カモミールティーでも飲もうか

   

鴨志田が警察に連行され、暁達は普通の学生として日常を過ごしていた。

今日も校長の盗聴をしている葵依は帰る準備をしながら竜司に目を向けた。パレス脱出後から彼は体力作りも兼ねてトレーニングを始めたらしく今日もジャージに着替えていた。

廊下に出ると急いだ様子の杏と擦れ違った。彼女はあれから何度も志帆の家に足を運んでいるようだが、志帆とはまだ会えないようだ。
鴨志田が改心したとはっきりするまで、気を休めることは出来ないだろう。

そう思いながら急ぎ足で階段を駆け下りて行った杏を見送ると今度は暁が出てきた。
相変わらず彼が出てくると彼の噂話が聞こえてくる。

葵依は周囲の態度にため息を吐きながら暁に近づいた。


「やぁやぁ、暁クン!元気かね!」

「え、あ……葵依か」

「え、誰だと思ったの?」


暁の反応に首を傾げると彼は苦笑しながら謝ってきた。
別に怒っているわけではない、と言えば彼は笑顔を浮かべた。その笑みがどこか無理をしているように見えた葵依は彼を寄り道に誘った。


「暁はこれから予定とかある?」

「いや、特にはないけど……?」

「ならさ。一緒に寄り道しながら帰ろうよ」

「いいけど……」


暁が返事をすると葵依は彼を連れて学校を出て渋谷のセントラル街にある喫茶店に立ち寄った。モルガナは適当に歩いてくると言ってセントラル街へと消えて行った。


「放課後に誰かとどこかに立ち寄るなんてあんまりなかったから、少し新鮮だな」

「あれ、そうなの?」


水を飲んでそう言う暁に葵依は意外だと思いながらメニューを眺める。
てっきり竜司や杏と出掛けていると思っていたが、そうでもなかったらしい。

暁もメニューを眺めながら頷くと注文するものを決めたようでメニューを机の上に置いた。


「ほら、俺って結構噂されてるから誰かと一緒にどこか寄って帰るよりもそのまま帰ってる方が楽だったんだよ」

「竜司や杏ちゃんからの誘いは無かったの?」

「特にないな。二人とも忙しいみたいだし」


そっか、と言いながらこれに決ーめたと言ってフレンチトーストを指差す葵依を暁は水を飲みながら店員を呼んだ。


「ご注文は?」

「アイスコーヒーとおすすめのサンドイッチ」

「私はアイスレモンティーとフレンチトーストのプレーンで」

「では少々お待ちください」


そう言って店員は一礼すると去っていった。
葵依はトイレに行ってくると言って席を離れた。

用を終えた葵依はトイレから出て自分の席に戻ろうと足を一歩踏み出したその時、事件は起きた。

暁と葵依が案内された席の隣に座っていた男性がいきなり一目で致死量と分かる血を吐いてテーブルに倒れて行ったのだ。勢いよく吐き出される血は机を挟んだ向かいの椅子にまで掛かっている。
そして未だに口と鼻からダラダラと血を垂れ流しながら前のめりに倒れたその男性は机に頭をぶつけた。頭蓋骨のぶつかる鈍い音が店内に響き渡り、男性は数回体を跳ねさせた後、動かなくなった。


「なっ……」


いきなりの事に絶句していた葵依だが、すぐにハッとなって愕然となっている暁の傍に駆け寄り、彼を席から離れさせる。店内に女性の悲鳴が響き渡る中、男性の声が店内に広がる。


「皆さん落ち着いて!まずその場から動かないように!おい、安室!警察に連絡だ!」

「はい!」


知った声に体が反応しそうになるが、すぐに小刻みに震えている暁に気付いて彼の肩を抱きながら空いている別の席に座らせる。

顔を覗き見ると彼は顔を青くさせていた。
無理もない、あんなに大量の血を吐きながら隣に座っていた人がいきなり死んだのだ。動転しない方が可笑しいだろう。

暁の背中を摩りながらそう考える葵依は運が無い、と舌を打ちたくなった。
パニックになりかけた店内は安室が見事な手腕で落ち着かせた。その間ちょび髭の男性―毛利小五郎―が警察が来るまでその場で待機するように、と手慣れた様子で店内にいた人全員に指示を飛ばしている。

