呼べば、振り向く人
title by 確かに恋だった
少し肌寒くなったこの頃。去年使っていた膝掛けをクローゼットから取り出す。大きめのそれにくるまりながら、テレビの電源を付ける。
そこには、愛しい彼の姿。最近実物を見てないなぁと思いながら、ふいに口をついて出そうになる彼の名前を呑み込む。テレビの中の彼はゲストの人とゲームで対決している。時に本気になり、時に笑い転げる姿は、家にいる時とそう変わらない。
今日は会えるのだろうか。なんて思いながらココアを口に運ぶ。彼のグループのリーダーがCMしてるそれは、甘く喉を通りぬけた。でも、やっぱりちょっと甘すぎて、ケホッと咳払いする。体が温まったことで襲ってくる眠気に抗えず、少しだけとソファーに横になった。
目を開けると視界がぼんやりしている。あー、ソファーで寝ちゃったんだっけと動かない頭で考えた。よいしょっと小さく言いながら体を起こせば、自分ではかけた覚えのないブランケット。薄暗い部屋を見回すと、時刻は23時。バスルームに人の気配。
もしかすると、と高鳴る鼓動を宥めつつ、体を起こしてわざとゆっくり伸びをする。ほとんど確信に近いそれを、確かめずにふわふわしている時が、あんがい好きだったりするんだ。
「あ、起きた?」
一瞬テレビから聞こえたのかと画面を見ると、真っ暗なそこには何も映っていない。
「どこ見てんだよ。」
苦笑混じりに言う彼が、夢ではないかと首を傾げると、
「夢じゃねぇよ。」と先手を打たれた。
「何時頃来たの?」
「えっとさっき。22時半頃かな。」
そう言いながら濡れた髪の毛を、バスタオルでガシガシと拭く。そんな姿も久しぶりだなと、ただ見つめていた。
「すげぇ見るね。穴開きそう。」
くしゃっと笑いながら、私の頭に手を伸ばし、髪の毛をぐしゃぐしゃにされた。お風呂上がりにちゃんとブローしたのにと、不満をぶつければ、悪ガキのようにニヤリと返される。
「あいのその顔、久々。」
なんて本当に嬉しそうに笑うから、私の頬の熱は上がってしまう。そんなリラックスした表情なんて、反則なんだから。
「ねぇ、潤くん。」
口にするのは何ヶ月ぶりだろう。私は普段、潤くんの名前を口にしない。正確には、潤くんが側にいない時には口にしないのだ。口にすれば寂しさが募って、会いたいと言ってしまいそうだから。彼を困らせるワガママを口にしそうだから。
「ん? 何?」
だから、こうして呼んだら返事をしてくれる距離にいてくれることが、こんなにも嬉しい。
「呼んだだけ。」
「何だよ、それ。」
ふふっと笑い合う。何気ないことが嬉しくて、こんな気持ち伝わってるかな。
「潤くん。」
もう一度呼んだ私に、彼は答えず、口づけを寄こした。
呼べば振り向く、私の愛しい人。
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