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チェ
今週のチェンソーマン感想です。
ネタバレしかないし、相変わらずマキマさんです。でもなんかアキくんに転びそうです。






 ピンと伸びた背中。黒いスーツに踊るキャラメルの色。その足音すら澄み渡り、何だか神聖な儀式にすら思える。

「……マキマさん!」

 足を止め、振り返るマキマさんに驚きはない。「あぁ、」淡い微笑と共に呼ばれる私の名前。それだけで、どうだっていいはずの名前すら特別なもののように思える。

「マキマさんは今日も綺麗ですね」

「ありがとう」

 マキマさんはいつもと変わらない。凪いだ瞳。機嫌がいいのでも悪いのでもない、無機質なガラス玉。綺麗だけど、少しこわい。廊下には淡々とした靴音だけが響いている。

「岸辺さんに聞いたんですけど……、銃の討伐、私たちは参加しなくていいって」

「うん、そうだよ。4課は不参加になりました。さすが、耳が早いね」

 緊張したのに拍子抜け。マキマさんはあっさり答えて、なんてことないって顔。困ったり怒ったり、感情には少しの乱れもない。むしろそうなることを予期していた、みたいな……。
 「本当だったんですね」私は頷きながら、特異4課の面々を思い浮かべる。人手も戦力もだいぶ失われたから、この決定は妥当といえば妥当だ。気にかかるのは、それがあまりにも簡単に決まったってこと。
 でも理由なんて私ごときが考えたところでつまらない想像にしかならない。ひとつ言えるとしたら、「私的には、まぁ、ラッキーって感じですけど」呟くと、マキマさんの目とぶつかる。マキマさんの、魔的な眼。

「銃の悪魔と戦うの、そんなに嫌だった?」

「嫌ですよ、戦いなんて。それに銃ってすっごく強いんでしょう?私はよく知らないですけど……、でも銃を討伐するために公安入る人、多いって聞きますし」

「まぁ、そうだね」

 マキマさんは含みのある笑い方をする。なんだか、ひどく意味ありげだ。「……何か、隠してます?」そう私が訊ねるのすら勘定に入れてある。そんな感じ。

「うん、だって銃の悪魔は既に倒されているんだもの」

 不思議と人通りのない廊下。デビルハンター東京本部。確かに人員はだいぶ減ったけど、でもだからってこんなに静かだったっけ。静寂が痛いくらい。なのにそれに加えてマキマさんが意味のわからないことを言うから、私は混乱してしまう。

「じゃあ討伐遠征っていうのは……」

「そうだね、表向きの話になるね」

 表向きってことは裏があるんだ。私は眉を寄せ、滅多に動かさない頭を働かす。銃の悪魔。討伐遠征。表と裏。それを知る人、知らない人。不参加を決めた、特異4課。

「……それ、私が聞いていい話ですか?」

「いいんじゃない?遠征に参加するなら」

 マキマさんは言う。素知らぬ顔で、微笑みすら浮かべて。女神の顔で、悪魔みたいなことを言う。
 こんなの、姫野ちゃんが見たらどう思うだろうか。私はマキマさんを嫌ってた彼女のことを思い出す。マキマさんが何を考えてどう行動してるかなんて、きっと彼女も知らなかっただろうけど、でもきっと察するものはあったんだろう。女のカンってやつだ。姫野ちゃんは普通の女の子だった。……私と違って。

「ひどい人ですね、マキマさんは」

「うん、ごめんね」

「謝罪が軽いですよぉ〜」

 脱力。でも、今さらだ。マキマさんの掌の上で転がされなかった時が、果たして私にあっただろうか?マキマさんと出会う前の私を、私は知らない。知らないし、どうだっていい。少なくとも、私にとってのマキマさんは、いい人のままだ。

「まぁでも、銃本体と戦うよりはいいかなぁ。噂に聞く限り、『そんなのとどう戦えっていうんだ〜!』って思ってましたもん」

 それを思えば、……うん、何も難しいことはない。
 マキマさんは、「よかったね」と感情の見えない顔で言う。これは、マキマさんにとっても『よかった』ことなのだろうか。人が減った特異4課。サメと暴力の魔人は亡くなって、コベニちゃんは辞表を出した。アキくんや天使ちゃんは腕を失って、それでもこの現状は『よかった』と言えるんだろうか。マキマさんは、──私は。

「デンジくんたちはどうするんですか?彼らも参加を?」

「それはまだ。これから聞くところ。でも参加するって言うんじゃないかな」

「デンジくんはそうでしょうね」

 私は、少し前に会ったばかりのアキくんの顔を思い浮かべた。
 北海道に行って、帰ってきた後の彼。険のない、穏やかな横顔。デンジくんとパワーちゃんを見守る、温かな眼差し。私は、そういうのに弱いのだ。

「……あんまり酷いこと、しちゃダメですよ」

「しないよ。だから安心して」

 マキマさんの微笑みだって神聖な絵画のようだ。よくできた、精巧な──精巧すぎる、作り物。だから美しいのに、どこか寒々しい。窓の向こうには細かな雪がちらついていた。今日は、よく冷える。窓枠が、マキマさんを飾る額縁にすら見えた。

「それなら、いいんです」

 私は息をつく。
 マキマさん。この人の、ごく普通な顔が見たかった。映画に対してじゃない、自分のことで涙を流してほしかった。なのに、今はどうだろう?以前よりもずっと、マキマさんが遠い。
 ──マキマさんの幸せは、いったいどこにあるのだろう?

カテゴリ:ネタ
2020/06/15 14:11


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