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7つのチョコを持つ男



黒いパーカーの男性がかぶっていたフードを外す。
銀色の髪がフワフワと風に揺れた。

「あっ!」
「お前は…!」

この天然パーマ、
この死んだ魚のような目…!

「銀さん!!」

銀さんキタァァァー!!

「はっはじめまして!」

すぐさま駆け寄る。

「っあ、おい紅涙!」
「私、早雨 紅涙と言います!」

土方さんの声を背中で聞きながら、銀さんに握手を求めた。
銀さんはニヤニヤして「おう、よろしくー」と右手を差し出してくれる。

ヤバい…!
私、銀さんと握手した!
やっぱ手が大きい!!

「なになに〜?紅涙ちゃんは俺のファンか何かなわけ?」
「いえそういうわけではありませんけど、」
「ごぼエッ!お、思いやりの微塵もない言葉…。」
「フン、腐った社交辞令より余っ程いい。」

土方さんは嫌味に笑い、私の肩を掴んだ。

「離れろ、紅涙。容易に近付くのは危険だぞ。」
「でも銀さんですし…」
「だからだよ。どこであってもコイツの存在は疑わしい。」
「何その言い方ー。ものすっごく傷つくんですけどォー。」
「うるせェ黙れ。なんでお前がここにいるんだ。」

睨みつける。
銀さんは片眉を上げ、挑発的に笑った。

「そりゃお前、ここが好きだからでしょ。」

『好き』って…

「じゃあ銀さんは望んでここにいる、ってことですか?」
「いやその前にどうやってここへ来たんだ?」

土方さんと私の疑問が溢れる。
銀さんはそんな私達をフッと笑い、

「先に場所を移そうぜ。」

親指で背後をさした。
フードをかぶり直し、ついてこいと言わんばかりに歩き出す。
至極当然にその背中に続こうとすれば、

「待て。」

土方さんに止められた。

「アイツを信じる気か?」
「え、信じないんですか?」
「どこをどう見りゃ信じようなんて思えるんだ…。」

銀さんの後ろ姿を見る。
パーカーの腹部にあるポケットへ手を入れ、ダラダラ歩く様子は余裕を感じた。

「頼もしいじゃないですか。わけのわからない世界で、あの変わらない感じ。」
「余計に胡散臭いだろ。」

ふふ…。
この犬猿っぽさ、コミック通りでニヤけちゃうな。

「さっきお前が駆け寄ってたところを見ると、アイツも銀魂に出てるんだろ?」
「はい、出てます。」
「なら分かるだろ、アイツがどんな野郎か。」
「でも主人公ですから。きっと悪い人じゃありませんよ。」
「なっ、しゅっ…、……主人公?」

あ然とした顔をして、やれやれといった様子で眉間を押さえた。

「そうか、銀魂の"銀"は坂田銀時の"銀"なのか。」
「まぁ…そういう意味も含んでるかもしれませんね。」
「あんな野郎が主人公だなんて……」

「おいお前ら何やってんだ、置いてくぞー。」

離れたところで銀さんが呼んでいる。
私は「今行きます」と返事をして、再び土方さんに向き直した。

「とにかく今は少しでも情報を集めましょう。」
「天人だったらどうするつもりだ。」
「銀さんが?」
「この世界に俺達の天人がいるってことは、坂田の天人もいるはずだろ。」
「あー…なるほど、そうですね。」

言われれば確かに。
銀さんがこの世界にいるなら、天人の銀さんも存在するかもしれない。

「でもさっき見ましたよね?銀さんの頭。」
「頭?」
「耳が生えているようには見えませんでしたよ。」

銀色の髪が風に揺れても、他の天人に付いてるようなケモ耳は見えなかった。

「尻尾は隠してる可能性があるとしても、あの雰囲気は銀さんそのものでした。」
「……。」
「それに場所を変えて話すということは、自分も周囲の視線を気にしている証拠。」
「…つまり俺達と同じ存在だと?」
「はい、…たぶん。」

