彼は善?それとも悪?

   

今日はとんでもないお出かけになってしまったな、と重い溜め息を吐きながら葵依は駐車場にバイクを置き、エレベーターに乗り込んだ。

遊園地での殺人事件は名探偵の孫である男子高校生が解決してくれたので葵依はさっさとその場を離れ、志帆を迎えにいった。

合流して早々、心配されたが大丈夫と言って少し遊んでから彼女を家まで送り届けた。

気分転換の為に外に連れ出したというのに、と思いながら巻き込まれたのが自分でよかったとも思った。もしも志帆が巻き込まれていたら余計に辛い思いをさせていたかもしれないのだから

エレベーターから降りて、自宅の鍵を開けて、ドアノブを回すと違和感に気付き目を細める。


「……(誰か、いる)」


ベルトに内蔵したナイフに手を掛けながらドアを開け、室内に入る。

玄関には自分の物以外の靴は見当たらない。
葵依は靴を履いたまま中に入り、灯りの着いていないリビングに入るとソファに座る人物を見て、グッと眉間にシワを作った。


「ハァイ、元気してる?ワーンちゃん?」

「……何してるの、ブラッド」

「ヤッダァ、ブラッドなんて可愛くない方で呼ばないでよぉ!ローズって呼んでチョーダイ」

「…………何してるの、ローズ」

「決まってるでしょ?オシゴト前の一杯よ」


キラリと星が飛びそうな程輝かしい笑顔でウィンクしてワイングラスを片手に持つ癖っ毛の茶髪にカトレアの花のような柔らかな青みの紫の瞳をした女性を前に葵依は盛大な溜息を吐いてからナイフをベルトに仕舞う。


「大きな溜息ね〜」

「誰のせいだ」

「あら〜、誰のせいなのかしら〜?」


分かっているだろうにすっとぼけながら冷蔵庫に入れておいたチーズを口に入れて美味しいわね、なんて言うローズに葵依は後で掃除すればいいと思い、靴を履いたままローズに向き合うように足を組んでソファに座った。


「father(ファーザー)からの仕事だっていうならわざわざ顔を出さなくてもいいんじゃないの?」

「やーねぇ。アンタと無関係だったら来ないわよぉ」


ローズはそう言うとペロリと人差し指と親指を舐めてから葵依に目を向ける。ローズから向けられた視線に葵依は片眉を上げて何を言っているのか分からないといった顔をする。

ローズはその反応を見て葵依を馬鹿にするような笑みを浮かべると先ほど舐めた人差し指で差してきた。


「アンタがし損ねた後始末をしに来たのよ」

「後始末?なんの?」

「同じ国で行動するなら“前の仕事”で使った人間の処理くらいしときなさいよぉ」


そこまで言われようやく後始末せずにここ最近使った“小鳥遊茉莉”のことだと察し、またしてもグッと眉間に深い皺を作った。


「反省しなさいよぉ?fatherから言われなきゃアンタの尻拭いなんてしたくないんだから」

「アンタが親切で何かしてくれることなんてあり得ない事だって知ってる」


そう言いながら何故あの人が“小鳥遊茉莉”を消せとローズに指示を出してきたのか分からなかった。


「その顔……なんで消せって指示が出たのか分からないって顔ねぇ」

「実際、分からないからね」


素直に答えればローズはつまらなさそうに肩を竦めてソファに寄り掛かる。


「アンタのその変に素直な所、キライだわ」

「それは良かった。貴方に好かれようなんて思っていませんので」

「ちょっと、いきなり口調変えないでくれない?」


気持ち悪いと言いながら空になったグラスを机に置いて両腕を摩るローズに葵依はニッコリと笑みを浮かべて返す。

それに対してローズはハァ…とため息を吐いて言葉を続ける。


「小鳥遊茉莉の事を調べようとしてる子がいたのよ」


「なんで、今頃になって……」

「さぁ?そこまでは知らないけど、そういうことがあったからfatherがアタシに仕事として振ってきたのよ」


そう言ってグラスにワインを注ぎながらチーズを食べる。


「……小鳥遊茉莉を調べようとしてた奴に関しては私の方でも調べとくけど、どうする気?」


すると正面に座った彼はワインを一口飲んでから自分の顎をそっと撫でると恍惚とした笑みを浮かべた。


「あら?なぁに簡単なこと聞いてんの?  に決まってるでしょ。それが一番手っ取り早いんだから」


馬鹿馬鹿しいと言いたげに笑って言うローズの殺気が自分の身体を貫いたような錯覚に襲われ、葵依は金縛りにあったかのように冷や汗を浮かべつつ、不愉快だとローズを睨み付ける。