それからしばらく噎せ返るような血の臭いが充満する店内で大人しくしているとパトカーのサイレンが近づいてくるのが聞こえ、葵依は暁の肩を抱いたまま外に目を向ける。外にはパトカーが数台止まり、店の外には野次馬が集まり始める。

店内に恰幅のいい警部と何人か、警察がやって来た。鑑識の人達が現場を見る間に事情聴取をするとのことだが、今の暁はまともに話せそうになかった。

まだパニックを起こしてるのか、それとも“警察”が信用出来ないのか俯いたままだった。


「ではお一人ずつお話を伺いたいと思います。まずそこの二人から」


そう言って目暮と名乗った警部は葵依と暁に顔を向けてきた。
警察と言う事もあり、身体の震えは収まった暁だが無意識に警戒しているようでその表情は強張っていた。

それに気付いているのか、いないのか警察手帳を広げながら高木と名乗った刑事はこちらを安心させるようには笑顔を浮かべて一歩近づいてきた。


「ではまず、お名前から」

「櫻井葵依、秀尽学園の生徒です。彼は来栖暁で私と同じ秀尽学園の生徒です」

「………」


なるべく明るい声で自分と暁の名を言う葵依にコナンが暁を見る。


「本日身分証などは持っているかな?」

「生徒手帳でもいいですか?」

「うん、構わないよ」


そう言って葵依は自分と暁の生徒手帳を高木に渡すと、確認はすぐに終わり生徒手帳は返された。
暁は逮捕された時の事を思い出してしまっているのか表情は硬いまま青くさせている。

大丈夫かな?と思いながら彼の隣に座った葵依は暁の背中を摩る。


「……ありがとう」

「ううん、顔色悪いけど大丈夫?水飲む?」

「いや、平気だ……」


小さな声で返された葵依は眉を下げて暁を見てから警察と世間で有名な探偵に目を向ける。彼等は血で赤黒くなっている机付近に立ち、険しい顔をしている。


「被害者は岡田良博(おかだよしひろ)、45歳…職業は財布に入っていた名刺を確認したところ、オクムラフーズの社員のようですね。死因は毒物による毒殺です」

「ふーむ、珈琲かサンドウィッチに毒物が?」

「はい。ガイ者の手とカップの持ち手、それからサンドウィッチから毒物反応が見られます」


目暮警部の質問に鑑識の人が答えると、小五郎は机の周り、ソファー、荷物を入れておく籠に目を走らせている。

このままスピード解決してくれないだろうか、と思いながら暁の背を摩り続けていると彼からもう大丈夫、と言われ手を離した。


「まさかこんな事件に遭遇するなんて……今日は誘ってゴメンね」

「葵依が悪いわけじゃないんだから謝る必要はないだろ?」

「そうなんだけどさぁ……」


二人でボソボソと小さく話していると安室がソファーから何かを見付けたようで、それを小五郎に渡していた。


「毒か?」

「調べてみないと分かりませんが恐らくは……」


小五郎の呟きに安室が分からないと言いたげに肩を竦めて言うと小五郎は安室から手渡された容器を眺めた後、近くにいた鑑識に渡すと店内に残されている人達から話を伺い始めた。

そして彼はこちらに来ると事件当時の行動を聞いてきた。


「はじめまして、探偵の毛利小五郎です。事件当時、どこで何をしていたのかお聞かせ願えますかな?」

「はい、私たちは亡くなられた岡田さん?の隣の席に通されて注文をしました。その後、私はトイレに行って……席に戻ろうとしたら岡田さんが血を吐いて倒れるところを見たんです」