天人でない人間は警察行き。
私達を捕まえる気があるのなら、ここで話してもいいはずだ。
そこをわざわざ移動するということは、
銀さんも私達と同じ立場にあるから人目につきたくない…んじゃないのかな。

「話すだけ話してみません?」

賭けてもいいとは思う。

「きっと銀さんは私達が知らない情報を持ってますよ。」
「…………はァァ、」

大きな溜め息を吐いて、

「わかった。…仕方ねェな。」

つまらなさそうに浅く数回頷く。

よっぽど気が乗らないんだな…。
私は小さく笑い、銀さんの背中を追いかけた。

「ところで、どこに行くんですか?」
「ん〜?俺のアジト。」
「アジト…」
「ねぐらにしてる場所があんだよ。そこなら邪魔は入らねェから。」

そう話しながら、細い路地を曲がる。

…ん?
元の世界にこんな道あったかな…。

「こっちだぞ。」

いや、なかったよね。
細いし暗いし、何よりどんどん砂利道になって歩きづらい。
足元を見ていないと転びそうなくらい大変な道なんて記憶に…

「着いたぞ。」
「えっ」

顔を上げる。

「何…ここ……」

そこは今まで見たことのない場所だった。
舗装されていない道を挟むようにして建ち並ぶ長屋。
軒先に吊るされている目隠しのような、のれん。
古民家風とも言えなくないが、"風"なんかじゃなかった。

「こんな場所…、……知らない。」

私が知っている街にはない光景が広がっていた。
なのになぜか、どこかで見たような気もする。

「紅涙が知らなくて当然だ。」

呆然とする私の隣で土方さんが懐に手を入れた。
煙草を1本取り出し、箱を握り潰す。

「ここは俺達の世界。銀魂にある街の一角だ。」
「っええ!?」
「だがやはり微妙に違うようだな…。見ろ。」

指をさす。
舗装されていない砂利道の先で車が走っていた。
けれど、

「ハイブリッドカーばっかりですね…。」

行き交う車が1台としてこの景色に馴染まない。

「ハイブリ…?」
「ハイブリッドカーです。低燃費な車ですよ。」

私の世界でよく知る車種ばかり。

…うん、これで分かった。
私達の世界、確実に混じってるな。

「って、あれ?銀さんは?」
「そこ。」

斜め向かいの長屋の前で男性と話している。
相手はケモ耳と尻尾を生やした男性だ。

「銀さんが話してる相手って天人じゃないですか!」
「だな。あの男に限らず、ここの住人全員が天人らしい。」
「えっ!?」

もしかして私達、ハメられた!?

「ごめんなさい土方さん!早くここから逃げ――」
「落ち着け紅涙。普通に振舞ってれば問題ない。」
「で、でもっ…!」

「悪ィ悪ィ、」

銀さんが片手を上げて近付いてくる。
思わず土方さんの後ろに隠れた。

「なに、どうしたの紅涙ちゃん。」
「お前が敵陣の中に放り込むようなことをするからだ。」
「敵?…ああ大丈夫だって。ここの奴らはみんな変わりモン。」

肩をすくめ、私を見る。

「信用しろ、悪いようにはしねェから。」
「……信じていいんですか。」
「どうぞどうぞ。」

両手を広げる。
そこへ年配の女性が近付いてきた。
もちろん天人の。

「あら銀さん、また連れ人かい?」
「おうよ。」

女性が私達をまじまじと見た。
逃げ腰になる私の背中を土方さんが支え、

「やましいことなんてないと思い込め。」

ボソッと耳打ちされる。
私は精一杯の虚勢を張り、長い長い女性の視線に耐えた。

「ふーん、また見たことのない女の子だねェ。」
「っ、」
「あら。でもこっちの兄さんは、」

土方さんの顔を覗き込む。

「まさか…真選組の土方じゃないかい?」
「っ、俺は――」
「バカ言うんじゃねェよ。あんな野郎を連れて来るわけねェだろ?」

銀さんが早々と否定する。

「だけど着ている服もそっくりに見えるけど…」
「コスプレだ、コスプレ。だろ?」

目配せするように土方さんを見た。
土方さんは頬を引きつらせて頷く。

「あ、ああ…そうだ、コスプレだ。」
「へーあんな男をマネるなんて変わってるねェ。…とは言え、」

女性は顎に手を当て、

「あんたの顔、どうにも見覚えがあるんだよ。」

また土方さんを覗き込む。

「銀さん、あんた前にもこんな顔した兄さんと――」
「アイツとも別人。」

…?

