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「この服にはこっち?」
「違う。もっと主張してないデザインは?」
「あるよ。これとかは?」
「……デザインはいい。けど、このカラーじゃなくて別のカラーで出来る?」
「出来る。あ、じゃあこっちのカラーでいい?」
「いいね。それでいこう」
「それなら、このアクセサリーのカラー変えるなら、元々の色で手元のアクセサリーなにか作ろうか。似たようなデザインでセットで着けれるように」
「そうだね……出来る?」
「任せて」


今日は次の亜貴のショーで使用するアクセサリーや小物の打ち合わせ。
メインではないものの、無くてはならない存在。朝から亜貴のアトリエに篭って黙々と作業を進める。
自分の所からいくつか持ち出した商品サンプルと、まだスケッチブックの中にあるデザインと合わせながら話を進めていく。
妥協はもちろん許されない。妥協した時点で、それはもう最高のものではなくなるからだ。

私は先程の会話で生まれた新しいアクセサリーのデザインを考えながら、スケッチブックの新しいページに描いていく。
かりかりと鉛筆を走らせながら、ふと、ちらりと亜貴の方に目線だけ向けてみた。
そこには、真剣な表情で洋服と向き合う彼がいて。

かっこよくて、綺麗な横顔だなあ。

付き合う前からずーっと見てきたけど、いつまで経っても飽きなんてこなくて。何事に対しても妥協を知らない、真剣に向き合う彼の横顔が、いつも好きだなって思う。


「……なににやけてんの名前」
「あらばれちゃった」
「そりゃあそんな見つめられたら気づくでしょ。なに、デザインできたの?」


差し出された手に描き終えたスケッチブックを渡して、亜貴は再び洋服と合わせながら再度見えた思案中の顔。
髪をかきあげる仕草でさえ愛おしさを感じる。


「……うん、いいんじゃない?はい、スケッチブック」
「…………」
「なに?」
「ううん。すきだなあと思って」
「なっ……!?」
「わ、赤くなった。じゃあこれでサンプル作るね!終わったらまた連絡する!」


言うだけ言って、スケッチブックを受け取った後、持ってきた荷物をまとめる。
今日はこの後予定もないし、いまから会社に戻ってサンプル作りに勤しむかな。
会社に居るであろう弟に連絡を取りながら玄関まで向かう。お、既読はやい。弟がいるなら、早めにサンプル完成出来そうだな。


「じゃあね亜貴。また連絡する」
「……名前、」
「えっ、なに、」


腕を勢いよく引かれたかと思えば同時に唇に柔らかい感触と、次に見えたのは亜貴の綺麗な顔で。
あ、いまキスされてれる。

貪るような少し長めのそれに酸素がなくなってくる。亜貴の肩を叩けば、物足りなさそうに離れていった。


「……っは、なに、いきなり……!」
「ぼくだって名前のこと好きだし。さっきの仕返しに決まってるでしょ。……顔、赤いよ」
「〜〜〜!ばかあき!」


したり顔の亜貴を後ろに、私は、赤くなる顔を隠すように勢いよく亜貴のアトリエを後にしたのだった。





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