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拍手返信
7月7日分の拍手返信です。
追記からどうぞ。あとチェ吉田くんの小話つきです。
(過去分も今日からちまちま返していきます……遅くなってすみません……)
(悲しいニュースばかりで気が落ち込んでいるのでしばらくメインの更新はできないかもです)



>>吉田くんの契約悪魔になる〜の方へ
はじめまして、こんにちは!ご新規さんですかね、こちらこそコメントありがとうございます!
最近全然更新できてなくて申し訳ないので『吉田くんの契約悪魔になる』設定でSS書きました。七夕ネタです。
(名前変換なし、デフォ名なし(君、彼女表記)吉田くん視点)
(たぶんそのうち名前変換つけてメインに収納しますけど……)








 笹の葉が売り出されているのを見て、『あぁもうすぐ七夕か』と思う。7月の上旬。梅雨は明けたばかりで、空気は未だ湿り気を帯びている。今年の七夕は晴れるだろうか。……まぁどっちでもいいことだけど。

「人間はこんな大きな葉っぱも食べるの?」

 連れの悪魔が胡乱なものでも見るみたいな目を向けてくる。
 いやいや、まさか。

「七夕だよ、この国の風物詩。これに願い事を書いた紙をぶら下げるの」

「?それの何が楽しいの?」

 生まれたての悪魔は無知で小さな子供のよう。あれは何、これはどうして、と疑問の種は日常のあちこちに転がっている。
 それにいちいち答えてやらなくてはならないのは面倒……かと思えばそんなこともなく。自分だけが頼りなのだと思えば、悪くはない気分だった。

「人間は神様に頼るのが好きだからね」

 そう答えると、信仰の悪魔は「ふうん」と頷いて、笹の葉を手に取る。矯めつ眇めつ眺める、その目は真剣なもの。本当に願いが叶うのか、真偽を確かめているんだろう。その、悪魔の目で。
 でも彼女の労力はあいにくの無駄骨。笹の葉にそんな効力ありはしない。わかっていて黙っている俺は性格が悪いんだろう。でも見ていて面白いから、無駄だなんて教えてあげない。

「吉田くん、吉田くん」

「ん、なあに」

「悲しいお知らせ」

 神妙な面持ちで、「これはただの葉っぱだよ」と彼女は言う。うん、知ってるけど。知ってるけど、「そっかぁ」残念だね、と笑ってみせる。と、それが悲しげに映ったのだろう。彼女もまたへにゃりと眉を下げた。
 けど俺が笑ったのは、俺の名前を呼んで袖を引いてくる彼女が可愛かったから。ただそれだけのこと。残念だなんて思っちゃいない。そもそも最初から、神様なんて信じちゃいないしね。

「でも大丈夫、吉田くんの願いは私が叶えるから」

「え、ほんと?」

「うん、この命に代えても」

「いや、それは重すぎ」

 いったいどんな願いを想像したんだか。
 「世界平和とか」それは私にも困難なことだ、と彼女は真面目くさった顔。「吉田くんがそれを望むなら、人類と悪魔を滅ぼさないと」
 ……よかった、俺がそんな高尚な人間じゃなくて。大都会の片隅で危うく世界の命運が決まるところだったなんて、誰に想像できようか。人類は俺に感謝してほしい。俺の興味の向く先が世界なんかじゃなく、たったひとりの悪魔であることに。
 なのに当の本人ときたら、

「そもそも私の命程度、ちっとも重くなんてないよ。だってまたかえってこられるもの」

 地獄からだって戻ってこられるよ、と彼女は言う。

「吉田くんに会うために。キミとまた一緒にいたいから、私はかえってくるよ」

 これじゃあ悲しんでいいんだか喜んでいいんだかわかりゃしない。君の代わりはいないんだって。一度死んでしまったら、例え同じ名前を持っていたとしてもそれはもう違うモノなんだって。俺が必要なのは信仰の悪魔なんかじゃなく、今ここにいる君なんだって。……どうしたらわかってくれるのかな。
 俺は彼女を抱き締めた。ちょっとおっきなスーパーの、その入り口。青果コーナーのスペースで、エプロンをつけた主婦だとか、仕事帰りのサラリーマンだとか、制服姿の学生たちだとか、そういう人たちのすぐ側で。でもそういう人たちとは大きく隔たった場所で。──だからつまり、世界征服なんかは必要ないってこと。

「あ゛ー……」

「その声にはどんな意味が?」

「一語で表すのは難しいかな……」

「なるほど」

「全然わかってないくせに」

 ちょっといやみったらしく言ってやる。あんまり憎らしくて、でも嫌いになんてなれないから。
 だけど彼女は「わかるよ」とやけに自信ありげ。抱き締めてるせいで顔は見えないけど、声を聞けばわかる。彼女が知る俺の何倍も、俺は彼女のことを知っている。
 ……つもりだったんだけど、

「私も同じことを思ってるから。……キミへの想いは、どんな言葉でも言い表しきれない」

「……なにそれ」

 ズルいなぁ、と思う。そんなの勝てっこないじゃん。反則だ。どれくらいかっていえば、結末に夢オチを持ってくる映画並みに。

「なんの話してたか分かんなくなってきた」

「願い事の話だよ」

 あぁ、そうだったっけ。
 「それで?吉田くんは何を願うの?」うーん、そうだなぁ。俺は腕の中の小さくて、なのにちっとも思い通りにならない存在について考えた。
 それはたった一言で済むような気もしたし、たった一言では言い表せないような気もした。つまるところ、唯一無二ってこと。

「それってさ、今決めなくちゃだめ?」

「ううん、いつでもいいよ」

「じゃあ決まったら教えるね」

 そうすれば君がその命を投げ出さずに済むんじゃないかって、子供の浅知恵。だけどしょうがないじゃないか。こんなことしか思いつかないだから。俺がそうであるように、君の半分が俺であるようにって──そう、願ってしまったんだ。


カテゴリ:ネタ
2022/07/09 23:26


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