お日様の鼓動


 

大きな木にもたれてクロエは眠っていた。
研究所を離れたクロエは残してきた双子の妹マシロのことが心配で眠れないことが多々あったが、アメジストが歌ってくれるトキノウタに心地よさを覚えて少しずつ眠れるようになってきていた。


『クロエ…』


心配そうにクロエを見上げるのはブラッキー。
クロエと同じ赤い瞳をきゅっと細めた。


「大丈夫だよ、ブラッキー」

『グレ!』


アメジストがクロエに肩を貸しながら微笑んだ。
レイナも笑顔で鳴く。
ブラッキーとピカチュウのライト、それからフシギバナ。
特にライトは片割れのリヒトがマシロの手持ちであるため不安だろう。


「ボクも最初はクロエが心配だった。でもね、ブラッキー。君が側にいるからクロエは壊れないで済んだんだ」

『ワタシがいるから?』

「うん、君がいるから」

「ん…」


ふぁ、と欠伸をしてクロエが目を覚ます。
ブラッキーが側に寄って、頬ずりをした。


「どうした、ブラッキー?」

『きっと、戻れるわよね?また、ワタシ達のリルベ地方に』

「戻れるさ、ボク達はファマの民でもトキワタリの一族でもないけど、マシロとは家族なんだから」

『そうよね、きっと…』


ブラッキーは不安そうにクロエに寄り添う。
赤い瞳がアメジストを映す。


『お礼を言うわ、アメジスト』

「え?」

「ブラッキーがありがとう、だって」

『…別にお礼くらい言うわ』


ふい、と顔を背けたブラッキーの背中にアメジストは微笑んだ。


 
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