Memo
Twitter
拍手返信と小話

追記よりどうぞ!





>>2020.01.26
ジョジョ7部のディエゴが〜の方へ

ひえ〜!そう言っていただけて安心しました〜!
ディエゴはそもそもはちゃめちゃにカッコいいので(語彙力…)イメージを損なっていなければ良いのですが……。

こちらこそコメントありがとうございます〜!
7部夢は『十九世紀英国社交界を生きるディエゴが見たい!』っていう単純な欲から始めたシリーズですが今後ともお付き合いいただけると幸いです。

以下お礼小話です。
ジャイロにナンパされる話のディエゴサイド。
夢主名前変換なし、彼女表記。





 ディエゴが一等の個室コンパートメントに戻ると、そこには彼女付きの若いメイドしかいなかった。

「彼女はどこに?」

 ディエゴの眉間には自然皺が寄る。当然だ、婚約者が何の連絡もなしに姿を消したのだから。不快に思うのはごく自然な感情だ。
 だというのにメイドはそんなディエゴこそが異端であると判じる。

「お嬢様なら食堂車へ行かれました」

 それが何か、とでも付け加えかねない語調。一介のメイド風情がなんて尊大な態度だろう!主人の躾がなっていないせいだ、とディエゴは内心で婚約者を詰る。
 昔から彼女はそうだった。階級が上であるなら下の者には優しく接しなければならない。それが口癖で、だからメイドたちも付け上がるんだとディエゴは思う。
 階級が下の者など搾取されるだけの存在だ。たとえばそう、かつての母のように。それが社会の仕組みであり、そのために成り上がると決めたのだ。侯爵家も彼女も、すべてを利用して。

「一言くらい言っておくべきだろう」

「……申し訳ございません、以後そのように致します」

 本当に反省しているのだろうか。
 胡乱な目を向けるが、生意気なメイドは表情ひとつ崩さない。全員首にしてやろうか。そう考え、ディエゴはメイドたちが女主人の管轄であることを思い出した。たとえディエゴが侯爵家を支配したとしても、彼女たちの処遇は女主人の手に委ねられているのだ。

「クソ……」

 ディエゴは歯噛みした。
 彼女に結婚を承諾させればそれで万事が上手くいくと思っていた。侯爵の反対は予想通りだったし、レースに勝つ自信はある。もし侯爵が約束を反故にしたとしても、その時のための布石はとうに打っていた。
 なんの障害もないはずだった。実際、なんの躓きもない。

 ──だというのにこの焦燥感はなんだ?

「ディエゴさま、どちらに」

「……答える義務はない」

 ディエゴは苛立ちを扉にぶつけた。途端、通路に響き渡る鋭い音。だがこんなものでは晴れない。屈辱はこんなものでは晴らせない。
 ディエゴは真っ直ぐ食堂車へ向かった。彼女の動向が気にかかるなどとは口が裂けても言いたくない。でも確かめておかねばならないだろうと心のうちで言い訳をした。
 これは必要なことだ。協力者が裏切らないか、それを確かめるのは大切なことなのだから。

 ──だから、オレは間違っちゃいない。

 目の前にガラス張りの扉が現れた。その向こうに食堂がある。一等の乗客だけが乗れる、選ばれた車両が。
 その取っ手を掴み、思いきり開こうとして──ディエゴは立ち竦んだ。
 食堂車の中はがらんとしていた。だから必然的に視線は一点に集まった。中にいる二人の男女。メイドの姿はディエゴの視界に入らない。ディエゴに見えたのは楽しげに笑う彼女と、見も知らない男の親しげな姿だった。

「……どうしたの、ディエゴ」

 彼女の声に、ハッと我に返る。
 気づけばディエゴは自分の個室に戻っていて、向かいには訝しげに眉を寄せる彼女がいた。蒼のドレスにダイヤモンドのネックレス。最後に見た時と一点の変わりもない。
 自分が見た光景が夢だったのではないかと一瞬考え、ディエゴは首を振った。──そんなバカな。あんな不愉快な白昼夢、夢にしたってお断りだ。

 ──いや、別にあいつがどこで誰と何してようがまったく全然どうとも思わないが。

 気にかかるのは彼女が契約を取り止めると言い出さないか、ただそれだけ。その一点だけなのだ。
 そう言い聞かせ、ディエゴは息を整えた。

「どうしたって何がだ?オレはいたって平静、読書を楽しんでいるところだが?」

「いえ、だってその本……逆さよ」

「……どう読もうとオレの勝手だろう」

 ディエゴは鼻を鳴らし、顔を背けた。
 だが煤けた窓にはつまらなそうな顔の自分が映っていて、苛立ちは募るばかりだった。

カテゴリ:返信
2020/01/31 02:56


TOP
Category
Back number
Since.2018.07.07

HOME

© 2018 Angelica