12/13 ココア / エルマタ


寒い寒い。足早に駆けるも肌に刺さる冷たい風が全ての温度を浚っていく。早くこの寒空の下、暖房のきいた室内へと駆け込みたいも無駄なような気がしだしたのは自販機に到着してからだった。何故、うちの学校の自販機は外にあるか。甚だ疑問である。「何にする?」「んー」私の歩幅に合わせ小走りについてきてくれた隣の赤に問う。さっきまで寝ていたせいかまだ眠たげだ。両手をポケットに突っ込んで、半開きの目は自販機のガラスケースに注がれている。そんな様子を眺めながら自分も何にするか悩む。「あ」目に飛び込んできたのは昨日まで陳列していなかったはずの甘い甘い「やったぁ!やっと出た」「ココア?」私の好物。ココアはココアでもホットココアだ。見つけた瞬間ピッ、ガコンと流れるような動作に隣で早っと声が上がる。私は決まったんだからエルも早く決めてほしい。そんな身勝手極まらない思考はほかほかと伝わる熱に溶かされていった。

12/14 星 / ニコフ


陽が落ちるのが早くなった。陽が上るのは遅くなった。色の褪せたように見える茜色も瞬きのうちに闇夜へ姿を変えてしまうのに、光を取り戻すのには大層ゆっくりだ。夜の時間が長くなった。それは、「朝に星が見えるのは冬だけだね」夜にしか、光が閉ざされた世界でしか見れないものが長く見れるということだ。「ね、どっちが好き?夜の星と朝の星」ガウ。隣人が空を仰いだのが分かった。吐く息は白く鼻先は赤くなっている。「一番星はもうどこにあるかわかんないね」「冬の正座ってなにがあったっけ?」「オリオン座はどの季節でも見えるって聞いたことあるよ。探してみる?」静かな帰り道に私の声だけが聞こえる。けれど繋がれた二人分の熱が一人でないことを意識させ、心臓が震えた。「今夜はよく見えるねぇ」