「今の日本はやたらと物騒よねぇ。ま、そのおかげでこういった処理もしやすいんだけど」

「……」

「丁度いい猟奇殺人が続いて起こってるでしょ?」


そう言うとローズはリモコンを手に取り、テレビを点けた。テレビにはニュースが放送されていた。


『次のニュースです。今月〇日午前0時に発見された焼死体の身元が判明したことが捜査関係者への取材で分かりました』


そして映し出された写真を見て、葵依は頭の中が急に冷えていくのを感じた。


「(そっか、だから連絡が取れなくなったのか……)」


テレビに映し出されたのは葵依が情報を買っていた男の写真だった。


名前は大道寺重弘(だいどうじしげひろ)、年齢は50代後半で無職。テレビで報道され、葵依は初めて情報を売ってくれていた男の名前を知った。


『なお、先月から連続して起こっている殺人事件と手口が似ている事から、警察では同一犯の可能性が高いと見て捜査を進めると――』

「小鳥遊茉莉にはこの事件の被害者の一人になってもらうから明日のニュース、確認しといてよぉ?」

「……わかった」


どこか心あらずな声を出す葵依にローズはテレビに映った大道寺を見るが、興味無さそうに肩を竦めると立ち上がり、出て行った。

一人となった葵依はジッとテレビを見つめる。


「(中々使える男だったのに、この忙しい時に殺されるなんて……また新しい情報屋を探さないといけないとかめんどくさい)」


彼とはそこそこ長い付き合いだった。
しかし殺されたということに悲しさや悔しさなどは沸いてこず、次の情報屋を探さなくてはならないことにうんざりする。

机の上に残されたチーズを取ると、それをゴミ箱に捨てた。


「とりあえず、茉莉(私)を調べようとしてた相手を探すか」


ポツリと呟いてから葵依は靴を脱ぐと汚れた部屋を綺麗にするために掃除機を手に取りスイッチを入れるとパソコンに一通のメールが届いた。

掃除を終えてからメールを確認すると差出人は明智だった。

スクロールしてメールの内容を確認すると血液から取ったデータと一致する人物を探してほしいというもので葵依は表情を険しくさせると電話を掛ければ、明智はすぐに出た。


「これ、医療機関にハッキングしろって言ってるようなもんだって分かってる?」

『分かってるよ?だから君に頼んでるんじゃないか』

「いくら何でも医療機関ともなると片手じゃ無理」

『えー、出来ないの?』

「急に可愛い子ぶるな!!」

『ある事件の重要人物を特定出来るかもしれないんだ。協力してくれないかな』


事件の重要人物と訊いて葵依は口を閉じ、少し考えてから分かったと答えた。


「アンタには色々と手伝ってもらってるし、事件解決に繋がるんなら、こういった事が得意な子に渡しとく」

『ありがとう』

「お礼を言われるようなことじゃない。……それじゃ、おやすみ」

『ああ、おやすみ』


通話を切ると葵依は別の場所に電話を掛けた。
中々電話に出ない相手だから、コール音が何回も繰り返される。


もしかして寝てるのだろうか?と電話を一旦切ろうとしたところで相手が電話に出た。


