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チェとじゅの最新刊
本誌で知ってるのに単行本読んでまた泣いてます。
私が好きになったばっかりに死んじゃった……(他作品でも推しキャラがことごとく死んでるので……)ごめんね…………。
でも内容は最高&最高だったので記念に二冊ずつ買いました。

以下、アンケで一緒に死にたいって言ってくれた方へ。
最新刊ネタバレの小話です。





ナナミンルートだったら死なせない予定なんですが、あの場面で一緒に死ぬなら……っていう妄想です。
当サイトではナナミンは生き続けるのでーーーー!!ていうかナナミンは死んでないのでーーーー!!!!心を強く持ってください!一緒に幻覚を見続けましょう!!!!!






 肉の焦げた臭いがする。いやな、──ひどく厭な、鼻につく臭い。それが道の先に佇む彼から発せられるものだなんて信じたくない。その半身が焼け落ち、殆ど炭化しているなんて──認めたくなかった。

「──七海くんっ!」

「あぁ、」

 彼の目が私を捉える。改造された人間たちの隙間から、私を見つめる目。柔らかくほどけたそれは、最早片方だけしか機能を果たしていない。私は有象無象の群衆を振り払う。
 邪魔だ邪魔だ邪魔だ──早く、七海くんのところに行かないと。彼の唇が、私の名を象る。その声を聞かせてほしい。穏やかな低音で、私の名前を呼んで、

「……いたんですか」

「いたよ、ずっとね」

 なのに私の手は届かない。
 崩れ去る人の群れ。開けた視界の中、私は駆ける。改札機を飛び越え、地を蹴って。
 そうして、それでも、

「……虎杖君、後は頼みます」

 私の後ろに目をやって、それから七海くんは私を見た。とても優しい目で。私を見て、悲しげに、わらった。
 その目は、『さよなら』と言っていた。

「────ッ!」

 伸ばした手の先で、七海くんは消えた。その上半身は爆ぜて、跡形もなく消え去った。微笑みも、眼差しも、すべて、私の手には残らなかった。

「真人!!」

 叫んだ虎杖くんより先に、私は真人の懐に飛び込んだ。けれど目的はこの呪霊を祓うころすことじゃない。だから避けられても構わないし、殺されるのならそれでもよかった。七海くんを手にかけたその手で死ぬのも悪くはないとすら思っていた。
 けれど呪霊は「おっと」と飛び退いて、首を傾げた。

「そんな抜け殻、どうするの?」

 そう言った声音は心底不思議そうで、私はわらった。人間から生まれた呪霊だとしても、人の心の機微までは理解しきれていないらしい。そんな彼を、哀れだと思う。

「あなたみたいな存在には一生わからないでしょうね」

 私は七海くんを抱き締めた。呪霊が抜け殻と評した、私にとってはたった一人の大切なひと。その上半身はすっかり空洞であったけれど、腕や足はきれいなままだった。
 最期まで武器を手放さないのが彼らしい。愛おしさが込み上げて、私は彼の指先に口づけた。焼けた肉と、血の味がした。けれどかさついた肌や感触は私の記憶の彼と相違なかった。……私の大好きな七海くんの手だった。

「いいね、次は君が俺のお相手してくれるの?」

「ええ、本気で来てください。あぁでも、私を殺すなら右手でお願いしますね」

「なんで?」

「だって七海くんを殺したのはその右手でしょう?」

 どうせ死ぬなら、七海くんと同じ死に方がしたい。それは別段不思議なことじゃないだろうに、呪霊は目を見開いたあとお腹を抱えて笑った。

「そんなこと言う人間、初めて見たよ」

「そうですか、それは特に光栄なことではありませんね」

 私はスーツのジャケットを脱いで、七海くんに着せた。夜は冷えるから、あたたかくしないと。そう言って気遣ってくれるのはいつも七海くんの方だったのに、なんて考えて、鼻の奥がツンとした。
 七海くんは最期に『さよなら』と言った。さよなら、──お元気で。それは別離の言葉であり、私のこれからの生を願うものだった。彼は私が生きて幸せになることを望んでいる。優しくて、残酷なひとだから。
 でも私は『さよなら』なんてしたくない。だから七海くんの手を握って、「また後でね」と声をかけた。返事はない。けれどきっと怒っているんだろうなと思った。私はこれから死ぬとしても、後悔はない。七海くんのいないこれからの世界に、後悔なんて生まれるはずもないのだから。

 ──だから、

「早く殺してくださいね、私たちのために。私の、幸福のために」

 だから、ごめんね、七海くん。
 死ににゆく私を許さなくていいから、どうか最期まで隣にいさせて。





 とか言って死ねないのが地獄でいいなぁって思います。
 まぁナナミンも生きてるんですけどね。

カテゴリ:ネタ
2021/01/04 19:59


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