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銃
追記より今週のチェンソー感想小話です。ネタバレしかありません。
ここのところずっとアキくんに情緒が狂わされっぱなしです。正直しんどい。





銃の魔人に殺されるだけのポエム。




 夜が降る。闇が満ちて、星さえも見えない。まったくの暗闇。空気すらも凍える夜。その中を漂う、無力な私。

「……ぁ、」

 息を吸おうとして、吐いた。張りついた喉。口端を伝う血。拭おうとした手は震え、ままならない。体が、言うことをきかない。
 撃たれたのだ。私は、銃の魔人に撃たれた。鮮烈な記憶に、胸が痛む。傷よりも深く、抉られる、心。
 あれはM4A1といったか。私はぼんやりとした意識の中で考える。アメリカの軍隊で正式に採用されている小銃。ということは、銃の悪魔はアメリカに飼われていたのだろうか。思考を巡らし、私はわらう。
 今さら、そんなことはどうだっていい。知ったところで、どうなるというのだろう?足音がして、私の顔には影が落ちた。深く大きな、影が。

「アキくん、」

 見下ろす、め。正確に言うなら銃口か。呑まれそうなほど濃い夜の闇。かつては透き通るガラス玉だったのを思い出して、泣きたくなる。

 どうして、こんなことになってしまったんだろう。

 アキくんたちをマキマさんの元まで送って、その帰り道で銃の悪魔による日本への攻撃を知った。知って、それから彼の家へと向かった。嫌な予感がした。悪魔たちは、デンジくんの心臓を狙っている。だからデンジくんに会って、話さなくちゃいけないと思った。私の知っていること、知らないこと、アキくんのこと、……マキマさんのこと。
 けれど着いた先では既に戦いが始まっていた。見慣れたチェンソー姿の悪魔と、それからもう一体。頭部が銃と一体化した異形のもの。魔人。辺りにはデンジくんとパワーちゃんの匂いの他に、アキくんのそれも漂っていた。

「どうして、こんなことになっちゃったのかな」

 呟きに、『彼』は答えない。無言、無情。冴えざえとした、視線。私と『彼』の間には深い断絶があった。私の声は、届かない。
 伸ばした手が撃ち抜かれ、千切れ飛ぶ。私の名前を呼んでくれるのはデンジくんだろうか。彼もまた深手を負っていたはずだ。なのにそれでもまだ、私の身を案じてくれる。優しい子。彼の幸せを願ってる。逆に言えば、私にできるのはそれくらいのことしかない。

「でももう、キミには聞こえないんだろうね。何を言っても、キミにはもう」

 私は痛みを堪えて悪魔の力を行使する。一度、二度、三度。信仰の悪魔として、内臓に傷を与える。そして銃の魔人の口許から滴り落ちる、鮮血。
 けれど『彼』は止まらない。止められない。私に向けて、引き金を引く。
 私は口角を持ち上げる。「キミに殺されるなら、まだマシかな」この世界を愛していた。でもそれは、アキくんみたいに優しい人間がいたからだ。そんな私はきっと、この世界を憎むようになるのだろう。優しい人間にこのような結末を与えた世界を。このままではいずれ、恨んでしまうだろう。
 だから、これでいいのかもしれない。私には十分すぎる終末だ。

「…………」

 『彼』の唇が私の名前を形作った。そんな気がした。でも言葉は通じていないはずだ。私の聴覚も、殆んど機能を失っている。
 だからきっと、これは都合のいい幻。最期に見るには相応しい、夢。『彼』の手が私の頬を撫でた、なんて、魔人になんの期待をしているんだろう。『彼』はアキくんじゃない。アキくんの記憶を持っただけの、偽物だ。

 でも最期に見えたささやかな微笑はアキくんそのもので。そんなことはあり得ないのに、私は夢を見てしまった。アキくんとデンジくん、パワーちゃんがまた一緒に平凡な日々を送る夢を。そんな彼らを見守る自分を夢想して、私は微笑んだ。

カテゴリ:ネタ
2020/07/14 00:35


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