「遅くにごめんね。久しぶりに潜ってもらいたいんだけど、いいかな」

『―――!―――?』


時間も遅い事から電話向こうの相手の声は不機嫌なものだった。それに対して謝るも相手は少し怒っているようで声に棘を感じる。


「うん。急にゴメンね?でも私にはちょっと厳しくって……キミにしか頼めないんだよ」

『――――――』


キミにしか頼めないのだと言えば、相手はまんざらでもなさそうにしながらもどこに潜ればいいのか訊いてきた。

簡潔に医療機関だと伝えれば相手はゲッと嫌そうな声を漏らすも、時間はかかるけどやってみると返してきた。


「ありがとう。今、そっちにデータを送ったからお願いね」

『――――――!!』


欲しい情報が手に入ったらまた連絡すると若干キレ気味に言いながら相手は電話を切った。


「さて……もう寝るか」


今日は色々と厄介な事が起きて肉体的精神的に疲れた葵依はこれ以上何かする気になれず、もう寝ることにした。


*****


翌日、斑目のパレスに行こうとチャットで竜司から誘われ、今日は特に予定があるメンバーはいないということもあり、今日の放課後はパレスに行くことに決まった。葵依はそれを見ながらため息を吐き、祐介のコードネームは決まったのか?と聞いてみると杏から『決まってるよ』と祐介から『俺の事はフォックスと呼んでくれ』と返ってきた。


「(なるほど、仮面と腰に付いてた飾りで決めたのか)」


なんてパレスでチラリと見た祐介の姿を思い出していると川上先生に指名され、黒板に書かれた問題を解いた。

そして放課後、竜二と一緒に渋谷まで行くことになった。


「そういえばメメントスでの運転って誰がやったの?」

「ああ、ジョーカーがやったぜ」

「え?運転出来たんだ……」


免許を持っているという情報が無かったので出来ないと思っていた葵依は驚いたが、すぐに免許を持たずに車に乗っていたのだろうか?と考える。


「いや、お前の運転を隣で見てたからそれの見様見真似って言ってたぜ?……まぁ、頓珍漢な運転だったから猫に怒られてたけど」

「あー…なるほど?」


車(モナ)に怒られながら運転するジョーカーを想像した葵依はそう返しつつ、暁が無免許運転をしていないことにホッと息を吐いた。

他愛のない話をしながら電車に乗ると電車は人身事故の影響で遅延しており、ホームにはいつもより多くの人でごった返していた。


「電車混みそうだね……」

「最近こーゆーの多くね?」

「これも精神暴走事件に組み分けられるのかな」

「テレビも何か可笑しなことがありゃ、すぐ精神暴走に繋げるよな」


竜司の言葉に頷いて返していると後ろから押され、葵依は竜司の胸に顔をぶつけてしまった。


「いって……ごめん、竜司」

「いや、お前こそ……平気か?」

「んー、何とか?人が多いからあんまり動けないけどね」


電車が来るまでの間、二人はそのままくっついた状態でいた。
数分後、何とか渋谷に着いた二人はふらつきながら連結通路に来ると先に来ていた暁と杏、祐介の三人に苦笑されながら迎えられた。


