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最近、組織が日本での犯罪ばかりに手を出すようになっていた。
アメリカではあの取引以来、特に音沙汰もなく(もしかしたら上手く隠されているだけかもしれないが)、私もアメリカに居ても何にもならないと赤井くんが説得したのか、日本へ行くことになった。

けれどそこで、問題が生じる。

私は組織への潜入を断り、ベルモットが通り魔に扮した際も戦線には出なかった。
つまり、FBIとして堂々と表舞台に立つことを私は嫌っている。
そうなると必然的に、私は日常を過ごす一般人とならなければならない。

それに私は…ジョディから頼まれごとも受けているのだ。
"江戸川コナン"と言う少年について。

あれはそう。
昨日のこと。







「江戸川コナン?」

『ええ。』



久しぶりに、ジョディから連絡が入った。
どうやらジョディは、潜入してから関わるようになった"江戸川コナン"と言う少年がどうにも気になるらしい。

組織が日本で活発に活動している現状で、何故かそこにいつも、江戸川コナンと言う少年が現れるらしかった。
子どもと言えど、奴らは手加減しない。
それを全員解っているらしく、ジョディはすこし心配そうな声色をしていた。

けれど、こちらからしてみたら所詮子どもは子どもでしかない。
特に気にすることもなく、たまに目を向けてあげるよう指示を出した。



『まいか、あなたも日本に来たらクールキッドのことを近くで見てほしいの。』

「…どういうこと?」

『そうよ!彼、毛利探偵事務所に居候しているらしいから、確かそこの下の階にある喫茶店でアルバイターを装えば良いわ!』

「…ちょっと待って、話しについて行けないわ…。ゆっくり説明してちょうだい。」



ジョディはどうも、コナン少年から目を離したくはないらしい。
説明を聞いている限りでは重要性は伝わらないけれど、簡単に言うと既に掛け持ち禁止の教師として職に就いてる前提のジョディは日常では関われないから私がジョディの代わりに日常も見守ってほしい…と。

彼女は何を言っているんだろうか。

あまり褒められるものではないけれど、私は表情の動きが恐ろしいほど少ない。
そんな中で喫茶店などと言う接客業をしてみなさい、1日でクビになる。

ジョディが私を説得するように、私もジョディを説得してみるけれど、彼女は残念なことに一切聞き入れてくれなかった。
結局は私が折れることとなり、この一件についての話しが終わる。







とにかく、だ。
そんなこともあって、私はどうにかアルバイターとして人として、他人に笑顔を見せる努力をしなければならないらしい。
そうは言っても、これは性格故なのか昔からのことなので、早急に自己流でどうにか出来るとも到底思えはしなかった。

さて、どうするか。
そう思ったとき、ふと脳裏に最近知り合ったある人物が過った。

彼女なら、もしかすると…。
会える可能性は低いけれど、私が日本へ旅立つ日は迫っているし、結局アルバイターとして潜入し事件も見れると言うことでジョディから言いくるめられてしまったし、ジェイムズからの指示でもあるから、その低い可能性にも縋るしかない。
どうにかなる気もしないけれど。



「………はあ。」



思わず溢れた溜息は誰かに訊かれることもなく、私は帰宅するために駐車場へ向かった。

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