「……俺は彼女が戻るまで席に座って水を飲んでた」

「そうですか……、情報提供に感謝します」


暁の言葉に片眉を動かした小五郎は何かを考える素振りをしてからそう言うと、葵依は訝しむように目の前の探偵を見てから困ったように苦笑する。


「いえ、これが事件解決に繋がればいいんですけど……」

「事件はすぐにこの名探偵である毛利小五郎が解決しますのでご安心を!」

「はぁ……?よろしく、お願いします」


………本当に大丈夫だろうか?あの探偵。

他の人に話を聞いている小五郎を見て、不安を覚えた葵依はチラリと隣に座る暁を一人にしないよう傍にいることにした。

そして事件発生から二時間後、小五郎が自信満々に目暮に犯人がわかりましたよ、警部殿!と言った。その言葉に店にいた全員が小五郎を見る。


「犯人が解ったと言うのは本当かね、毛利くん」

「ええ、犯人は……来栖暁さん!貴方だ!!」

「っ………俺が?」

「はぁっ!?」


*****


“眠りの小五郎”として有名な探偵に犯人だと言われた俺は彼を見ながらあの時の事を思い出していた。

こちらに助けを求める声、憎々し気に睨み付けてくる目、無罪を主張しても聞いてくれない大人達……。

その時の事を思い出した俺は自分の顔から血の気が引いていくような感覚に襲われた。
目の前で毛利探偵が何かを言っているが、何も聞こえない。

俺は、また犯人とされてしまうのだろうか……。

なんて考えていたら俺の前に葵依が立って毛利探偵に向かって勢いよく指をさした。


「異議あり!!」

「な、なんだぁ!?」


いきなりの異議あり!の声に警察や毛利探偵が驚きで彼女を見る。
毛利探偵の近くにいた眼鏡をかけた小学生も目をパチクリとさせていた。


「なんで面識もない岡田さんを暁が殺さないといけないんですか!」

「そ、それは学生にありがちな学校でのストレスやら鬱憤やらで誰でもいいから殺したかった、つまりは衝動的に人を殺してしまったのでしょう。何より彼は警察が来てからやけに静かだ。疚しい事があるから黙っているのではありませんか?来栖さん」

「……」


確かに俺は警察に対していい感情は持っていない。むしろ信用出来ない。
俺は黙ったまま毛利探偵を睨み付けた。
ここで反論したとしても、あの時のようにどうせ何を言ったとしても子供(俺)の言う事に大人は耳を貸さないんだろうから。

胸の中にある正体不明な不可解な黒い感情が膨れ上がり、俺はギュッと拳を握り締めた。その時葵依が腕を下ろし、口を開く。


「では聞きますが、暁がどうやって食事中の岡田さんを殺したって言うんですか?毒物をいつ仕込んだと?」

「うっ……それは、まだ……」

「次に動機ですが、彼には全くありませんよね?それに“衝動的な殺人”だとしたらまず同席している私が殺されているはず。だというのに私はこうして生きて立っています。それに衝動的な理由で毒物を使っての殺人なんて聞いたことがありません。それなら包丁なりカッターなり使っての犯行であれば衝動的と言えますけど、そこはどうなんでしょうか?」

「それは自分が犯人ではないように見せかける為に……」

「それじゃあ衝動的とは言わず、計画的と言うのでは?心を突き動かされるまま、善悪の判断もしないで行動してしまうことを衝動的というんですよ?名探偵と名高い毛利さんならそれくらい分かってると思いますが?」

「うぐぅ……」


落ち着いたトーンでまくしたてるように話す葵依に毛利探偵は何も言えなくなり、唸るだけだった。

しかし葵依が怒っているということは分かる俺は自分の為にここまで怒ってくれる人がいた、と言う事に泣きそうになって俺は握り締めていた拳を開いた。

学校では噂のせいで心無いことを囁かれ続け、教師すらも目の上の瘤のように疎ましく扱われて来ていた。だから目の前で俺を庇ってくれている葵依に俺はただ黙っているわけにもいかないと思い口を開こうとした時、小さくパシュリという音を耳が拾った。

何だ?今の音?