「お疲れ〜。まさか電車が遅延してるなんてね」

「お前等、間が悪かったな」

「杏ちゃん、癒して〜」

「お前等は平気だったのかよ…」

「丁度俺達がここに着いた時に事故が起きたみたいだ」

「おい、じゃれ合うのは構わねえが、さっさとパレスに行こうぜ!」


皆でじゃれ合っているとさっさとパレスに行きたい竜司の号令でパレスに行くことになった。

アプリを起動させてパレスに入ると前回の騒動が嘘のように警備がそこまで厳しくなってはいなかった。

それを何かの罠だろうか?と思いながら周囲を警戒しているとモナが話し始めた。


「今回からスタメンはジョーカーに決めてもらう事にしようぜ」


どうやら人数が増えた分、目立って行動しづらいとモナが説明すると皆は納得したように頷いた。

モナの話は続き、今回のように二手に分かれて行動する場合もあると考えてメインを4人とし、残りをバックアップ要員としたいということだった。

それに関してはジェスターも賛成で、口を挟むことはしなかった。


「じゃあ、リーダーのジョーカーは外せねえな」

「ああ。だからジョーカーには一緒に行動する3人を選出してもらう」


そう言われ、ジョーカーはすぐにジェスターに視線を向け、モナに戻した。


「バックアップはどうすればいい?ここで待機していればいいのか?」

「いやいや、付かず離れずで一緒に行動しておいた方が良いだろう」


フォックスの質問にモナが答えるが、そこにスカルが待ったをかけた。


「付かず離れずだと結局大所帯になっちまうんじゃねえのか?だったら別行動で探索した方が良いんじゃねえのか?」

「いいや。メインは、言い換えれば前衛だ。いつでも交代出来た方が良いから付かず離れずの方が良い」

「ほーん?」


モナの答えにスカルは理解したのかしていないのか判断に困る返事をするとモナはジョーカーに任せたぜ、と言った。

それに頷いたジョーカーは少し考えてからジェスターに近づいてきた。


「どうしたの?ジョーカー」

「メインに入ってほしい」

「分かった」


ジェスターが二つ返事をしているとフォックスが近づいてきた。


「ジョーカー。俺も前衛に加えてくれ。全力でやる、損はさせない」


そう言うフォックスの瞳にはギラギラと静かな闘志が燃えて見え、ジョーカーは彼の申し入れに頷いた。

これでジョーカー、ジェスター、フォックスと3人が決まり、残りの1人を決めるだけになえい、ジョーカーは最後の一人にスカルを選んだ。

メンバーが決まり、一同は中央庭園に監視室付近のセーフルームに移動する。周囲にシャドウがいないことを確認してから中央庭園に向かって駆け出す。

ずらりと並んだ襖が一気に開いて行く光景は二回目だというのに圧倒されてしまう。

そう思っていると前回は赤外線が張り巡らされていた広場に出たが今回は赤外線は解除されたままになっていた。


「よし、セキュリティは解除されたままだな!」

「苦労したんだから、解除されたままじゃなかったら怒ってるっての……」


ガッツポーズをするスカルにため息を吐くパンサーにジェスターは上の方に監視カメラが設置されていないか確認する。キョロリと肉眼だけで見てみるがそれらしいものも見当たらず、隠してありそうだなと思う場所にもカメラは無かった。


「ジェスター、何してんだ?先に進むぞ!」

「あ、うん」


スカルに声を掛けられたジェスターはジョーカー達の元に戻り、先に進んだ。

ここから先を知っているのはジョーカーとスカルの二人だけ。ジェスターは警戒を緩めずに先頭を走るジョーカーの背を追うと、正面に看板が置かれており『本日は閉館致しました』と表示されていた。

しかしジョーカー達はそれを無視して看板を通り過ぎ、奥へと入って行った。


*****


「撮影の見学?」

「そう。この近くでやるみたいでさ。一緒に行かない?」


コナン、蘭、園子の三人は学校帰りにポアロに来ていた。
そこで駄弁っていると園子がふと思い出したように突然、蘭に近所でやってる映画の撮影に行かないかと誘ってきた。

突然の提案に蘭は目を瞬かせながら首を傾げると園子は笑顔を浮かべつつスマホを弄って画面を見せてきた。


「今日、18時に近所で撮影があってさ。そこに行けば今話題の星城(せいじょう)裕翔くんに会えるのよ!」

「星城裕翔って……あの?」

「そう!!ね、蘭も行こうよ。何だったらガキンチョも連れてきていいからさ」

「うー…ん、どうする?コナン君」


急に話を振られたコナンはオレンジジュースを飲みながらパチリと瞬きをするとストローから口を離し、首を傾げた。


「えっと、誰?」

「うっそ?!知らないの!?俳優よ、は・い・ゆ・う!今ドラマやCMに引っ張りだこなのよ!超イケメンで演技もスゴいんだから!」


コナンの言葉に信じらんない!と言いながら園子はまたスマホを弄って動画を開くとコナンと隣に座っていた蘭に見せた。

そこには悠翔が出演したドラマのワンシーンが映っており、コナンは純粋にそのリアルな演技をすごいと思った。


「凄いね、この人」

「うん、そうだね。ちょっと興味あるし、行こうかな」


映画の撮影見学に行くことにし、蘭と園子は制服から着替える為に一度帰宅する。ポアロに残ったコナンは店内に誰もいないのを確認してからカウンターに立っている安室に目を向け、机に視線を落とし考える。

パレスと称される世界に心の怪盗団と名乗る高校生。
それだけ聞けば子供の遊びとまともに考えなかっただろうが、コナンはそのパレスで化け物に襲われ、ジェスターと名乗る葵依に救われた。

