水面の揺らめく音
もうすっかり慣れきったこのあたりの野生のポケモンとのバトルや、トレーナーさんたちとのバトルをくりかえしながら進んでいくと、辺りがばっと開けた場所に出た。ミシロタウンと同じくらいのかんかくで家々が立ち並んでいる。中でもわたしの目を引くのは赤い屋根の大きな建物と、青い屋根の小さな建物だ。
ポケモンセンター、通称ポケセンと、それからフレンドリィショップ。旅にはかかせない、大切な施設だ。
ミシロタウンにはなかったそれらの施設に自然と目がいくけれど、特にキズ薬なんかが減っているわけでもないし、このままポケモンセンターに今日の宿泊の予約をしてこようか。それとも、もう少し、進んでみようか。
コトキタウンは大きな施設とかがあるわけでもない、いたって普通の町である。ミシロタウンとの違いはポケモンセンターとフレンドリィショップ、それからポケモン研究所のあるなし、くらいだろう。ミシロタウンではポケモンセンターの役割を、オダマキ博士がしてくれる。もちろん、ポケモンセンターよりは本格的ではないけれど。
タウンマップを広げて見ると、コトキタウンは三つの道路に面していて、それぞれがミシロタウン、トウカシティ、カイナシティにつながっている。水辺をわたらなければいけないカイナシティにはまだ行けないから、そうしたら進むのは当然、トウカシティ。ポケモンジムがあるから、挑戦してみるのもいいかもしれないなぁ、なんて思う。
これからの予定に思いを馳せていると、依綱がつい、と腕をひく。
「なぁに、依綱」
「お腹、空いたなぁって思ったから」
少し恥ずかしそうに依綱が言う。たしかに。太陽は真南のほうからわたしたちを照らしていて、時計を見てもやはりお昼ごはんの時間だった。
「どうしよっか、ポケモンセンターでご飯食べて、それからトウカシティに行く?」
「ん、アマノがいいならそれでいいよ」
わたしの提案に依綱はうなずいて、ポケモンセンターに向けてふたりで歩く。
今日中にトウカシティについてしまったなら、明日はポケモンジムに挑戦してみよう。わたしはこれでも、バトルには自信があるのだから。
今日の、旅に出てから初めてのお昼ごはんはなにをたべようかな。お母さんのご飯じゃないものを食べるなんて久しぶりで、ちょっと残念だけれど、それとおんなじくらいにどきどきした。
「アマノ、早く」
「まって、依綱」
依綱はよっぽどお腹が減っているのか、眉を寄せながら頬をふくらませてこちらをじとりと見ている。
普段あんまりご飯に深い関心をよせることがない依綱だから、なんだか不思議。
「いいこと、ばっかりだね」
旅に出るって。
さっきからわくわくばかりがとまらなくて、怖いこともいっぱいだけれどそのぶんなにもかもが楽しい。
わたしの言葉を聞いて、不思議そうに首をかしげる依綱をおいこして、ポケモンセンターの自動ドアの前に立った。