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この前のシリアスな空気は何処吹く風。
今、私と赤井くんの間の雰囲気は、以前と変わらない…はっきり言ってしまえば面倒なものだった。
「まいか、次の休暇に出掛ける。」
「…そう、いってらっしゃい。」
「おまえも一緒なんだが?」
「勝手に行ってもらえるかしら?」
彼の目に、私はどう映っているのかとても気になる。
今の私はそう思った。
休憩中のジョディの席に座るのは如何なものかと思うが、最近はこのパターンが多いのでそれには目を瞑る。
けれど、いくらジョディが休憩中とは言え、私はまだ目の前の書類を片付けてあるわけだから、手は空いていない。
それなのに能天気なことを言ってくるのだから、これに腹を立てても仕方がないことなのでは、と思う。
思わず出て来そうな溜息を噛み殺し、チラリと上司である赤井くんに視線を移すと、かれは企みのある笑みを浮かべた。
この人、撃って良いかしら。
「行くだろう?」
「何故あなたは、私がさも行くことが決定しているかのように言うのかしら?」
「ああ、さっきジョディたちとも話してな。ジョディたち行くのなら、もちろんおまえも行くだろう?」
「手を回すのが早いのね」なんて嫌味は飲み込んで、一気に休暇をもらうつもりらしいうちの部に溜息が出る。
どのみち、今回の休暇はこれからほとんど休みなく働くことになる対組織メンバーに与えられているものだから、一部集中的に休みをもらうことにはなるが。
それでも、まさか休暇メンバー全員で何処かに出掛けなければならない、だなんて思ってもみなかった。
赤井くんが言うように、ジョディたちが行って私が行かないのもおかしな話し。
ここで断るのは簡単だけど、どこか上司と部下以上の壁がある私と周りの関係をもう少し崩すのであれば、絶好の機会だとも思えるのが本音。
流されてしまうのはいつものことだけれど、まあ、今回は流されにいってしまうのも悪くはないかもしれない。
私に対して、デメリットしかないわけではないのだから。
「…解ったわ、行くわよ。」
「そうか。行くところはジョディたちに任せてある。決まったら俺にもまいかから連絡してくれ。」
「…別に、"私から"って強調しなくても必要なら伝えるわよ。」
「頼んだ。」
要件はそれだけだったのか、赤井くんはジョディの席から立ち上がり、自分のデスクへと戻っていく。
仕事が片付いていないのに、よくそんな話しを持ち掛けて来たものだ。
それにしても、行き先はジョディたちに任せている…って。
大丈夫なのかしら。