彼女があばら屋の二階窓から飛び降りてくるのを目撃したのがきっかけだった。

空き巣の現行犯と思い、物陰に隠れて様子を伺っていればあばら屋から祐介と杏が飛び出して来た。

二人も泥棒かと思い、笑顔で声を掛けようとした時、彼等の言うナビに巻き込まれ、空中に放り出されていた。

それからはあれよあれよという間に事が進み、いっそ夢でも見ているんじゃねえかと何度も疑った。

けれどもパレスから現実の世界に戻ってきても黒猫は喋るし、彼等には話してなかったが化け物の爪が掠った腕はズキズキと痛みを主張していた。

彼等はあのペルソナという力を使って悪人の改心を行い、世直しをしようとしていると聞いた。

しかしコナンはそれは世直しとは違うのではないだろうか、と思った。

彼等のしている事はかなり独善的な私刑で、危険だと思った。

日本国憲法第31条で『何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、又はその他の刑罰を科せられない』と明確に禁止されているのだ。

つまり簡単に行ってしまえば彼等のしている改心はリンチと変わらないというのがコナンの考えだ。

それに彼等の改心と最近、世間を騒がせている精神暴走事件。この二つは関係あるように思えた。いや、実際関係あるのだろう。

彼等は自分の学校の体育教師を改心させた、と誇らしげに話していた。

もしもパレスでターゲットを本体に帰さずに殺してしまえば、廃人になる。もしも唆して罪を犯すように導けばその人は人を殺めたりもするだろう。

そこまで考えて、コナンは彼等の能力がとても恐ろしいものに思え、ブルリと体を震わせた。

今はまだ、弱者を助けるという目的で動いている彼等だが物事が上手くいけば増長し、その目的も変わってしまうかもしれない。

そうすれば、彼等は自分達が“悪”と判断したものは全て自分達の“正義”の為、改心させていくかもしれない。……例え相手が悪人でなくてもだ。


「(そんなの独裁者と同じじゃねえか)」

「随分と険しい顔をしているようだけど、何か気になる事でもあるのかな」

「え、ぁ……安室さん」


コナンの前にあった空のコップが下げられ、珈琲が置かれた。それを持ってきた安室はぼくのおごりだよ、と言った。


「……安室さんは心の怪盗団って知ってる?」

「女子高生達が騒いでたのを聞いた程度で詳しくはないね。それがどうかしたのかい?」

「ううん、怪盗っていうからKIDみたいなのかなって思っただけだよ」

「そう?」


小首を傾げながら訊いてくる安室にコナンは笑顔で嘘を吐く。彼等の活動を目の前の男が容認しているとは思えないがまだはっきりとしたことが分かっていないので、まだ黙っておく。


「話は変わるけどさ、安室さん」

「なんだい?コナン君」

「葵依姉ちゃんって……味方(いい人)?それとも敵(悪い人)?」

「さぁ?僕と彼女は店員と客って関係だからなぁ」

「……そっか!」

「葵依さんがどうかした?」

「ううん、なんでもないよ」


店内の空気が少しだけ重く、冷たくなったような気がするが、二人はにこやかに笑いながら蘭が迎えに来るまで他愛のない話をした。

太陽が姿を隠し、月が浮かぶ中を二人で歩きながら映画の撮影が行われている場所まで向かった。

園子は先に行って場所を取っておくと言っていたと蘭から聞いたコナンは張り切ってるなぁ、と苦笑した。


「ホラー映画の撮影だからちょっと怖いかもね」

「蘭姉ちゃんって怖いの平気だったっけ?」

「……園子が言うにはお化けとかの話じゃないって言うから、大丈夫だよ」

「ふぅん?そうなんだ」


星城裕翔目当てだな、とどこか面白くないと思いながら返事をし、櫻井葵依の事を考える。

敵(黒)なのか、味方(白)なのか曖昧(灰色)な少女。

しかしパレスで化け物を相手にしていた時の動きは素人のものでなく、プロのものだった。

だとすれば彼女が一般人という線は消える。


「(櫻井葵依、お前が何者なのか…俺が暴いてやる)」


隠されれば知りたくなるのが探偵と言うもの。
コナンは明日から彼女に着く事を決め、蘭と一緒に撮影現場へ向かう。

コナンの近くを青く発光した大人の掌サイズの蝶が一匹ヒラリと飛んだが彼はそれに気付かなかった。


《“諮問探偵(コンサルティングディテクティブ)”になるか、“犯罪相談役(クライムコンサルタント)”になるか……楽しみにさせてもらうよ、少年(私)》


蜃気楼のような影が笑みを浮かべて背後にいたことも気付かなかった。


201909062300