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 「なぁなぁ聞いたか?主上様のお噂」
 「あぁ、アレだろ。一人の側室に御執心って」
 「今まで一度も奥に入られたことはないのだがな、突然どうされたんだろうな」
 「でもよ、その側室って例の――」

 ***

 いつでも其処は冷たい。
 ひやりと足袋越しに伝わる冷たさは、いつも私の足の暖かさを一気に奪ってゆく。

 まるで、わたくしの何かを欲している。

 何かに気が付いてほしい。

 そう訴えかけてくるように。


 「…浅葱」

 奥の主であり、倭国の頂点に立つ主上がある者の名前を呼んだ。
 主上と似た髪色を持ちながら、翡翠色の瞳は冷たさを感じ、そして眉間にはいつも皺が寄っている。

 「白雪、」

 彼女の下の名前を、それもまさか呼び捨てで呼ぶなど普通はあり得ない。

 “浅葱”――それが“少年”に与えられた名前だった。

 まだ成長に達していない身丈、幼い顔立ち、正確な年齢は本人にも分からないようだが、この奥の中ではどう見ても最年少といえる風貌だった。

 「白雪、

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