Memo
Twitter
拍手返信と小話

追記よりどうぞ!



>>2019.12.11
昨日ミスタ妹の〜の方へ

こちらこそありがとうございます!いいお兄ちゃんしてるミスタが書きたかったのでそう言っていただけて嬉しいです。
たぶんあと数話で一段落つくと思うので、そうしたらミスタサイドの話も補完として書こうかな〜と。その時はまたお付き合いいただけるとありがたいです。

以下お礼小話。ミスタとフーゴ。ミスタ視点、名前変換箇所なし。





 目に眩しい金の髪に冷ややかな紫の瞳。オレほどではないがそれなりに整った顔を眺めていると、勘づいたフーゴが読んでいた本から目を上げた。

「……なんですか」

 怪訝と不審。そして微かな嫌悪。滲むのは決して良いとはいえない感情で、オレは顔を顰めた。
 まったく、可愛げのないやつ。こいつには年上を敬うって気持ちがまるでない。尊敬する素振りを見せるのは精々ブチャラティが相手の時くらい。丁寧なのは言葉遣いだけだ。でもそんな調子で「気味が悪い」と言うものだから、こいつは慇懃無礼の最たる例だとオレは思う。

「いや、お前らって普段何話してんのかなァ〜と思ってよ」

「お前ら?」

「お前とうちの妹」

 でもオレは優しいのでいちいち気にはしない。今さら言っても無駄だってのもある。毎度毎度噛みつくナランチャとは違うのだ。これが年上の余裕ってやつ。
 オレが言うと、フーゴは「ああ、」と小さく顎を引いた。なんでもないって顔だ。フーゴの名前を出すだけで頬を緩ます妹とは大違い。普通に見てると温度差を感じなくもない。

「別に普通ですよ、普通」

「普通ってなんだよ」

「だから…本の話をしたりとか」

「へえ?」

 オレは然り気無くフーゴの持つ本に目をやった。覗き見えたのは『だまし絵の世界』という言葉。

 ──なるほどね。

 そういえばそんな話も聞いた記憶がある。確かエッシャーだったか。そんなのの展覧会に行ったと以前妹は喜んでいた。空想家の妹はその手の絵画も好きなのである。オレにはわからない世界だが。

 ──でも勉強家なのは感心だ。

「ぼくにはあなたたち兄妹の方が何話してるのか不思議ですね」

「なんでだよ」

「だって趣味合わなそうじゃないですか」

 それはどういう意味だ。
 「そんなことねぇよ」とオレは否定した。フーゴの前じゃ猫被ってるのかもしれないが、別に妹はごく普通の人間だ。ちょっと夢見がちなだけで、オレの下らない冗談に笑ったりもする。

「じゃあいつも何してるんですか?」

「何って……」

 ──掃除とか?

 つい最近の妹の行動を思い出そうとすると、雑巾がけをする小さな背中とか歯ブラシや綿棒を駆使する真剣な横顔だとかが頭に浮かんだ。
 妹が独り暮らしのオレの家に来ると一番にするのが掃除なのである。いや、オレが無理強いしてるのではない。我が妹がちょっと潔癖なだけだ。どうせすぐ埃がつくのによくやるなぁと感心するやら呆れるやら。
 でもそんなことを正直に話すときっと軽蔑の眼差しを向けられるだろう。だからオレは記憶を手繰って、「映画観たりとか?」と曖昧に答えた。

「映画……」

「そうそう、こないだはクリスティーンを観たっけな」

「ホラー、見るんですね」

 「意外だ」とフーゴは言った。それがいやに真剣で、オレはちょっと驚く。ちょっと驚いて、それからホッとした。よかったなぁ、と今すぐ妹に言ってやりたい。お前が好きになったやつは結構真面目でいいやつだよって。

「まぁでも怖いもの見たさってとこはあるな。観たいって言うくせ、夜んなると途端に怖くなるタイプ」

 見ている時は血飛沫に笑って、見終わったばかりは『悪くなかった』と平然な顔。なのに『今日は泊まってく』と言い出すし、そういう日は風呂から出てくるのも早い。背後を気にして、ちょっとした物音にも敏感に反応する。最初から怖がっていれば男受けしそうなのにな、と思わなくもない。
 オレが肩を竦めると、フーゴは「そうなんですか」と呟いた。そうなんですか。──それっていったいどういう気持ちの表れなわけ?だがオレが追及したってこいつは白状しないだろう。だからオレが言うべきことは他にある。

「ファンタジーとかSF、後はサスペンスなんかの方が好きなんだろうな。恋愛とか感動ものはイマイチらしい」

「なるほど……」

 フーゴは顎に手をやり思案した。悩む姿は年相応って感じだ。見ているだけでむず痒い。
 でもオレにとっては歓迎すべきことで、せめてもの抵抗とばかりに目を逸らした。

カテゴリ:返信
2019/12/11 22:17


TOP
Category
Back number
Since.2018.07.07

HOME

© 2018 Angelica