●Memo
→Twitter
夢野夢

(こんなとこまで目を通してくださっているかわかりませんけど)
夢野夢に感想をくださった方々へ
追記から夢野中編の舞台裏SSです。
名前変換なし。彼女表記。夢野視点。夢野の一人称は僕で固定してます。
たぶん完結したらこの話も加筆修正して中編のページに纏めると思います。







 夢の中の僕は幼い子供で、傍らにはいつだって笑顔の少女がいた。

「へぇ〜?幻太郎って結構一途なんだ」

 意外、と間延びした声を出すのは対面に座した乱数だ。少年のような顏に甘い声。そんな彼の内面とのギャップの方がそれこそずっと意外だろう。
 そう思ったけれど、口に出すことはしなかった。出したところで返ってくる答えは想像上と大差ないのだから。

「一途、とは少し違うでしょう。小生のは単なる刷り込み、我輩は哀れな雛鳥に過ぎませんよ」

「雛鳥って!幻太郎はそんなかわいーモンじゃないでしょ」

 乱数は笑う。落ち着いた雰囲気の喫茶店。流れるのはルネサンス期の音楽。それと重なるには不釣り合いな声音。
 けれど僕にはそのいずれもが心地よかった。相反するもの。感情。存在。それはまるで、僕自身のようだった。

「会おうと思わないの?その彼女に」

「思いませんね。思い出は美しいままで──それが小生の願いです」

「ふぅん?」

 乱数は目を細めた。

 ──うそつき

 そう言われている気がしたが、僕は微笑みを選択した。

 ──今更

 例え誰に詰られようがこの性格は直らないし直す気もない。そう、例え彼女に軽蔑されようとも。
 僕はカップを傾けた。昔は飲むことすらなかったコーヒー。その苦味を舌の上で溶かしながら、古くさい旋律に耳を澄ました。

 ──めでたしマリアよ、恩寵に満ちた方

 ──おお、神の御母よ、わたしを忘れないでください

 ……なんて、傲慢だこと!

 そんなことを思う傍ら、僕は彼女のことを考えていた。先日、ようやっと見つけた彼女の横顔のこと。僕に気づきもしなかった薄情な娘のことを。
 それから福音書の一節を思い出していた。『誰も同時に二人の主人に仕えることはできない』という言葉を。
 そしてその後で考えたのは現代において新たな武器となったマイクの存在だった。

「なんて、全部嘘ですけど」

 嘯くと、乱数は呆れたような顔を向けてきた。その目は僕が密かに組み立てている計画を見透かしているようだった。

カテゴリ:ネタ
2019/05/18 03:32


△|▽(TOP)
Category
Back number
Since.2018.07.07

HOME

© 2018 Angelica