2day

今日はグループでの仕事らしい。
俺は降谷零、としてではなく、鈴木財閥から安室透としてこの護衛の依頼を受けており、それはBEASTが来日してから帰国するまでという少々面倒な条件があった。
と言うことで、今日の護衛はメインとして俺が立つことになる。

車の運転はマネージャー…ではなく、運転技術や尾行に対する観察力などが買われ、俺がすることになった。
どうにも彼らは脅迫状を送り付けて来た人物とは別に、執拗なファンにも追い掛け回されることが多々あるらしい。
犯罪紛い…と言うより、最早犯罪である不法侵入や盗撮などもあるらしく、それに注意喚起しかしないのもどうかと思うが。

まあアイドルだからこそ、なんだろう。
こればっかりは当事者同士の問題で、俺が口出し出来るようなものではない。



「お腹空いた。ねえ、コンビニ寄ってよ。」

『おいまいか。この人は俺たちの護衛であって、いつものマネージャーじゃないんだから、そんなワガママを言うな。』

『まだ時間あるんだし、良いでしょ。』



不意に話し掛けてきたのは、言わずもがな俺の担当、ミンス。
そのミンスを咎めるように韓国語で注意しているのが、確か…。
BEASTのリーダー、ドゥジュン、か。

そこでふと、気付く。
長く韓国に居たのかどうかは俺には解らないが、それでも日本人にしては外国人寄りの発音が多少残る日本語を話すミンス。
つまり、ミンスは日本語よりも韓国語の方が慣れているはずなのだ。

それなのにいつも、俺に話し掛けるときはちゃんと日本語を使っていた。
今みたいに仲間内で話すときも、ふとした瞬間に溢れる言葉も、韓国語ばかりなのに。
随分と周りに気を遣っている。
それを台無しにするくらいには、自由奔放好きなことをしているけれど。



「…5分だけですよ。」

「…意外とキミ、良い奴なんだね。」

「あむろさん、こいつは、あまやかさなくていいです!」

『まいか、俺スポドリ。』

『僕、豆乳。』

『絶対やだ。自分で行けば。』

『おまえらは便乗するな!』



多少韓国語も解るとは言え、フランクな韓国語を早口で使われてしまうと、俺も理解出来ない部分が多くある。
それを見越してかは知らないが、俺に対してだけは日本語を使ってくれることへの多少の感謝として、近くのコンビニで車を停めた。

そこで降りたのは、ミンスを含む数人のメンバーたち。
言葉にはしなかったものの、どうせなら、と言う気持ちがあったのだろう。

5分と経たないうちに戻って来た彼らは何かを言い争っているような感じがするが。
なんとなく、その姿を見て昔を思い出し、懐かしいなと思う自分が居た。



「(昔は…よく帰りに買い食いしたな。)」



懐かしい警察学校時代。
そして彼女と過ごした高校時代を思い出し、ひとり感傷に浸る。



『デブ。ドンウナとギグァンを見習えば?』

『今日は休みなんだよ!』

『ダイエットの休みって何?そんなカロリーの高そうな食べ物、痩せようとダイエットしてるのによく買えるよね。』

『まあまあ、まいかもジュニョアもそこらへんで落ち着いて…。』

『ギグァンは甘いんだよ。』

『1番甘やかされてる奴がよく言う。』



車に戻っても、相変わらず言い争っているのは、ミンスとジュニョン。
仲が良いんだか悪いんだか。

全員が乗り込んだのを確認し、車に再びエンジンを掛ける。
しばらく走行してもその言い争いが静まることはなく、結局リーダーであるドゥジュンによって言い争いは鎮められた。



『おまえら静かにしろ!』

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