携帯を失くしました
…どうしようか。
「はあ!?携帯を失くしたぁ!?」
「…ちょっとジョディ、煩いから耳元で叫ばないでくれる?」
早朝、本部へ来てまず1番にすることは運転中に連絡が無かったかの確認。
対組織メンバーはなかなかに優秀なメンツが揃えられているので、即座に動かなければならない問題もないだろうと思い着信音を好まない私は運転中であればマナーにしていた。
だから今日も、確認してみたのだけれど…。
おかしい。
携帯がまったく見当たらないのだ。
鞄をゴソゴソしていたらジョディに話し掛けられ、そのことを素直にジョディに話すとジョディは耳元で大声を上げた。
ああ、耳元で叫ばないで。
「今朝から何度電話をしても繋がらないと思ったら、そんなことだったの!?」
「ええ。通勤途中で失くしたみたい。車通勤なのに何処に落としたのかしら…。」
「呆れた…しんっじられないっ!あなたまさか、組織のデータを失くした携帯に保存したりしていないでしょうね!」
「そんな馬鹿なこと、しないわ。」
ひとりでぷりぷりと怒っているジョディ。
ここまで怒っている姿を見るのは、私に対してだと初めてのこと。
失くしたのはプライベートメインの携帯だから、困ることなんてほとんど無い。
ジョディが言うように、もし仮に組織のデータ…もしくはノックである赤井くんに関するデータが保存されていれば困るけど。
でも、そんなものは記憶すればいいだけのもので、元より形として何かに残すということは滅多になかった。
「…まあ、そうよね。あなたがそんなことするはずないわよね。」
そんなことはしない、と言えば、ジョディは納得したように呟いた。
はあ、と深呼吸をして自身を落ち着かせているジョディを見ると、プライベートメインとは言え申し訳なくなってくる。
まあ、仕事用として使っている携帯には、上司の面々しか登録していないからジョディには特に関係ないのだけれど。
「あっても、あなたたちに迷惑電話や迷惑メール・架空請求が来るくらいじゃないの?」
「充分迷惑よそれ!!」
軽くそう告げると、ジョディから最後の雷が落とされてしまった。
…軽い冗談だったのに、通用しないのね。
セキュリティはほどほどにキチンとかけているから、例えその携帯を拾われようとも開かれないから安全なのに。
そして数時間後。
騒ぎを大きくしたジョディにより、私の部下総動員で携帯の捜索にあたった。
結局携帯は、私の車の座席の隙間に落ちていたと言うことで丸く収まる。
良かった良かった。
「良かった良かった、じゃないわよ!」
……ジョディのお怒りは、なかなか鎮まりそうになかったけど。