佐鳥と反連想ゲーム


「はい、こんな来馬さんは嫌だぁ〜。はい!」
「え!?きゅっ急になに!??」
「いいから答えろよ」
「ええええ……えーっと、あ!はい!ゴリマッチョ!!」
「それは私も嫌だ」

ある日の昼下がり。後輩の佐鳥を見つけたので近々荒船がお前に弟子入りするかもしれないと教えてあげたら「それは鮎川さんでしょ!?」と怒られた。解せぬ。この話題は駄目だな。よし、話題転換しよう。自分から振っておいてなんだが前触れもなく勝手に転換した話題が冒頭のあれである。

「じゃあ佐鳥からも!お題!」
「えええ〜」
「酷くないですか!?」

もー!鮎川さん!と全く怖くない怒りを見せる佐鳥。なんでだろう。本当に怖くない。下らない突発的な遊びにはいはーい!と元気よくあげた手に不満気な声を上げたというのにお前はその程度の怒りボルテージでいいのか。理不尽を許すとでもいうのか佐鳥よ。

「お前の本気はその程度か」
「だから急に何ですか!?」

意味が分からないと今度こそ困惑の色を見せだした佐鳥にごめんごめんと軽く謝っておく。

「えーっとなんだっけ。小鹿がゴリラになるんだっけ」
「あんた来馬さんのこと小鹿って思ってたのかよ」
「やだなぁ〜佐鳥なに言ってんの〜?そんなゲームしてたの?」
「会話が噛み合ってない!!」

鮎川さんが始めたことなのにー!と叫び出す佐鳥。普通に五月蝿い。しかし、佐鳥の騒がしい声が響き渡るだけで一向に話が進まないな。仕方ない。ここは年上の私が…………、もう食堂に行っていいかな。

「分かった分かった。いいから、次は佐鳥が出していいから早く言いなよ」
「よくはないよ」
「いいから言えよ」
「理不尽!」

うん、知ってた。

怒ってんのか泣いてんのかわからない表情を浮かべたあとうんうん呻きながらぴきーんと閃いた!と言わんばかりにお目目ぱちりと声を大にして叫ぶ通常運転の佐鳥。

「こんな嵐山さんは嫌だ!」

自信満々に出題しておきながら捻りも意外性もない自分とこの隊長とは。ぴきーん!とつき出された人差し指をへし折りたくなったが私は優しさの塊なのでぐっと堪えて「迅みたいなホスト」と即答しておく。

「即答!?」
「だってイヤでしょ」
「確かに嫌ですけど……てか迅さんみたいって、」
「誰にしよーかな〜」
「無視…」

馬鹿野郎。迅みたいって言ったら『胡散臭い』だろうが。あんな純真無垢で人の悪意すら善意に捉えちゃう天然記念物がいきなりそんな邪心に誰構わずたらしこんでみろ。私は卒倒する自信しかない。

そんな感じでただの暇潰しの話題転換だったのだけれど思いのほかこの反連想ゲーム擬きにノッてきて次は誰にしようかノリのいい佐鳥と考える。

ゴリラじゃないレイジさんだとか、性格イケメンな太刀川さんだとか、ここまではよかったのだが私が言ったチャラい二宮さんに佐鳥が笑えませんと表情を落っことしたところでこの反連想ゲーム擬きは終わりを告げた。内容がどんどん酷くなってきて流石にねぇーわとなったのだ。

「みんな太刀川さんみたいだったらボーダー崩壊しかねないしね」
「太刀川さん?太刀川さんみたいだったら最強じゃないんですか?」
「強いだけじゃん。最強だけど最恐の馬鹿だから駄目だよ」
「鮎川さん、あんたって人は」

おうおうなんだ喧嘩売ってんのかその目は。だってそうじゃないか。同じ戦闘狂なら戦いの事しか頭にない太刀川さんよりも戦いも戦闘員のことも考えられてその他諸々対処できるうちの風間さんの方が断然いいに決まっている。強いだけならざらにいるけど、二宮さんとか二宮さんとか二宮さんとか。東さんやレイジさんもお強いし頼りになるけど風間さんほどの愛嬌(チビッ子属性)はないしなぁ〜。

「そう考えるとうちの隊長完璧すぎるな」
「えー!!確かにそうですけど嵐山さんだって負けてませんよ!!」
「こんな佐鳥はツインスナイプなんて止めてしまえ」
「だから理不尽だって!!」


23.3.12

「こんな風間さんは風間さんじゃない!」
「高身長な風間さん!」
「鮎川さん、後ろ後ろ」