ガラスの城
昔から、一つだけ特技があった。
物心がついた頃、わたしが自分をアマノという名前の女の子だと確認した、ずっとずっと昔からわたしと一緒にあった特技があった。
その事を、人に言ってはいけないよ。
お母さんもお父さんも、うんと小さい頃からわたしにそう言っていた。人には隠さなくてはならない、普通の人には決してないわたしの特技。
そのせいなのかどうなのか、よく分からないけれど昔から、わたしは一人きりだった。
お父さんはポケモンの研究をしている人だった。研究者として、お父さんがどういうくらいの人なのかはわからない。ポケモンの、進化について詳しく研究しているらしい、ということくらいしかわたしは知らない。
ただ、お父さんのその職業の都合で、小さい頃から色々な地方に住んできた。一番最初は、おばあちゃんの家のあるジョウト地方。次は、シンオウ地方。その次は、カロス地方。ほんの少しだけだけれど、ポケモン博士として名高いオーキド博士のもとに用があったとか何とかで、カントー地方にも住んでいたことがある。
どこも一年か二年の短い間だけ、色々な所を転々としてきたから、何処に行ってもわたしは余所者で、いつもいつも一人きりだった。
人付き合いが苦手、と、そういうことなのかもしれないけれどもう既に出来上がっている集団の中に、自分から仲間に入れてと言えるような勇気は、わたしにはなかったのだ。
そんな勇気を一欠片も持てなかったわたしをお母さん達はとても心配していて、自分から遊びに誘ったらどうか、とか家に遊びに来てもらったら、とか。あとはその時話題になっている絵本をわたしに渡して、これで会話のきっかけを作ったらどうか、とか。色々と手を尽くしてくれていたのに、結局引っ越した先々で、わたしに友達が出来たことは無かった。
そして、ずっと一人ぼっちだったことの理由付けを、わたしは自分の、人に隠さなくてはいけない特技のせいにした。
この特技を、みんなには隠さなくちゃいけない。
だからわたしは、わたしには友達が出来ないのだ。
バカみたいに身勝手で、呆れ返るほど穴だらけの言い訳だけれど、わたしにとっては大切な大義名分で、周りの子たちが楽しそうに公園を駆けていくのを端っこの、木の影から見つめながら心の中で必死に言い訳を呟いていた。
長い間を同じ街で過ごさないからか転校続きのスクールに、そんな調子では全く馴染めなくていつもいつも転校生の、ちょっと変わった女の子、というような位置づけにいたんじゃないかと思う。
行く先々で浮きっぱなしで自分から馴染む努力もしなかった。
そんなわたしのお友達は、ずっとポケモンだけだった。
大抵、どんな所でもわたしはポケモンとはすぐに仲良くなれる。パートナーとなるポケモンはずっと隣にいてくれたし、何より、わたしの特技というのは、ポケモンと会話ができるというものだったからだ。