翠玉の雷閃

▽2026/01/10(Sat)
ちょっとだけ前の話
これは翼が時雨達と合流する少し前の話です。
これを読んでから本編読むと、ちょっとわかる部分が増えるかも?

「どうか龍斗を探してくれんか…」

目の前で土下座せんばかりに僕を拝み倒しながら、老人はそう言った。
現在僕は地元…もとい、天空にある龍神の谷を訪れている。
今学園は秋休みな上、レクライアは倒壊し、授業などと言う状況では無い。
その為レクライアへ通っていた天使は皆、特に事情がなければ里帰りをすることになっていた。

…まぁ僕の場合は、あまり実家には行きたくないのが本音であるため、G2(ゴールドグレード)の集合住宅に部屋を借りて住んでいるのだが…今回ばかりは御呼び出しが掛かってしまったのだから仕方ない。
ただその呼び出しと言うのが、今件の老人が発言した、龍斗さんを探してくれと言う"依頼"なのだが。

「…とりあえず拝まないでください。
差し支えなければ事情をお聞かせ願えますか?」

とりあえず事情だけは訊いておく。
ただ、龍斗さん探しなど以前から何度も頼まれていますので、またかとしか思わないのですが。

「…単刀直入に申せば、また壁を破壊して逃げ出した、とでも言えば良いだろうか。」


「…またですか。
あの人は一体何枚壁をぶち抜けば気がすむんでしょうねぇ…。
というかあの人を狭い場所に閉じ込めたらそうなるに決まっているじゃないですか。」

「…族長も中々そちらには目が向かないようでな。
レクライア倒壊の件でも、何やら以前から不穏な動きが在ったようじゃし…。」

「ふむ…。」

不穏な動き…気になりますね。
…ん?
ということは…。

「もしかしなくても外出を禁止されていたパターンですか?」

「…龍斗が帰ってきてすぐにな。」

僕は思った。
"あぁ、それは…あの人の性格なら逃げ出したがるな。"と。
しかもレクライア倒壊などというとんでもない事件の後だ。
あの野次馬根性の塊みたいな男がそれを耳にしたなら、おいそれと大人しくしているはずがない。

「…頼む…!!
もう何人も迎えを寄越しているのだが、軽く返り討ちにされて帰って来よる…彼奴を捕まえられるのはあんたしかおらん!」

あー、龍斗さんと出会って何回この台詞訊いたかなー。

「今回は族長直々の頼みでもある!!」

「…なんですって?」

あのいつもなら適当で済ませる族長が?
どういうことなんでしょう…。

「…地上に降りた奴等が軒並み闇に食われおっての。
龍斗がそうなるという確証はないが、ならんという保証もない。
一応護封陣の首飾りはまだ付けておるようではあったが…。」

「…なるほど…。
つまり食われないように閉じ込めたと。
それは保身のためですか?」

「そんなわけあるかい。
族長は一切そんなこと考えてはおらん。」

「…そうでしたね、すみません。」

…いけない、ついうちの叔父と並べて考えてしまった。
あんな人と一緒にしたらいけない。

「…ともかくだ、龍斗を保護してくれ。
そのあとの判断は任せる。
あんたなら、龍斗の扱いもうまいじゃろうて。」

「…買い被りすぎですよ、おじいさん。」

「かっかっか、毎回正確に龍斗を捕まえて居れば、そう思っても仕方あるまいに。」

老人は朗らかに笑っている。
心配はしているのだろうが、安心しきっているらしい。

毎回捕まえて来られるのは、志苑さんや時雨たちのお陰でもあるんですが…。
…やれやれ、僕のこと信じすぎなんじゃないですかねぇ。


[これが、翼が時雨たちと合流する前の話…。]


「ところでおじいさん。
今回は何故志苑さん呼んでないんですか?」

「…呼んでは見たんだが…少々忙しいらしくてなぁ。
七日で見付からなければ合流してくださるそうだ。」

「…七日ですか。
余裕ですね。」


[龍斗がどこにいるかを、彼が知るまであと五日…。]



















*おまけ/合流直前*

エクタム(通信機関端末(言わばケータイ))での通話ログより

翼「志苑さん…龍斗さんが見付からないです」

志「えっ。
まだ見つかってないの?」

翼「今空の上から風乗りの羽根使って探してるんですが、今回しぶといんですよ…。
あの人、何か特殊装置でもつけて逃げ回ってるんじゃ…。」

ピロリン♪(龍斗から翼と志苑、双方のノートパソコンにメール)

龍斗「
件名:なし

本文:
時雨たちと魔王を倒す旅なうだぜ!
ちょうどひーとの家にいるから、お前らも来いよ!」

翼「…志苑さん、メール、確認しました?」

志「…うん、見たよ。
翼は今何処に居るんだっけ?」

翼「ちょっとゴールドグレード付近です…ってあれ?」

志「え、何、どうしたの?」
翼「…何か…風乗りの羽根のエネルギーが切れました。」

志「えっ。」

翼「ごめんなさい、僕はここまでのようです。
ちょうどひーとの家の真上に来たので特攻します。
無事だったら連絡するんで」

志「え、ちょ、風の音で全く聞こえないんだけど!?
もう落下してるよねそれ!!」

翼「では後程」

[そして翼は通信を切ったと同時に、地面と激突するのであった…]


category:オリジナル小説

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