04
「ジョディ、よろしくね。」
「えぇっ!?ちょ、ちょっとぉ…!いくらなんでも急すぎるわよまいか!」
「あなたなら出来るって信じてる。」
「そう言う問題じゃないのよ!?」
ある日のこと。
私とジョディ(主にジョディ)の声が室内に響き渡るには、もちろん理由があった。
遡ること、1時間ほど前のこと。
『今回の赤井くんの潜入は失敗に終わりましたが、得たものとして決して小さくはないものが知ることが出来ました。』
対組織班として選ばれたメンバーの中、主要メンバーをさらに範囲を狭めた者だけを集められた今回の会議は、どれだけ慎重なものなのか知らされる。
それにはもちろん、私と赤井くんも呼び寄せられていた。
不本意ながらも今回は私が指揮を取り、会議を進めていく。
このチームのボスであるジェイムズ、そして上司の赤井くんは口を挟まない。
もう一度言うが、この不本意極まりない状態で始まった会議の中で、今回の赤井くんが得てくれた事柄を纏める。
小さなことではある。
まったく進みが無いとも思える。
けれど、彼らの本拠地を知ることが出来たのは大きな進みとも思えた。
『彼ら組織の本拠地…それは日本です。』
私と赤井くんの、名前として最も親しみのある国…日本が彼らの本拠地。
アメリカでももちろん動きはあったけれど、それは危ない身に置かれた赤井くんからの細やかな連絡のおかげでアメリカが本拠地ではないと知らされたのだ。
そうなると、組織を捕まえたいこちらからしてみればアメリカに主要メンバーを置いていたところで、意味を成さない。
こちらにも、赤井くん以外にも有能な人間が当たり前に存在している。
まあ、組織一択の連邦捜査局ではないのだから、もちろん振り分けとしてバラけさせられているのだけれど。
何が言いたいか、と言うと、"赤井くん含む主要メンバーが日本へ旅立ったとしても他で補うことが可能"、と言いたいのだ。
しばらくは私もアメリカから動くつもりはないし、そうなると尚更に。
『赤井くんから受けた報告によると、来年あたりからジンなどの人物は日本で本格的に腰を置くようです。そうすると、こちらも人員を大幅にそちらへ向け、彼らの対策を練るべきだと私は思います。この考えは客観的に見て、どう思われますか?』
『異議はない。』
『ふむ。私もそう思うよ、まいかくん。』
私の投げ掛けに対し、腕を組み目を閉じたまま赤井くんは同意し、ジェイムズも納得したと言うように首を縦に振っていた。
…と言うより、そんな偉そうな態度を取るのなら今すぐ私と立場を変えてほしい。
赤井くんから受けた報告なのだから、自分で言えば良いものを…。
それはともかく、会議は"本拠地である日本に人員を割く"、とのことで終わった。
ついでに、私たちに日本へ向かうメンバーの選抜を丸投げにして。
そうして考えに考え抜いた結論は、"何があるか解らないのでとにかくいろんな人物に資格を取らせる"と言うことだった。
そこで教員免許習得可能ラインまでの事柄を学んでいたジョディを呼び出し、一年以内に資格を取得するように言ったことで冒頭のようなことに。
「あなた簡単に言うけどねぇ…!」
「ジョディなら出来ると思って頼んだのだけど…読み間違えたかしら。」
「っ、やるわよ!あなたが間違ってないことはあたしが一番理解してるもの!やるわ!」
「そう?なら、よろしくね?」
最初は無理だと言っていたジョディだけど、私の読みが甘かったのかと言えばジョディは何やら勝手に燃えていた。
何が引き金になったのかは知らないけれど、組織に執着する彼女であればこんなもの一年も時間があればお釣りが出るはず。
さて、ジョディは意気込んでくれたし。
私は残りの選抜、それから私がやるべきことを終わらせなければ。