いやだから俺まだ死にたくないってば。

取り敢えずは回収した爆弾を持ち、残りの爆弾回収は安室に任せて俺は退散。
…なんて、上手くはいかなかった。



「雄魔さん!こっち!」

「…はあ。俺、ひとりでも充分逃げられんだけどなー…。」



タイミング悪く下のフロアにいたコナンくんに見付かってしまい、俺の存在を知られてしまう。
こっちに来い、と言わんばかりに手招きするものだから、ひとりでさっさと退散するのをやめてコナンくんの元へと行こうとした、そんなときだった。

ーーー グッ



「雄魔は僕とここに居るから大丈夫だ!それよりそのライフルは飾り物ですか!反撃する方法はないのか、FBI!」



飛び移ろうとしていた身体を引き寄せられ、いつの間にか俺のところに来ていた安室の腕に閉じ込められた。

いやいやいや、むしろこの状況がどうなってるんだ、だよ。
何おまえさり気なく抱き締めてんの、すこぶる気持ち悪いし痛いんだけど。
それにFBIにだけ任せずに、おまえも突破口くらい一緒に考えろよ、公安!

安室の鳩尾に一発キメて、それから手摺りに駆け寄って「何か考えはあるのか」とコナンくんに問い掛ける。
ん?俺もちゃんと考えろって?
ヤだよ、俺ってそんな救いのヒーローみたいな性格とかじゃねぇんだもん。
突破口もあるにはあるけど、関係あると言えばあるけど関係のないこいつらを巻き込まない自信とかはまったくねぇし。



「あの機体を大まかに見れたらあとはこっちでなんとか出来るんだ!雄魔さん、どうにか出来そう!?」

「あー…。解った!でも、言っとくけど俺、そういうの専門外!だから何があってもFBIか公安で揉み消せよ!」



コナンくんが言うには、あの古風な戦闘機を照らせたら赤井とコナンくんのふたりでどうにかするらしい。
それならそれで良いし、それだけで終われるんであれば、俺もそれに乗じて退散させてもらおう。



「安室、ちょーっと俺から離れとけ。」

「雄魔おまえ、何する気だ!?」

「まあ大人しく見てろって。…ほい、いらっしゃい俺のお姫様。んじゃあこれ、悪いけどあっちに放り投げて来てよ。」



俺のかわいいかわいい匣動物、闇豹…キャロルに爆弾が入ったギターケースっぽいものを持たせ機体に向かって飛ばす。
俺のキャロルの身体は属性の通り炎も黒ければ毛並みも黒いので、あの爆弾が入ったケースを奴らが乗る機体付近までなるべく近付けることが可能。
あとは仕留めるって言ってることだし、俺はお膳立てだけでも充分だろう。
本当なら潰してやっても良いんだけど、まあそこまでやるとマフィアの掟破りになるからガマンしておく。

爆弾運びはキャロルに行かせて、俺は安室の身体に勢い良く覆い被さる。
安室は安室で「こんなときに何やってるんだ!」なんて慌てふためいて顔を赤く染めているが、俺からしてみたらおまえの方が何考えてんだ、だよ(変態か)。

一度はノックとして疑われた身。
もし万が一安室が光に照らされて奴らに安室の姿を認識されてしまうと総てが水の泡になりまた身の危険が襲って来る。
それはなんとしてでも避けたいんで、俺の身体で安室を隠させてもらった。

コナンくんのシナリオ(もしかしたら赤井のシナリオかもしれない)は見事に成功し、あの機体の制御…接続部分をブッ壊すことが出来た。
だけど、ご褒美に観覧車の崩壊をプレゼントしてくれるとは思わなかったかな。
涙が出るくらいには素晴らしいご褒美をありがとよ(やけくそ)。

バランスが崩れたことで安室と別れそのまま上手い具合に観覧車から抜け出す。
あとは俺が知ったことじゃねぇし、まあコナンくんに赤井に安室が揃ってりゃ、勝手になんとかなるだろ(安室は赤井関連で熱くなると戦力外だが)。

と言うわけで、公安が溜まっているであろう駐車場から公安の目を上手くすり抜けて帰宅する。
あーひと仕事を終えたあとは疲れるね。



「いや、たった数時間前まで俺のひと仕事を労ってたんだけど。なんで?」

「寝てただけじゃないか。それより、帰るなら帰るって言え。心配しただろ。」

「へいへい。勝手に帰ってどうもすみませんね、安室さん。」



ひと仕事を労う意味も込めてベッドで寝ていたとき、人の気配を感じてむくりと起きたら安室が勝手に作った合鍵を使って勝手に家に入って来た。
今にも怒鳴りそうな剣幕のくせして冷静に怒る安室に、俺は悪びれもなく謝る。

怒鳴りそうな表情だから拳の一発や二発キマるんだろうなーと思っていたのに、そのあとに降りかかって来たものは安室自身の温もり。
つまり、安室に抱き締められていた。

目が点になりながらも、すこしだけ震えている安室の身体にそっと手を添える。
ああもう、こいつがいると、調子狂う。



「もしおまえが死んでたらどうしよう、って、俺は不安で仕方がなかった。」

「…マフィアの一員を心配するなんてばかな奴、おまえくらいしかいねーよ。」

「ばか…かもしれないな。気が済むまで雄魔の姿を、あの水族館の隅々までくまなく探していたんだから。」



安室の腕に入る力が、一層増す。
こういう風に…こんなに心配されたのって、いったいいつぶりなんだろうな。

たぶんまだ10代の頃に飛ばされた、十年後の未来での白蘭との戦闘以来、じゃないだろうか。
あのときは今よりも小さい綱吉から、しこたま怒られたっけ…。



「今、他の男のこと考えてるだろ。」

「…さあね?レイが思ってるようなことではないと思うけど、まあ、間違いだとも言えないかもな。」

「今は俺だけ見てたら良いんだよ。」



そっとベッドに安室ごと寝かされる。
降ってきた口付けは、まさに甘美で。
たまにはこの男のペースに流されてしまうのも悪くないかもな、なんて思えた。

結局いつも振り回されてるんだけどな!
(どんなオチですか!? by綱吉)


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