パソコンに向かい合い、処理をしたあとは外に出て他の任務を遂行する。
その繰り返しの毎日は正直気が狂いそうになるのだが、今の俺にはそれを阻止してくれる存在がいた。

家の鍵を取り出し、ガチャッと音を立てて玄関のドアを開ける。
部屋に入るとまず感じたのは、美味しそうな食べ物の香り。
今夜は焼き魚か…と今晩の献立を予想しつつ、靴を脱いでリビングに行けばエプロンを着けたまいかが俺をかわいらしい笑みを浮かべながら出迎えてくれた。



「おかえりなさい、秀一さん。」

「ああ、ただいま。」



一般人であるまいかと俺が同棲しはじめたのは、つい最近のこと。
FBIである俺に長期任務が来るのは当たり前で、会えることなどほぼゼロに等しかったあのもどかしさを退けるためにも同棲しはじめたのだ。
まあ、それでもやはり家に帰ることが出来ないときもあるが。

それでも以前よりも会える頻度が増えた上に、この慣れていない感じが愛おしいとも思え、かなり癒される。
照れ隠しなのか頬を赤らめるその姿が堪らず、近付いてソッと包み込む。
ああ、癒しがあるというのは、良い。



「あ、あの…。」

「すまない。疲れていてな。」

「お疲れ様です。」



突然のことにさらに顔を赤らめるその姿は、なんとも初々しくて。
そう言えば、とまいかにはじめて会ったとき「アメリカのスキンシップにはまだ全然慣れなくて…」と照れ臭そうに話していたことを思い出す。

日本からの留学生だったまいかはそのままアメリカに留まり、今では医療機関に関わる仕事をしている。
まいかも忙しく、疲れていることに変わりはないだろうに…それでもその素振りを見せず、笑ってくれた。

もう一度強く抱き締めたあと額にキスを落とすと、「ひゃ」とかわいらしい声が下から届いて来る。
まいかは癒しと同時に、俺のことを煽る天才でもあるらしい。



「まいか…、」

「だだだ、だめです!ごはん、冷めちゃいます!早くごはん食べましょう!」



まいかの手を引いて寝室に向かおうとしたとき、まいかは全体重をかけてそれを阻止してきた。
普段感じる体重よりも幾分軽い体重なので強行突破しようと思えば出来たが、顔を真っ赤に染めて照れているまいかを見ていると、強行突破など俺には出来そうにはなく、今日は折れることにする。

最後にもう一度、今度は鼻先にキスを落としてから俺は部屋着に着替えるために自身の寝室へと向かった。
まいかを味わうのは、まだもう少しあとでも良いだろう。

今よりももっと真っ赤に染まるであろうまいかを想像してしまって、ひとりで笑ってしまう俺を見たらジョディあたりは気持ち悪いと言うのだろうか。
けれど今まではそんな想像すら出来なかったのだから、こうして何かをしてもらったり出来たりする些細なことでも俺には充分幸せに思えた。

日本への任務まで、まだもう少しある。
今はこの目の前にある幸せを、充分に噛み締めておこう。






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リクエストありがとうございました。

赤井さんお相手の一般女性甘とのことでしたが…甘く出来たか…。汗
よもやほのぼの系なのでは、と書き終えてから涙を流しました…。orz
力不足で申し訳ないです。

最後に、
リクエストしていただきまして、本当にありがとうございました。



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