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追記からどうぞ!

あ、あとこれからコメントくださった方にはお礼に小話つけようかなと思いますので推しキャラがいるようでしたら併記いただけると嬉しいです。







>>2019.12.13
おはようございます。ミスタ妹の〜の方へ

こんばんは!こちらこそ沢山のコメントありがとうございます!
逆に気を遣わせてしまったなら申し訳ないです。小話は私自身好きで書いているので……。こうして反応いただけるのは勿論とてもとても(言葉に表せないほど)嬉しいのですが、逆に負担に思われていないかな〜…と気にかかってしまったり……。
今回のも感想を強要するものではないので!コメントへのせめてものお礼ということでよろしくお願いします!(?)

以下ミスタと妹の小話。
次回更新の9話に繋がる話でもあります。(が、読まなくても全く差し支えはありません)。
相変わらず名前変換なし、妹呼びです。





「──私、修道院に入ろうと思う」

 やけに真面目な顔で妹がそう言ったのは今からおよそ三年前のことだった。
 その日はよく晴れた空が広がっていたのを覚えている。『節目に相応しい』と満足そうに言ったのは父親だったか、それとも母の方だったか。
 それは日曜日のことだった。教会からの帰り道だった。妹は堅信式を終えたばかりで、下ろし立てのワンピースを着ていた。それは不自然なほどに白く、オレには妹が何を考えているのかよくわからなかった。

「修道院に入って、そこでみんなの幸せを祈りたい」

 そう言った妹の声は固く、躊躇いのひとつもなかった。躓くことなく言い切って、妹はオレを見た。
 それでもオレには妹の考えが理解できなかった。どうして修道院に入るのか。どうして家を出ていくのか。オレの知る妹はいつだってオレの後を追いかけていた。それが当たり前で、なんの疑いも不満も抱かなかった。
 けれど妹はオレの知らない目でオレを見ていた。舞台を観劇するように、絵画を眺めるように。遠い隔たりの向こう側からオレを見ていた。オレを、両親を、──自分以外の何もかもを。夢見る目で、羨む目で、諦めきった目で妹は世界を見ていた。

 そしてそんな妹に、十五のオレは何も言ってやれなかった。そう、何一つとして。

「お前、今でも修道院に入るつもりなのか?」

 その日のことを鮮明に思い出したのはちょうど件の修道院の前を通りかかったからだ。
 規律の厳しいことで有名な古い修道院。それを見て、オレはそっと切り出した。
 妹の将来については気にかかっていたことだった。オレが『こうなって』以来、口やかましい親戚連中からあれやこれやと一番言われてきたのはきっとこいつだ。それについて考えるたび、オレはひどい不快感に襲われる。いっそのこと修道院に入った方が幸せなんじゃないかとすら思うこともある。
 けど妹は「ああ、」とさも今思い出したとばかりに一拍遅れて頷いた。ああ、そういえばそうだった。

「兄さん、よく覚えてたね」

「そりゃ覚えてるさ」

 だってあんなに印象深い。

「オレは記憶力がいいんでね」

「いらないことばっかり覚えてるとも言う。猫に引っ掛かれた話とか」

「そりゃあ重要なことだろ」

 敬虔な教徒に育てられたわりにうちの妹は『四』という数字がいかに恐ろしいものかイマイチ理解していない。だから兄のオレがついてなくちゃなんねーんだという気にさせられる。オレがいないとどこでどんな不幸に見舞われるやら。
 兄がそう心配しているにも関わらず、妹は「別にもう忘れてくれていいよ」とあっさり言い放つ。忘れてくれてもいいよ。「だって、重要なことじゃなくなったし」

 ──は?

「やめたの、聖職者を目指すのは」

「なんで、」

 三年経った今も色鮮やかに思い出せる。妹の目。黒々とした穴。ぽかりと浮かぶ空洞。空虚は、ひどく寒々しいものだった。
 でも今の妹は晴れやかな顔をしていた。同じ黒には変わりないはずなのに、以前にはなかった溌剌とした輝きがそこにはあった。
 オレの問いかけに妹はちょっとたじろいだ。幾ばくか躊躇って、それから小さくはにかんだ。

「……小さな鞄には詰めきれそうになかったから、かな」

 修道院にはほんの僅かな身の回りのものしか持ち込むことを許されない。聖書とロザリオと、少しの思い出だけ。
 それで以前の妹は十分だったはずだ。そう思ったから聖職者を目指したのだろう。
 なのに今は違うと妹は言う。今の自分には手放したくないものが沢山ある、と。

 ──それはつまり兄より『やつ』の方が大切だ、ということだろうか。

「……あーあ、昔はあんなにお兄ちゃんっ子だったのになァ〜…」

「な、なんの話?」

「お兄ちゃんは悲しいぜ。ま、これが子どもの成長ってやつか」

「だからなんの話?」

 訝しむ妹の頭をぐしゃりと撫で回す。こうしていられるのもあとどれくらいだろう。その寂しさを思うと一発くらいなら殴っても許されるんじゃないかと思う。でもそうしたら妹は怒るんだろうな。まったく、兄ってのは悲しい職業だ。
 でも妹が修道院に入っていたならきっと今以上に会う回数は少なかったはずだ。年に数度、会えるか会えないか。そんな可能性のことを考えれば、やはりオレはフーゴに強く出れない。──悔しいことに。

カテゴリ:返信
2019/12/13 23:10


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