※35話番外
※植え込みの中に隠れる夢主を見つけた新くんの話

「ナマエさん……?何してはるんですか……?」

「しーっです!隠れてください……!」

「わっ……!こんな植え込みにいたら汚れますよ?既に頭に葉っぱ付いてますけど!?」

「それどころではございません……!二人の会話が聞こえてこないので少し静かにしていただけますか……!」

「あ、加茂さんと八尾さん……?」

「お静かに、です……!」

「はい……(十メートル以上離れてたら聞こえへんと思うんやけど)」

「……顔が近いです……!あっ、あっ、それ以上憲紀さまに顔を近づけちゃだめです……!きゃあ!腕を触っております!ああ、もう!信じられません……!」

「(ナマエさんがこんなに取り乱しているところを見るの初めてやな……)」

「……行ってしまわれました。追いかけましょう」

「え!俺は寮に戻るところなんで遠慮しておきます……」

「わかりました。わたし一人で様子を窺って参ります」

「あの、頭に葉っぱ付いてますよ?」

「……わたしったら我を忘れておりました……恥ずかしいです……これで大丈夫でしょうか?」

「ええっと、ここにも葉っぱが……顔も汚れているような……?」

「こんな姿で憲紀さまに見つかってしまったら大変ですね……今回は諦めます……」

「ほんなら俺が話しかけて来ますよ?何話してたか聞いた方が早いやろし」

「新くん……この御恩は一生忘れないです……」

「ナマエさんも今度から我慢せずに話しかけたらどうですか?」

「……余計なことを申し上げてしまいそうで怖くて……憲紀さまに女の嫌な部分は見せたくありません」

「加茂さんはナマエさんに嫉妬してもらえたら嬉しいと思いますけどね」

「新くんは優しいのでたまに本当にそう思ってくださってるのかわからなくなります……あ、憲紀さまに気づかれてしまいました……!汚れた顔はお見せできないので逃げます……!あとはよろしくお願いします……!」

「え、あの、ナマエさん!?……行ってもうたわ……」

「新田、ナマエは何故いなくなった?」

「……えーと、急ぎの用事があるみたいで……」

「ナマエと何を話していた?」

「(余計なことは言わん方がええやろな……)特に何も……加茂さんは八尾さんと何を話してたんですか?」

「訓練や肉体作りについての話だがそれがどうかしたのか?私を誤魔化そうとしているのか?」

「俺も急ぎの用があるので……」

「待て。ナマエは私に気がついていたようにみえたのだが気のせいか?」

「……そんな加茂さんに気がついておきながらナマエさんが逃げるわけないじゃないですか。ところで腹の空くようなええ匂いがしはりますね」

「……補助監督にチョコブラウニーを貰った」

「(ああ、これナマエさんがまたおかしくなるやつや……見つかる前に処理しとこ)俺、腹空いてるんで貰ってもええですか?」

「構わないが……ナマエはなんの用があると言っていたんだ?」

「そこまでは知らないです。……このブラウニーめちゃくちゃ美味しいですね…(ナマエさんのクッキーも美味いけど、これは相手が悪いかな……)」

「そういえば、ナマエが彼女のクッキーを気に入っていたな。ナマエの分は残しておいてくれるか?」

「じゃあ、俺が渡しときます(ナマエさん、このブラウニーは俺が処理しときますよ……)」

「いや、私から渡す。新田も急ぎの用があるのではなかったのか?」

「あ、そうでした。俺、急ぐんで失礼します……!これ俺がナマエさんに渡しておくんで!(全部俺が処理しますけど)」

「待て新田!私が渡すと言っただろう!新田め……」




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