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「まいかはなんのお願いをしたんだ?」
「秘密。言ったら叶わないらしいから…言えないわ。」
カウントダウン、なんてもの、今までしたことはない。
たまに入る母の仕事は年末年始には関係なく、父と同様仕事で家を空けていたからだ。
だけど今年は零くんと一緒に近場の神社に来て、はじめてお宮参りというものをした。
外は寒いし、参拝するにも人が多くてかなり並んでいたけど…それもまた新鮮で、悪くない。
「零くん、どこかで座らない?」
「…またまいかは、たくさん買って…。」
人混みに押されると、歩く速度も遅くなる。
手は繋いでいたものの、買う時間はあったので焼きとうもろこしやイカ焼きなんかを買っていた。
お腹も空いたし食べたい、と思って零くんに座るよう提案すると、零くんは困ったように微笑む。
私が零くんの目を盗んで食べ物を買うのは、もう零くんも慣れてしまったらしい。
偶然空いてあったベンチに座り、まずはまだ熱を持っているイカ焼きに手を伸ばす。
イカ焼きはあったかいうちに食べないと固くなるから、早いうちに食べないとね。
「よくそんなに食べて太らないな。」
「私、胃下垂だから太り辛いのよ。」
「ああ…だから太らないって言ってたのか。」
パクパクと食べる私を見つめてくる零くん。
食べるところを見られていると落ち着かないけど、でも、零くんは私がどんなに食べても引いたりはしないから安心して食べられる。
この食欲に引かれたことは、何度もあるから。
イカ焼きを食べ終えたら、次は焼きとうもろこし。
本当はデザートとして残したかったけど、こちらもあったかい方が美味しい。
とうもろこしを食べていると、横で「あ」という声が溢れたので視線を向ける。
すると零くんはさっき引いたおみくじを持って、それを今開封しているようだった。
「中吉、か…。」
「私大吉。」
「…地味に自慢してる?」
「いいえ?」
どうやらおみくじの結果は、中吉だったらしい。
私は大吉だったのでそれを口にすると、零くんは拗ねたように唇を尖らせる。
零くんって大人っぽいところもあるけど、たまに見せる子どもっぽいところがかわいい。
「待ち人、待てば必ず…ね。」
おみくじの内容をご丁寧に読み上げる零くん。
そこで、待ち人を読み上げたとき思わず瞳が動いた。
どうなるのか、どんな結果になるかは解らない。
もしかしたら零くんは違う待ち人が居るかもしれないけど、それが私を指すのであれば…。
ねぇ、零くん。
参拝したとき、訊いて来たよね。
「まいかはなんのお願いをしたんだ?」って。
零くんにはまだ言えない、私の願い。
お願い、零くん。
これは私のワガママだって解ってるけど…どうか、許されるのであれば私を見捨てないで。
新しい年がスタートした1日目。
私の心の中には、たくさんのモヤがかかっていた。