真拳勝負…?

   

乾杯用に渡した木の実を嬉しそうに食ってるチビを見る。
どうやら木の実を食うのに夢中になっているようだった。

確かにチビが持ってきた木の実は今まで食った事のない不思議な味で美味しいがそこまで夢中になるとは、コイツの味覚は俺達とは違うのかもしれない。

そう思ってると、ふと木の実を入れてきた殻を思い出す。
あんなに大きな卵がこの島にあったことに疑問を持つが、もしかしてチビはあの卵から産まれたんじゃねェか?と。


「なァ、エース」

「ん?どうしたんだよ」

「あのチビ、もしかして生まれたばっかとかじゃねえか……?」

「………は?」


俺が言った言葉にエースはジッとチビを見てからその近くに置いてある殻を見て、その顔を青くさせた。

知らなかったとはいえ、赤ん坊に木の実採りに行かせてたんだから……そうなるよな。まあ、取りに行かせてたのは俺だけど……。


「な、なあチビ」

「……?」


数ヶ月一緒にいるけど、俺達はコイツの声を聞いた事がない。(いや、そもそも人間なのかすらも怪しいがこの世界には魚人に巨人、それから新世界と呼ばれる偉大なる航路の後半の海にはミンク族と呼ばれる種族もいるんだからコイツもその類かもしれないが……)

チビはなに?と言いたげに首を傾げながら顔を青くさせているエースを見上げる。


「お前って歳、いくつなんだ?」

「……」


その質問に怪訝そうな反応を見せたがチビはいっちょ前に腕を組んでうーんと考える素振りを見せるが答えが返ってこない。


「………生まれたばっかり、とか?」


俺がそう言えばチビはうん、と頷いた。
その答えに俺とエースは嘘だと言ってくれ、と呟いてしまった。
エースに至ってはガクリと肩を落としてもいる。

落ち込んでいるエースを宥めるようにエースの癖っ毛の頭を撫でるチビに俺は罪悪感に襲われていた。
いくら何でも生まれたばかりのガキを使うとか、鬼か俺は…。


*****


「だァから、俺がチビを抱っこするからお前は運転に集中しろって」

「いいや、俺がアイツを抱っこする。仲間にするって決めたんだから俺が抱っこするべきだ」


木の実を食い終えた俺達は出発の前にどっちがチビを抱っこするかで揉めていた。
このままじゃ埒が明かないと思ってチビ本人に決めてもらおうかと思ったら、チビは波打ち際で楽しそうに水遊びしていて、声を掛けられなかった。
あんなに楽しそうに遊んでるの初めて見るんだよ、これから海に出るから遊べないだろうから邪魔するわけにもいかねェし……。


「しょーがねェ…ここは公平にじゃんけんで決めようぜ!」

「じゃんけんって……まあいいけどよ」


エースの提案に俺はため息を吐きながらグッと拳を握る。


「「最初はグー!じゃんけんポンッ!!」」


俺、チョキ。エース、チョキ。


「……あいこで、しょ!」


俺、パー。エース、パー。
またしてもあいこ。
しばらくじゃんけんを続けるが、あいこばかりで勝負が付かない。


「「あいこで、しょ!……あっ」」

いい加減イライラしてきた時、決着が付いてしまった。
俺、パー。エース、チョキ。

負けた。

思わず砂浜に両手を付いて項垂れてしまった。
頭上からはエースの「っしゃあ!!」って声がするけど、お前ちゃんと運転しろよ?これでヘマしたとか、助けねェからな……。

なんて思いながら水遊びしていたチビを抱き上げてクルクル回ってるエースに俺は苦笑し、保存食の入った袋とこの島で野垂れ死にしていった奴らの付けていた金品をまとめた袋を担いでストライカーに乗った。


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