「ほへ……?ふにゃ〜」


不思議に思って周囲をキョロキョロと見回すと目の前に立っていた毛利探偵がふらつきながらソファーにドカリと座った。


「毛利君、いつものが来たのかね!」

「(いつもの?)それで、毛利さん、俺が犯人と言うのはどういうことですか?」

「来栖さんが、犯人……と言ったのは、あくまで犯人を油断させるための罠です」


さっきのが本当にハッタリだったのだろうか?
俺には毛利探偵が本気で俺を犯人と思っているように思えたのだが……。

隣に来た葵依も不機嫌そうに紛らわしい……と呟いていた。


「失礼しました……お詫びしましょう。これから、岡田良博さん殺害事件について、私の推理をお聞かせしようと思います…」

「もしまた暁が犯人だ……とかだったら洒落になりませんからね?」


そう言う葵依の声は鴨志田と初めて会ったときと同じ、獣の唸り声のような低さで、俺は葵依の機嫌が相当悪いのだと思った。


「それで犯人は誰なのかね?毛利くん」

「犯人は、川口美香(かわぐちみか)さん。貴方です」


金髪に眼鏡を掛けた女性、川口美香は驚きに目を見開いていた。


「ちょっと待ってくれ、毛利君。毒物のビンはこの席から見つかったんだぞ?彼女が犯人ならどうやってこのソファーに」

「目暮警部、他の席のソファーは探しましたか?」


褐色の肌の青年が警部さんの言葉を遮って訊ねると警部さんは顎を触りながら調べていないと言うと、青年はニコリと笑った。


「心理の盲点ですね。一つ見付かれば他の席は普通調べません。恐らく周囲のソファーからも同じものが出てきますよ……ほら」


そう言って彼は適当に近くのソファーの隙間に手を入れると毒物が入った容器と同じ物を取り出して見せた。


「犯人が予め仕込んでいたんでしょうな。被害者がどの席に座っても、その同席者、もしくは隣に一人で座っている人に容疑が向くようにと。そして犯人が毒を塗ったのはサンドウィッチではなく、トイレから出る時に掴むドアノブ。同席者以外の第三者が自然に毒を仕込むにはそこしかないんですよ」


毛利探偵の言葉に青年が言葉を続ける。
どうやら彼は毛利探偵の助手みたいなものなんだろう。


「つまり岡田さんがトイレに入るのをあちらの窓際の席から確認し、すかさず自分も入る。そして岡田さんが個室で用を足している間に内側のドアノブに毒を塗り何食わぬ顔で席に戻る。岡田さんがドアノブを掴み、その手に毒を付けたまま外に出たらすぐにトイレに入りドアノブの毒を拭き取った。……他の客が使用する前にね」

「席に戻った岡田さんが毒の着いた手でサンドウィッチを食べ、死亡。貴女は後日、他の席に仕込んでおいた容器を回収するつもりだったのではありませんか?」


青年が先ほど見付けた容器を顔の高さまで持ち上げて軽く振りながら笑顔を浮かべて川口さんを見る。彼女の顔は強張っていた。


「以上のトリックを実行するには貴方が座っていた席が一番都合がいい。全ての席に目が届くし、岡田さんの食事が手掴みで食べられるものなのか、確認もしやすい。何より続けて二回もトイレに出入りするのに……一番迅速で目立たない位置だから……」

「じょ、冗談じゃないわ!!偶然あの席に座ってただけで犯人扱いだなんて……!名誉棄損で訴えるわよ!!」


毛利探偵の言葉を遮って怒鳴る川口さんに毛利探偵は顔色を変えない。


「……失礼ですが、地毛が見えていますよ」

「え……?」


そう言うと青年はニコリと笑みを浮かべ、失礼しますね、と優しく言うと彼女の金髪を容赦なく取った。
金髪のカツラを取られ、ベリーショートの黒髪が現れると周囲の客がざわつく。
カツラを取られ、動揺している川口さんに毛利探偵が推理の続きを話していく。