「他人の空似ってやつだ。」
「そうなのかい?しかし類は友を呼ぶのかね、毎度"変わり種"ばかり連れ歩いて。」

『変わり種』?

「俺ァ元から顔が広いの。」
「顔が広いだけじゃ見つからないよ。こうも取っかえ引っかえ出来るのは…」
「おいおい、この街で余計な詮索はルール違反だぜ?」
「そうさね。まァせいぜいヘマしないよう気をつけな。」

銀さんの肩を叩き、女性はケラケラと笑って立ち去った。

「ったく。悪ィな、ここの連中ときたら話し好きでよ。」
「…そんなことより、さっきのはどういう意味だ。」

土方さんが低い声で問う。
なんというか…私も聞きたいことがたくさんあった。

「さっきのって?」
「以前に俺と似たヤツとつるんでたのか。」
「あー…まァな、そんな感じ。」
「あァ?なんだその生返事。」

銀さんに一歩詰め寄る。

「はっきり言え。」

今にも胸ぐらを掴み上げそうな雰囲気に、慌てて仲裁に入った。

「おっ落ち着いてください、土方さん。目立つ行動はNGですよ。」
「…チッ。」

顔を背ける。
不機嫌な土方さんに代わって、今度は私が質問した。

「『変わり種』っていうのは、私達みたいな人を言うんですか?」
「そ。天人じゃないヤツの通称。」
「バレてたのか…。」
「ここの人間は変わり種を見慣れてるからな。帽子くらいじゃ隠せねェ。」
「お前が"取っかえ引っかえ"連れ歩いてるせいだろ。」

土方さんが疑わしい目を向ける。
銀さんは「さァね」とごまかした。

「俺ァ善意で人助けしてるだけだから。」
「『人助け』ねェ…。」 
「それについてなんですけど、他にも『変わり種』がいるんですか?」

私達と同じように異世界から紛れ込んだ人が…?

「いる。」
「「!」」
「いや、"いた"だな。」

過去形…。

「もう元の世界へ戻ったのか。」
「だろうな。俺がついて行ったわけじゃないから知らねェけど。」
「どうやって戻ったんだ。」
「そりゃあここへ来た方法と同じ方法に決まってんだろ。」
「ここへ来た方法…、」

来た方法は、私も土方さんも分からない。

「くくっ、お前ら同じような顔してるな。」

銀さんが口元に手を当て、プププと笑う。
土方さんは鬱陶しそうな顔をして「悪かったな」と言った。

「まァそんな落ち込むなよ。分ァってるって。覚えてねェんだろ?来た方法。」
「「!!」」

どうして…

「ここへ来た奴らも皆、初めの頃は覚えてなかったからな。」
「そうなんですか!?」
「どうやって思い出した?」
「その話は中に入ってからにしようぜ。」

銀さんが長屋の方を顎でさす。

「この街の住人が無害とはいえ、いつ外から見回りが入るかは分からねェ。」
「…わかった。」

私達は辺りに目を配らせ、銀さんが『アジト』と呼んでいる長屋の一室に入った。

「お邪魔します。」
「どーぞ。」

部屋の中は6畳ほど。
中央には丸い木のテーブルが置かれている。
壁際にタンスがあるものの、生活感はほとんどなかった。

「悪ィけど茶とか出さねェから。」
「期待してねェよ。」

ヨレヨレの座布団に腰を下ろす。
座ってすぐ、「で?」と土方さんが聞いた。

「他の奴らはどうやって思い出したんだよ。」
「ああ、思い出したっつーより"気付いた"だな。」
「気付いた?」
「自分達を『繋いだ物』は何だったのか、これまで歩いてきた道を辿って気付いたんだ。」

