死にたくないなあなんて彼は絶対に言わない

とを私は知っていて、私はどうしてもそれが理解できない。


「マスターのためなら壊れてもいいよ」


 治療をしている最中、何事もなかったかのように、明日は晴れるといいねとでも訊くように彼は言った。彼はいつだって私のためなら、私の手の中でならと漠然とした愛を詰め込んで、ひとつの銃弾を撃ち込んでくる。


 それは私の心を抉り、まるで蜂の巣みたいな穴を空けようとする。


「そんなこと言わないでください。私のためだなんて」


 努めて笑顔を浮かべながらそう反論すれば、彼は決まって困ったように眉を下げて俯くのだ。口を噤み、言葉を封じ込めるようにシャツの裾を握りしめるその態度から、彼が思う生き様への憧れとある種のプライドが窺える。シャツの皺が、彼の代わりに私を睨みつけてきたような気がして、私は唇に笑みを張りつかせたまま手元にある包帯に視線を逃がした。

 

私の為に死にたいと、私を免罪符にしようとする彼が心底憎くてしょうがない。その独りよがりを少しでも別の方向に向けてくれたらどれだけよかったか。彼はずっと知らないまま、私の手の中で壊れる夢を永遠に見続けるのだろう。その後だって彼だけが幸せなままだというのに。彼は私のことなどこれっぽっちも興味がないのだ。