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梓さんにタオルの場所を訊き、江戸川くんたちが居るテーブルに持って行く。
貼り付けた笑顔のまま「これを使ってください」と言うと、蘭さんは「すみません」と謝りながらそれを受け取った。

そんなやり取りをしている中でも、江戸川くんからの鋭い視線は消えない。
何かを疑い、探るようなこの視線。
今まで数回赴いたFBIの捜査で遭遇したあの視線に、ひどく似ている。

ただの小学生が、ここまで鋭い視線を向けることが出来るだろうか?
もし彼がただの小学生ではなく、何か秘密を抱えたような人間だったなら…。
隠す気が無さ過ぎる。
別に追求するつもりは無いけれど。



「大丈夫?コナンくん。」

「うん!僕は大丈夫!」

「まったく、気を付けなさいよね!ガキンチョ!」

「(まあ、普通の小学生と高校生のやり取り…なのかしら。)」



こうやって見ていると、景色だけはごく普通のやり取り。
ジョディの言う通り事件によく関わるのであれば見張りたいし、なるべく親しくはなっておいた方が良いだろうけど…。
まあ、怪しむような視線を向けられてるうちは、無理でしょうね。

新しい水を江戸川くんに渡せば、江戸川くんはごく普通の小学生のように「ありがとうお姉さん!」と言う。
こんな無邪気そうな表情を浮かべるくせに、あんな視線を向けるなんて。
とんだ役者だと思う。
まあ、今の私も私を知る人から見れば役者なんだろうけど。

彼女たちはケーキを3個頼み、私はそれを受けて梓さんに伝える。
梓さんが出したケーキを提供するため、私はカウンター近くに居るんだけど…。
本当に、あの坊や…江戸川くんは私のことを気にし過ぎていると思う。

今も突き刺さる視線は決して軽いものじゃないし、どちらかと言えば敵を見るような視線に酷似している。
別に危害を加えるつもりはないし、どちらかと言えば保護対象…。
まあ、おもしろそうだから、このまま探らせていても悪くはないかもしれない。

だって、子どもだけじゃ調べられるものも調べきれないでしょう?
私の素性を知りたいのなら、警察組織まで使わなければ到底無理な話。
万が一大学を探られても、一応そこに籍は置いているから大丈夫だろうし。



「お待たせしました。」



そこからどこまでこの子どもが出来るのか、気になるもの。
この子がどれほどの情報収集が出来るのか、後ろ盾は居るのか。
それが我々FBIに噛み付き、対抗するものじゃないのか…とかね。

梓さんに渡されたケーキを並べると、女子高生組は携帯で写真を撮り出した。
女の子って不思議と、写真が好きよね。

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