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2019.12.15
>>いもうとシリーズ大好きです!の方へ

わーいありがとうございます!兄弟もの(姉でも妹でも)大好きなのでそう言っていただけて嬉しいです〜!他キャラの夢も増やしたいところですね……。

というわけで以下お礼小話。お試しも兼ねてプロシュート妹です。夢主視点。
お相手は決めてません。関係性としてはブチャかリーダーなら面白いかな〜…個人的にはチョもいい。





 広場を歩いていると声をかけられた。相手は知らない男で、バールの一卓に座っていた。いやに華やかで気取った造りの男だった。容姿に対しての自信に満ち溢れていた。
 実際、端正な面立ちをしていると思う。挨拶を返しながら、私は注意深く男を観察した。年の頃は私の兄と同じくらいか、それよりは下かもしれない。この辺りじゃ見かけない顔だ。巡業に来た劇団員だろうか。よく通る声に、そう当たりをつける。
 悪くはない縁だ。「一緒に飲みませんか」掲げられたグラスに、私は笑顔を作った。

「ええ、もちろん──」

「悪いが他を当たってくれ。こいつは売却済みだ」

 断ったのは私ではない。私ではなく、私の肩を抱いた人が言い放ったのだ。
 それは鋭く、ナイフの切っ先に似ていた。頬を掠める冷ややかな感触。固く掴まれた肩。嗅ぎ慣れた香水の匂いに、私は口許が引き攣るのを感じた。

「──兄さん、」

 見知らぬ男から引き剥がされ、無理矢理に通りを歩かされる。宛もなく、自由もなく。私の肩に手を回したままのその人の横顔を、私は溜め息混じりに見上げた。

「なんだってこうも邪魔ばっかりするの」

 お陰でせっかくの縁もなくなっちゃったじゃない。
 そう責め立てても兄は涼しい顔を崩さない。神経質に固められた金の髪には少しの乱れもなく、見下ろす聖人の瞳は冷静そのもの。冷たいまでに凪いでいて、私は自分の方がとんでもない我が儘を言っているんじゃないかって思ってしまった。
 実際、兄にとってはそうなのだろう。

「何言ってやがる。お前はまだ学生だろうが」

 「あんなのじゃダメだ」と兄は続ける。
 言いながらも肩を抱く力は増していく。ちょっと、いや、結構痛い。傷物になったら責任取ってくれるのかしら?……なんてね。言ったら後が怖いから胸に仕舞っておこう。

「役者はダメだ。売れてても売れてなくても手に負えねぇ」

「……ま、そうね。それはそうかも」

 兄の言葉に納得する。……わけではない。そういう話は珍しいことではないというだけだ。
 私の友人にも恋人に泣かされた子はいるし、父が舞台俳優だという子は母親の違う兄弟が何人かいると洩らしていた。『時々帰ってくるだけの人はとても父親と思えないわ』ただの役者、うちに巡業に来ただけのね、と笑っていた友達の顔を思い出す。
 ……うん、やっぱり役者はよしておこう。

「でも……あーあ、結構かっこよかったのに」

「あ?オレじゃ不満だって言うのか?」

「不満っていうか……」

 兄は冗談なんか言わない。真面目な顔でバカみたいなことを言う。だから私は「それ以前の問題でしょ」と肩を竦めた。

「嫁ぎ遅れたら兄さんのせいだからね」

「嫁ぎ遅れ?そんな言葉はこの国にねぇ」

「この国になくても世界にはあるのよ」

 兄は「街から出なきゃいい」と言うが、そうも言ってられない。世界は今この瞬間にだって変わっていってるのだ。習慣も常識も時代と共に変化するもの。花の盛りは短いのだ。『春の盛りの過ぎぬ間に、薔薇の花を摘むがいい』ってね。

「なんだそりゃあ」

「スペンサーよ、もう。習わなかった?」

「覚えてねぇ」

 兄は過ぎ去った詩に興味を示さない。……やれやれ。これでこの人に秋波を送る女性が絶えないというのだから、やっぱり外見っていうのはとても大事なのだと痛感する。かく言う私だってそうだ。兄さんほど……とまでは言わないけど、そりゃあ見目が麗しいのに越したことはない。無論それだけじゃダメだとは思ってるけど。

「あーあ、どこかにいい人いないかなぁ」

 どうせなら……そうだな、優しくて落ち着いた人がいい。加えて尊敬できる人、物をよく知っている賢い人だったらなおいいかな。
 そんは夢見がちな理想を胸に秘め、私は嘆息した。──どうやら先は長そうだ。

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2019/12/15 22:50


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