03





特級仮仮想怨霊(名称未定)
その呪胎を非術師数名の目視で確認
緊急事態のため高専1年生3名が派遣され

内1名 死亡





「硝子ちゃん」
「名前」


報告書を片手に、名前はこれから亡き彼の元へ向かう家入硝子に声をかけた。
彼女とは悟との繋がりで昔からの知り合いでもあり、名前にとっては姉のような存在でもある。
解剖するのかと問えば、いつも通りの声色で「貴重なサンプルだからな」と硝子は応えた。
名前にとって虎杖悠仁は少ししか関わってはいないし、そこまで深い関係というわけでもない。それでも、悟にとってはこの腐った呪術界を変えるためのひとりであったことは確かだ。


「特級相手で……しかも生死不明の5人救助に1年生が派遣なんて、普通に考えたらありえない」
「派遣の時点ではそうなるとは予想してなかったんだろう」
「…………わざと、だったりして」
「どうだろうな。上の連中は保身しか考えてないからね」
「本当に腐ったミカンどもだこと」


悟がよく口にしていた。上層部を殺すのは簡単だけど、腐ったミカンの首がすげ替わるだけ。それだと変革は起きない。だから教育を選んだのだと。
時間がかかっても、この呪術界をリセットするにはそれしかないのだと、改めて実感させられる。


「そういえばさっき、2年生が名前を探していたぞ」
「そうなの?」
「交流戦がどうとか言っていたな」
「ああそっか、もうそんな時期か。教えてくれてありがとう、2年のみんなと合流しに行くよ」


交流戦が落ち着いたら、悠仁の弔いをしようか。名前は歪む視界に気付かないふりをして、2年のみんなを探すために高専内へと足を進めた。

硝子と別れ、のんびり探しているとどこからかにぎやかな声が聞こえてくる。
声の方向へと向かうと、名前以外の2年生全員と、恵、その隣には名前の知らない女の子がひとり。


「真希ちゃーん、棘くーん、パンダくーん」
「名前!スマホ、何回も鳴らしたんだぞ。気付かなかったのか?」
「うわ、サイレントになってた。ごめん真希ちゃん。棘くんもごめんね」


指摘されスマホを確認すると、真希からの不在着信が数件、棘からはスタンプがこれでもかと送られていた。目の前にいる棘は、スマホを名前に見せつけがら「いっぱい連絡したのに」という雰囲気を醸し出している。
いつもはかけていないマナーモードが、知らないうちに触って設定していたらしい。

名前は自分を探していた理由を問えば、硝子の口からも聞いた交流戦の話。殺す以外なら何してもいい、京都姉妹校交流会という名の呪術合戦。
2・3年メインのイベントではあるが毎年人手が足りず、今年は同期の乙骨憂太が海外にいることと3年が停学中ということもあり、1年のふたりを勧誘しに来たということだった。
なるほど、と頷いたがそれも束の間。名前が来る前に事は進み、無事に1年生の勧誘が出来たらしい。


「なんだ」
「なんだとはなんだ。勧誘して終わりじゃないぞ」
「しゃけしゃけ」
「参加するからには、殺されないようしごいてやらないとな」
「伏黒、あの人は?」
「2年の五条名前先輩。結界術なら呪術界でも抜きん出てる」
「へえー高専に五条が2人もいるのね」
「そういやお前の馬鹿兄貴は?」
「悟くん?呪力は感じるから高専内にはいるんじゃない?」
「………………えっ、いま兄貴って言った?兄貴って言った!?」







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