だったら…

「既に俺達もやってる。」

…うん。
私達も道を辿った。
何も気付くことはなかったけど。

「『既に』っていつ?つーか、いつここに来たんだよ。」
「いつと言われましても…」
「いつからこの世界に入ったのかが分からねェ。」
「あー、なら異変に気付いたのは?」

異変…うーん。
変だなと思うことは色々あった。
けど、一番はやっぱり…"土方さん"かな。

「2時間くらい前…ですよね、土方さんと会ったの。」
「そうだな。俺がコンビニ前で煙草吸ってたのが11時過ぎだったから。」
「…ちょっと待て。『会った』?」

銀さんが首を傾げる。

「お前ら、初めから一緒じゃなかったの?」
「当たり前だろ。」
「私と土方さんはコンビニ前で出会ったんですよ。」
「…お前らの関係って何?」
「何って…」

何?

「好きとか嫌いとか、付き合ってるとか何かあるだろ。」
「ねェよ。さっき会ったばっかなんだから。」
「そもそも私達は住む世界が違いますし…。」

二人で顔を見合わせ、頷く。
そんな私達を見て、銀さんはポカンと口を開けた。

「…マジか。」

何が?

「お前ら…なんでここに来たの?」

いやいや、

「それは俺らのセリフ。」
「ほんとに気がつけばって感じでして…」
「え、はァ?お前ら、とぼけてるとかじゃなくて?」
「なくて、です。」
「記憶喪失とかでもなくてか?」
「なくてだ。しつけェぞ。」

私達の答えに、銀さんがどんどん混乱していく。

「どうなってんの?会った奴らは『この先も一緒にいるため』っつー目的があった。」
「…銀さん?」
「なのにお前らに過去がないとなると、一体なんの目的でココに…」
「おい坂田。」
「いや俺にコイツらの目的は関係ねェ。…ねェけど分からねェとこっちで用意する物が」
「銀さん!」

銀さんの肩を揺らす。
ハッとした様子で視線を合わせた。

「あ、わ、悪ィ。何だっけ?」
「どうしたんです?なんかすごく困ってるみたいに見え――」
「どァっだだ誰が困ってるってェ!?俺!?俺なわけねェよなァ!だってこんなに冷静なんだから!!」
「「……。」」

まくし立てる銀さんを黙り見る。
土方さんは浅い溜め息を吐いた。

「ようはお前も分かってねェのか。」
「分ァってるよ!テメェよりは!!」

そこまで必死にならなくても…。

「だったら知ってる範囲のことだけでも話せ。」
「なんでテメェ主導でッ」
「これまでお前が会った奴は二人一組だったのか?」
「…も、黙秘する。」
「あっそ。」

土方さんが立ち上がった。

「紅涙、行くぞ。」
「え?でも…」
「非協力的な奴に付き合うほど暇じゃない。」

玄関の方へ歩き出した。
その背中に、

「わァったよ!」

銀さんが声を上げる。

「…これまで会ったヤツは全員、二人一組だった。」

絵に描いたように不貞腐れた様子で答える。
土方さんはフンッと鼻先で笑い、座り直した。

「今まで何組に会ったんだ?」
「数えたことねェよ。」
「なら数えろ。」
「……。時雨、匿名、神奈、個人的には悲劇好き、」

銀さんが指を折りながらブツブツ呟き始める。

「彩加、浮雲、」
「何やってんだ。」
「数えてんだろ?ゆかり、雛、高槻…で最後だから、お前らが10組目。」

10組…
結構な人達に会ってるんだな…。

「で相手の男は全部お前だ、土方。」

……、

「……はァ?」
「へ?」

相手が全て、土方さん?

