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時の流れというものは残酷だと思った。

クリスマスイブもクリスマスも零くんと過ごし、彼によく似合う時計もプレゼントして。
年末年始も一緒に過ごしてカウントダウンもしたら、すぐにまた三学期がはじまった。

三学期なんてもの、あるようでないようなものとたいした差は出て来ない。
センター組はセンター組で追われ、推薦組だけがのんびりと余裕を持って登校する時期。

私はこの時期、頻繁に休むようになっていた。
今日のこの登校は…1週間ぶりとも言える。



「まいか、最近どうした?大学でも見に…いや、それにしては不在期間が長過ぎるな…。」



本当、零くんはどうしてこんなにも洞察力と観察力と推理力に長けているのかしら。
"彼ら"も零くんみたいな人が居れば…良かったの?



「そうね、そんなものよ。」

「…相変わらずまいかは秘密が多いんだな。」

「あら、秘密は多ければ多いほど女は魅力的なのよ?」

「はいはい。」



こんなやり取りも、あと何回出来るのか。
零くんと近くなり過ぎて、迷いもあった。
本当にこれで良かったのか、と。

だから、ねぇ、零くん。
私の中から、この迷いを消させて。
私は、零くんに私を迷わないように導いてほしいの。



「まいか…っ、え、まいか…?」

「ねぇ、お願い。私に零くんをちょうだい…?」



屋上のコンクリートに零くんを押し倒し、その上に覆い被さるように跨る。
そして噛み付くようにキスを繰り返すと、次第に零くんも応えるように腰と後頭部に頭を回して口付けもより深いものへと変わった。

クリスマスのときのように、あの戸惑いは見られない。
慣れてしまったことがすこし物足りなくはあるが、今はそんなこと言っていられなかった。



「…下、コンクリートだし身体痛めるよ。」

「でも、そのコンクリートは零くんが庇ってくれるんでしょう?それなら関係ないわ。」

「はあ…。本当、ワガママなお姫様だな。」



クスッと笑って、私のワガママを受け入れる零くん。
何度も零くんとは会っているけど、こうして身体を重ねるのはクリスマスの夜以来だ。

ねぇ、零くん。
零くんは今、何を夢見ているの?

私は、家族が残したものを継ぐ気はない。
運命から抗いたいの。
そのためにも家族は、私の存在を黙っている。
私を巻き込まないように、と。



「れ、くん…っ!」



ああ、痛い。
心臓が、すごく痛い。

まさかこんなに人を好きだと思うだなんて。
こんなにも、人から離れたくないと思ってしまうだなんて、思ってもみなかった。

私はまともじゃない。
きっといつか、あなたに軽蔑されるような存在になる。
そのときまであなたに愛してもらえると思えるまで…私には自信がないの。

痛い、すごく痛い。
ぽろぽろと情けなく流れ出す涙は、生理的なものか…。
それは自分でも解らないけれど、愛しいこの人が幸せになれることを見守れるように。

何も言えない私を…許さないでほしい。
だから、だから"最後"に…。



私の中に、零くんを残して。

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