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追記よりどうぞ!





>>2019.12.10
ミスタ妹読みました〜の方へ

ありがとうございます!私も書いてて楽しいシリーズです。ただなかなか進展しないので申し訳ない……。私も早く告白シーンを書きたいのですが……。まだ自覚にも至っていないので……。
とはいえ流れは決まってるので完結まで生暖かく見守っていただけると幸いです。

以下お礼に兄と妹の小話です。
(ミスタ視点、名前変換箇所なし)
お兄ちゃんサイドの話も書きたいな〜とは思ってるのでもしかしたら後日ちゃんとした形に纏めるかもです。





 携帯が鳴る前にオレの視線は自然とそちらへ流れていた。だがこれは予感などではない。単純に習慣から生まれた反射で、別にオレが着信を待ってたなんてわけでも無論ない。

『兄さん、兄さん!たいへん!』

 通話ボタンを押すのと同時に耳を突いたのは聞き慣れた妹の声。普段は淡々としたそれが興奮に跳ねているのを聞くと、オレはなんだかよくわからない気持ちになる。いいような悪いような、そんな微妙な感覚だ。

「なんだよ、そんな叫ばなくても聞こえてるっての」

 バールにいたオレはガラス窓の向こうに目をやった。
 ナターレの近づく街。きらびやかな光を放つ夜。妹もきっとそんな街の中にいるのだろう。石畳を蹴る足音が微かに聞こえた。

 ──電話に夢中になって転びやしないだろうな。

 そう思ったけど口にはしなかった。オレは兄であって父親でも母親でもないし、こういう小言を言うのは他のヤツに譲ってやると決めていた。

「それで?なんだってんだよ、毎回毎回……、いったい今度は何が起きたんだ?」

 『告白でもされたか?』と揶揄いかけてオレはやめた。余計なことは言わない方がいい。特にこういった性質のことは。
 訊ねると、妹は電話の向こうで大きく息を吸った。吸って、吐いて、それから。

『……フーゴに、プレゼントをあげることになった』

 まるで一大事だとでも言わんばかりに。厳かな調子で言うものだから、内容はさておきそれは聖書の一説だとかそんなもののように聞こえた。とんだ錯覚である。よくよく聞いてみればなんともちっぽけな、でも妹にしちゃ天変地異にも等しかった。

「そりゃよかった」

『うん、よかった。よかったけど、でもたいへん。どうしよう?』

 売って変わって妹は途方にくれた。まったくコロコロ変わることで。これがいつもは死んだ目をしているなんて信じられない。我が妹の常といったら空想に浸ることで、現実を相手にこうまで感情を露にすることは今の今までなかった。
 フーゴの何がよかったんだ?と、首を捻りたくなるのが兄の性。悪いやつじゃないが、でも全うでは決してない。激しやすいフーゴとぼんやりしている妹。確かに黙ってれば見た目だけならどちらもクールと言える。けどオレとしちゃあ妹はもっと頼りがいのある男……それこそブチャラティみたいなやつに任せたかった。それかナランチャみたいに裏表ない真っ直ぐなやつ。そういう男の方が妹には合うんじゃないかと未だに思う。

「しょうがねぇなぁ」

 でもオレは良くできた兄なのでそういうことは口にしない。黙って妹の話を聞いて、時々助け船を出してやる。それが兄の役割ってものだ。

「付き合ってやるよ、プレゼント探し」

『ほんと!?』

「マジだよ。よかったなぁ、優しい兄貴がいて」

『うん、ありがとう兄さん』

 妹はあからさまにホッとしてみせた。『ありがとう、本当に』正直なのは妹のいいところだ。こうして真面目くさった声で礼を言われるとなんだってしてやりたくなる。オレはいい兄だが、こいつは出来た妹だ。互いに口にはしないが。

『でも兄さん、……兄さんへのプレゼントはちゃんと自分で考えるから』

 『だから期待してくれてもいいよ』と妹は言った。たぶん電話の向こうでは小さな笑みを浮かべているんだろう。オレにしか見せない、悪戯っぽい笑顔を。

「そう言うなら期待してるぜ。お前がどんな綺麗な女の子を紹介してくれるかってな」

『そ、そんなふしだらなプレゼントはあげられない!』

「ふしだらとまで言うことはないだろ。ごくフツーの、男として当たり前のお願い事だって」

 揶揄うと、妹は深々と溜め息を吐いた。

『……兄さんのそういうとこだけは評価できない』

 つまりはそれ以外の点において妹はオレを評価してるってことだ。

『……兄さんのバカ』

 力ない罵倒なんぞに効果はない。
 オレは笑って通話を切った。そうしても頬は緩んだままだった。誰に指摘されなくたってわかってた。オレが妹からの騒々しい電話を楽しんでるってことくらいは。

カテゴリ:返信
2019/12/10 22:32


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