欲しかった居場所


【2020/01/04】

「この島に俺の居場所はない」と言って、青年時代の月島さんはいご草ちゃんと駆け落ちの約束を交わしたけれど、いご草ちゃんと過ごした日々は、月島基という人物にとっては居場所ではなかったんだろうか、とふと疑問に思いました。

いご草ちゃんと夫婦になって今度こそ幸せな家庭で過ごす、という目標が随分と遠くに行ってしまい、もう二度と見えることはないのでしょう。いご草ちゃんは両親と一緒に殺された可能性もあれば、本当に別の人のところに嫁いでしまった可能性もあり。
わかっているのは、月島さんと彼女が結ばれる将来は存在しないという事実。

《いご草ちゃんと築く家庭》を居場所にしたかったのに、いご草ちゃんは手の届かない遠くに置かれ、故郷の佐渡島は、彼女がいないのなら帰る意味がない。
今では鶴見中尉の元が、月島さんの唯一の居場所。

自分の気持ちや感情は、全部あの頃に置いて来たんだろうな、と思います。今の月島さんは、“鶴見劇場”を最後まで観ることしか頭にない、人間の形をした人形のようです。
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