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「ふーるーやーくーん。」
「…なんだよ。」
新学期がはじまり、登校するや否や面倒な奴(友人)に絡まれてしまった。
肩を組んで来たので「気持ち悪い」と言えば「久々なのに辛辣過ぎて俺辛い!」なんて騒ぎ出す始末。
煩い…こんなことなら最初から流しておけば良かった。
「で、おまえは俺の誘いを断ってまでして、休みの日に何してたんだよ。」
「練習。」
「その練習も休みのとき!!降谷ってなんでそんなに俺に対して冷たいの!?」
「ウザイから。」
「俺泣くよ?泣いちゃうよ?泣いちゃうからね?良いんだね降谷くん?」
「勝手に泣いてろ。」
鬱陶しいテンションでひたすら絡んでくるのを一刀両断して、教室に入る。
一刀両断してもこいつはまだ挫けないらしく、「なあ降谷〜」と言ってくるあたりこいつのメンタルが気になった。
友人を無視しつつ教室をくるりと見渡すと、まいかは既に登校していたらしく席に座って本を読んでいる。
読書感想文なんて宿題は1番に終わらせていそうだな、なんて思っていると「なあ!」と大きい声で呼び掛けられた。
「おまえ煩いしつこいウザい。」
「降谷のそれは愛情の裏返しってこと、俺は知ってる!…じゃなくて!なんで俺を放置してそんなにこんがりと肌が焼けるまで外で遊んでたんだよ!ばかー!」
「殺すぞ。肌は元からだ。」
「あ、そうだった失敬。え、痛い!」
ばかなことばかりを言う友人の足を蹴ってやれば、痛そうに足を抱え込んだ。
ざまあみろ、どうせサッカー部は都大会で終わったんだから痛みに悶えておけ。
おまえはいつもばかの一つ覚えのようにオーバーヘッドばっかりしてるから、そこまでばかになるんだ。
「痛いじゃん降谷!」と涙目で言われたころで、俺は気にしない。
「あーはいはい」、なんて適当に流してまいかの方に視線を戻すと、不意にまいかと俺の視線が重なった。
どうやらまいかは、こちらの様子を見ていたらしい。
俺には解る程度で微笑むその表情は、まさに綺麗としか言えなくて。
重なった視線のせいなのか、心臓の鼓動が速くなっていた。
「(ああ…くそ。)」
俺ばっかりがドキドキさせられて。
俺ばっかりがまいかに執着して…。
それが、悔しくて堪らなかった。