「これまで来た女は全員別人だったけど、相手は全部土方だった。」
「い、言ってる意味が…」

土方さんを見る。
土方さんは呆れたのか、うんざりした様子で首を振った。

「もういい。これ以上バカな話には付き合ってらんねェ。」
「嘘じゃねェよ!ほんとにお前だったんだ、土方。」
「んなことあるわけ――」
「お前に覚えがなくても、俺は色んな女とここへ来た土方を見てる。」

今までにない銀さんの真剣な眼差し。
この眼にきっと嘘はない。

「どういう…ことだよ。」
「さァな。お前であってお前じゃねーんだろ。」
「…俺はその女と何しに来たんだ。」
「知らねェよ。けどこれまでの奴らは皆、『この先も一緒にいたいから』って。」

銀さんが出会ってきた二人は、
どれも全て『元の世界でとても親密な関係』だったそうだ。
なのに何らかの理由でここへ来て、
これまでの日々を見つめ直すような時間を過ごすことになっていた、と。

「大体はそんな感じだったぞ。」
「一体なんのために…?」
「試練じゃねェ?『今後も共に過ごしたければ己を見直せ!』みたいな。」
「誰からの試練だよ。つーか余計なお世話だろ。」
「知らねェって。あくまで俺は無事に戻れるよう手助けしてやってただけだから。」
「そこのところも引っ掛かる。」

土方さんが懐に手を入れた。
しかし何も取り出さずに舌打ちする。

「見返りは何だ、坂田。」
「ぅえ!?み、見返りって…何のことかな、土方君。」
「見え見えなんだよ。お前はタダで動くような奴じゃない。」

確かに…。

「や、やだなァ。俺が見返りなんて当てにするわけ…」
「金か。」
「かっ、金じゃねェ!…どうせお前らは持ってないだろうからな。」
「テメェと違って一文無しじゃねェよ。」

ポンと財布を出す。

「え!?くれんの…?」
「必要なら考えてもいい。」
「あ、私も少しなら…。」

バッグから財布を出した。
机の上に並ぶ2つの財布に銀さんの目が輝く。
しかし、

「…いや、ダメだ。」

首を横に振った。

「残念だがその金は使えねェ…。」
「珍しい…。」

思わず漏れた私の本音に、土方さんが「だな」と同意する。

「三度の飯より金がいいんじゃねェのか?」
「そうだけど…お前らの持ってる金は使えねェんだよ。」



「その中の金、円だろ?ここの通貨はエムだから。」
「「エム?」」

聞いたことがない…。

「だから俺への礼は他の物でいい。」
「他の物って…」
「それはこっちで考える。そんなことより、」

銀さんはタンスの方へ振り返り、

「お前らは早く『繋いだ物』を探しに行った方がいいんじゃねェか?」
“刻々と時間は迫ってんだからよ”

そんなことを言った。
引き出しの中から長方形の缶を取り出し、机に置く。

「さっさと見つけねェと消えちまうぞ。」
「消える?」
「…どういう意味だ。」
「あそっか、知らねェのか。」

缶を開ける。
瞬く間に甘い匂いが漂った。
この香りは……

「ちょ、チョコレート!」

7色のチョコレートだった。

「珍しい色のチョコレートですね!」
「だろ〜?何色食おっかなー。」
「青色は何味ですか?」
「なんだろうなァ〜。青だからたぶんブルーベリーじゃね?」
「いや、それは紫でしょ。」
「おうそうか!だったら…」
「話を戻せ。」
「あ、す、すみません…。」

しまった、ついチョコレートに興味が…。

「で、何の話だったっけ?」

銀さんが青色のチョコレートを一粒取り出す。

「『消える』ってのは『繋いだ物』が消えるのか?」
「あー、違う違う。」

チョコを口の中へ放り込んだ。

「お前らの身体が消滅するんだよ。」
「なっ」
「え!?」
「だから24時間以内に見つけろ。」
「ええ!?」

24時間!?

「あ。紅涙ちゃん、これココナッツ味だわ。」

もごもごさせながら、自分の口を指さす。
ちょっと…待ってよ。

「つ、つまり…24時間以内に元の世界へ戻らないと…」
「そ。お陀仏ってわけ。」

そ、そんなサラッと言う?
ああアレか、

「消滅するってのは、この世界から消えるって意味なのか?」

そういうことだよね。
だからチョコレートなんか頬張りながら言えるんだ。

案の定、銀さんは土方さんの問いに頷いた。

「だと思うけど、」

けど?

「元の世界からも消えてるかもしんねェな。」
「「!」」

何…それ……。


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