・現パロ。転生前の記憶ありの近親相姦あり。
・大倶利伽羅が気の毒な立場にいる。

 ふわふわの真っ白なタオルで濡れた髪を拭きながらリビングに入ると、大倶利伽羅が台所のシンクに寄りかかりながら麦茶を飲んでいた。
 タオルと同じ真っ白なTシャツを着ている大倶利伽羅が、私の存在に気づき、体を起こす。
 彼の容貌は美しい。性格も以前と変わらず、馴れ合いを好まない一匹狼であった。
 大倶利伽羅を見ていると昔を思い出して懐かしくなる。私は大倶利伽羅をじっと凝視する。その視線に彼は怪訝そうに眉を潜めたが、意味を訊ねることなく背を向けた。
 冷蔵庫からふたつのペットボトルを取り出して、私に差し出す。
 
「どっちがいい」
 
 オレンジジュースとスポーツ飲料。私は少し悩んだあと、オレンジの方を掴んだ。大倶利伽羅の手からオレンジのペットボトルが離れると当時に、手首を掴まれて引き寄せられる。
 突然のことにペットボトルを床に落とす。派手な音をたてて転がるペットボトルを尻目に、私は大倶利伽羅と濡れた唇を合わせていた。
 
 舌を絡ませ合うと、満足したのか、ゆっくりと離れる。
 
「……主」
 
 暑い吐息と共に懐かしい呼名が紡がれる。
 
「違うでしょ。さっきも言ったけど」
 
 大倶利伽羅は視線を横に投げた。
 拒むように目を瞑っている。しかしそれも長くは続かない。
 
「……ねえさん」
 
 渋々、大倶利伽羅は観念したように吐き出した。溢れ出す感情を耐えるような彼の様子にそりゃあそうだと私はひっそりと自嘲した。

 まさか付喪神である彼も、生まれ変わったら主であり恋人であった女が己の姉だった、なんてこと全く予想もできていなかったに違いないからだ。
 だって、大倶利伽羅が昔の記憶を思い出したとき、彼は目を丸くして、そのうちわなわなと震えあがっていたのがその証拠である。
 ちなみにそのとき、私は十二歳、大倶利伽羅は十歳。夕食後、一緒に入浴中であった。
 その後、大倶利伽羅は慌てて風呂場から飛びだして母親に叱られていた。風呂場に戻されたときの大倶利伽羅の表情はなんとも言えない複雑そうな、それでいて絶望しているような、そんな顔だった。
 居たたまれなくなった私は無言で風呂から出て、先に上がった。
 背後で、まだ幼い弟が鼻を啜った。

 それからというもの、大倶利伽羅は私を避けた。
 九歳までは「お風呂はお姉ちゃんと入る」と必ず私の後を追いかけてきたのに、記憶を思い出してからはそんなこと言いもしなくなった。

 私が十九歳、大倶利伽羅が十七歳になったとき、彼があからさまに私と距離を取ってきた。思わず笑ってしまった。あまりに面白くて、彼が可愛くてついからかったら逆上した大倶利伽羅に突き飛ばされて思いっきり唇に噛みつかれた。血が出て痛かった。

 最悪。
 床に尻もちをついたまま低い声で呟いたら、大倶利伽羅は真っ青になって謝った。もともと優しい刀だったから、私を傷つけてしまったことに後悔しているらしい。
 しかし反省とは裏腹に、彼の下半身は正直であった。

「ねえ、お姉ちゃんと遊ぼうか」

 大倶利伽羅の胸に手を添えて、耳元で囁く。胸にある手をそのまま下へ、肌を舐めるようにゆっくりと動かす。首を傾げて大倶利伽羅の顔を覗き込めば、彼の喉仏が僅かに動いたのを私は見逃さなかった。
 そして、私は大倶利伽羅をさらに追い詰める。
 幼い頃公園で砂遊びに誘ったときと同じ声のトーンで、もう一度言った。

「お姉ちゃんと一緒に遊んで? 大倶利伽羅」

 金の瞳が耐えるように大きく揺らぐ。大倶利伽羅の乾いた唇が震えながら私のそれを食んだ。怯えながら合わさっていた唇が徐々に深く貪る口づけに変わったのは褐色の手が私の腰に回るのとほぼ同時であった。



「は、はは」
「なにを笑っている」
「ははは……ごめん、昔を思い出して。ははは」

 大倶利伽羅が眉根を寄せた。
 不機嫌になった弟がやっぱり可愛くて愛しくて堪らない。
 私がまた声をだして笑うと、かつて大倶利伽羅と呼んでいた弟が牙を見せながら私の唇に噛み付いてきた。
 それは可愛い弟なりの小さな反抗であったに違いない。