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まあ、正直な話、こうなることは薄々ではあったけれど気が付いていた。

まず最初に、私と赤井さんが付き合っていることはあっという間に広められた。
それは例の女性捜査官の口が軽いからなのかは解らないが、とにかく、ほぼ半日という勢いで広まったのだ。

すこし席を外してデスクに戻れば、戻った途端に周りから「やっぱり赤井さんと付き合っていたんですね!」と声を掛けられて思わず動揺した。
それはまったくの嘘だと言いたくとも言えない感じが、私は好きではない。

否定したいところを「まあ…」と濁らすような返答で我慢する。
濁らせたところで周りは盛り上がっていたが、しばらくするとそれは台風のように一気に静まりを見せた。
張本人である私が反応もしないから、というのも原因かもしれないが。

とまあ、これはあくまでも前置きで。
今日はジョディと赤井さんと私、それから赤井さんの部下とともに任務に当たりホテルを予約していた。
そこで私は、「やっぱり…」と悟る。



「ホォー…。なかなか良い部屋じゃないか。なあ、まいか。」

「はぁ…。ちょっと、今は話し掛けないでもらえますか?頭を整理します。」



私に当てられた部屋割りは、当たり前と言うか私と赤井さんが同室。
他は偶然にも全員が女性だったので、残りはまとめて同室らしい。

本来であれば、私と赤井さんは別室であり、個室になるはずだったのに。
FBIはFBIはコスト削減大歓迎とでも言わんばかりなのか、特に何かを咎めることもなく今になって知らされるだなんて普通は問題なんじゃないだろうか。
まあ、今そんなことを言っても部屋は満室で変えられないし、諦めるしかない。

私たちの部屋は広くて豪華なもの。
2日間に渡る仕事だからまだ我慢出来るものの、これが複数日滞在だなんてことになったら、間違いなく私は上に対して文句をぶちまけただろう。
別室にしてくれ、と。



「俺と同じ部屋が不満か?」

「…普通であればこの事態は有り得ないことですが、周囲に誤解を生んでいる今は、仕方のないことだと思ってます。」

「つまり、不満なんだな。」

「平たく言えば、そうなりますね。」



今さら赤井さんに「不満か」と問われるが、私からしてみたらYesとしか返しようのない、愚問な質問だ。
けれど赤井さんは私の上司であり、そんな不躾な答えを言ってはならないので遠回しに返したが、赤井さんはその意味を汲み取ってくれたらしい。

小さな笑みを浮かべる赤井さんは、とても満足そうだった。
私は不満しかないのに、この人は本当に自由と言うか、腹立たしいと言うか…。

先ほど述べたように、自腹を切ろうにも空いている部屋がない。
野宿という選択肢だけは選びたくないので、これはもう、腹を括る他私に余地は残されていなかった。



「一緒に寝るか?」

「寝ません。」

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