「犯人が岡田さんと顔見知りであるのなら、当然変装も必要になります。そして川口さん、貴女の席には違和感があるんですよ。トイレから遠い席にはありえない違和感がね」


毛利探偵の言葉に青年が彼女の座っていた席に移動すると机の上に置かれていた灰皿を手に取って戻ってきた。


「あちらの席、喫煙席ですよね?なぜ一本もお吸いになっていないんです?従業員の方に聞きましたが川口さん、貴女は三十分以上前からこの店に来て喫煙席をわざわざ選んで座ったそうですね?なのに灰皿には吸い殻が一本もない。」

「た、煙草切らしてて……」


目線を彷徨わせながらそう言った彼女に毛利探偵がすかさず口を挟む。


「ホー?入り口のすぐ傍、あんな分かりやすい所に煙草の自販機があるのにですか?」

「あ、それは……」


毛利探偵の質問に答えることの出来ない彼女の顔色はどんどん悪くなっていく。


「その答えは簡単ですよ。貴女が煙草を吸わないから。しかしあちらの禁煙席はトイレからはかなり遠い。トイレに入る人の様子が分かりにくく、自分が行くのも時間がかかり人目に触れる。何より被害者である岡田さんは喫煙者。彼から遠いと様子も分からず、犯行のタイミングも掴み損ねる。だから貴女は吸いもしないのに喫煙席を選び、あの席に座ったんです」

「ぐっ………!!」

「裏付けるように従業員の方は記憶を辿ってくれましたよ。貴女と思しき女性はここの所毎日のように来店しては喫煙側の様々な席に座り、特に最近はトイレ脇の席を選んで座っていたと!そしてその間、貴女は煙草を一本も吸ってはいなかったと!」

「ぁ……ぅう……っ」

「つまり貴女は!準備を整え、待っていたんですよ!岡田さんに毒を盛り、誰でもいいからその同席者、もしくは隣に一人で来た客に容疑を向ける、その条件が揃う時まで……息を潜めて、あの席でね!」

「そして先生の推理が間違っていなければ、貴方のバッグには入っているはずですよ?」


青年がそう言いながら川口さんの鞄を手に取ると中を漁り、ビニール袋に入ったモノを取り出した。


「本当の犯行に使用された毒物とそれを拭き取った布が」

「………っ」


毛利探偵と青年に暴かれ、敗北を悟った彼女が席に崩れ落ちた。


「………殺すしか、殺すしか道は無かったのよ」


頭を抱えながら涙を流す彼女は岡田さんとの関係、そして犯行への動機を話始めた。
俺はそれを見ながらあっという間に事件を解いてしまった毛利探偵とそのアシスタントをした青年を見て、凄いと思った。


「……事件、解決してよかったね」

「ああ、そうだな……葵依」

「ん、なぁに?」

「俺が犯人だって言われた時、怒ってくれてありがとう」


まだ少しだけ不機嫌そうな顔をする葵依に俺はお礼を言った。
すると彼女は驚いたように目を丸くしてから瞬きをして、ニコッと笑みを浮かべた。


「どういたしまして。でも友達なんだから怒るのはとーぜんだよね?」

「……そっか」

「そうだよ」

「それにしても葵依って結構話術高いんだな」

「そうかな?」


そう言って首を傾げる葵依を見て俺は素直に笑った。


「これからもよろしくな、葵依」

「うん、暁」


そう言って差し伸べられた手を握り返した時、俺の中から櫻井葵依への疑いは消えていた。

警察から解放された俺達は歩きながらドリンクストアで買ったカモミールティーを飲みながら途中でモルガナを回収して帰宅した。


「しかし、事件に巻き込まれるとは災難だったな」

「ああ……そう言えば、葵依のことなんだが」

「どうした?」

「彼女は信用出来ると思う」


俺がそう言うと肩に乗っていたモルガナは首を傾げたが、アキラがそう言うんならそれに従うぜと言ってくれた。

そう言えば彼女の毛利探偵への話術というか口撃(こうげき)は凄かったな。

後日、彼女にやり方とかレクチャーしてもらえるようにお願いしてみよう。

そう思った俺は銭湯に行って休むことにした。

      
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